鋼谷は暗闇の中で目を覚ました。ベッドの天井を見上げるも、視界に映るのはぼんやりとした影ばかりで、どこか現実感がない。敗北の痛みと心に染み渡るのは、異能もなにも持たない自分がこの先何を成し遂げられるのかという絶望だった。
街の喧騒から隔絶された病室で、ただひとり、彼は過去と自分の無力さを反芻する。無数の傷が体中に残っているが、それ以上に心の傷が深く刻まれていた。
数日が過ぎても、鋼谷は気力が戻らず、誰かが見舞いに来ても彼はただ虚ろな表情で応じるだけだった。霊一との戦いで完敗を喫したことに加え、自分が異能者たちの中でどれほど弱い存在であるかを実感させられたことが、鋼谷の心を重く縛りつけていた。
「俺なんかが…何をしてきたんだ…?」
彼は過去の自分の行動を振り返りながら、その全てが無意味に感じられるようになっていた。異能を持たずに挑み続けたことが、ただの無謀で愚かな行動に思えてならない。
日が沈むにつれて、鋼谷はベッドの上で身じろぎもせず、静かに天井を見つめていた。誰もが自分を支えてくれた過去の思い出が頭をよぎるが、そのすべてが遠く、手の届かない場所にあるように感じる。
「…あいつらは、俺を見限るんじゃないか?」
そんな思いが心の中で膨れ上がり、自分を支えてくれる人々への信頼すらも揺らぎ始めていた。気づかないうちに、鋼谷は次第に孤立し、自分の中に閉じこもるようになっていく。
やがて夜が深まり、外からの音も遠のくと、鋼谷の中で無力感がさらに強くなる。部屋の静寂の中で、自分の無価値さを感じながら、彼は心の奥底で何かが折れる音を聞いたかのようだった。これまでどれだけ必死に戦っても、その結末が虚しい敗北で終わるなら、全ての努力が無意味に感じられる。
「俺は…何をやっているんだ…」
鋼谷は心の中で自問するも、答えは見つからないままだった。ただ、深い虚無が彼の心を覆い尽くしていた。