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うわっ第3話お疲れ様です!!🌸 亜紀先生の仕事終わりの慌てた感じとか、麗香さんの不倫ポリシー(?)がダブル不倫って決まり事とか言い放つ強さ、めっちゃキャラ立ってて面白いです😭💕 「大人の暗黙の了解」を「不倫の暗黙の了解」て返す亜紀、グッジョブすぎる笑 次どうなるのか気になる〜!続き楽しみにしてます!!
***
「宮坂先生、これ来週の心カテ患者のリストです。金曜日の夕方までに検査前指示をお願いできますか?」
ステーションを出ようとする私に、この循環器病棟の師長が声を掛けた。
私は足を止めて振り返る。そして、差し出された一枚の用紙に視線を落とした。
「はい。金曜日の午前中には指示を出しておきますね」
心臓カテーテル検査の患者リストに目を通し、小さく頷く。
「宮坂先生は一度の催促で指示をくださるので、本当に助かります。村上先生なんて、三回も四回も催促しないと対応してくれません」
「えっと……そうなの?」
あからさまに呆れた顔で大きな溜め息をつく師長を見て、控えめな笑みを浮かべた。
「そうなんですよ。それだけじゃないんです。この前の当直の時なんて村上先生……」
「あー……っと、師長ごめんなさい。今日これから急ぎの用事があって。その話は次の当直の時に聞かせてもらいます。休憩室でお饅頭でも食べながら」
どこまで続くか分からない話を遮り、にっこりと微笑む。
「あら、ごめんなさいね。先生を見ると、つい愚痴っぽくなっちゃって。今からまた検討会か何かですか? いつも遅くまでお疲れさまです」
師長が、おばちゃん口調で――いや、目尻に無数の皺が刻まれた立派なおばちゃんなのだが――私の二の腕をぺちぺちと叩いて笑った。
「検討会……まぁ、そんなところです。このリスト貰っていきますね。師長もお疲れさまです」
私は柔らかな笑みを返し、用紙を片手にステーションを抜け出した。
あの師長の愚痴に捕まったら、朝になっちゃうよ。
苦笑いを浮かべながら視線を落とすと、腕時計は六時を指していた。
やばいっ、遅刻しちゃう! 今日は特別な日なのに。
慌てて視線を上げ、医局の更衣室へ向かう足取りを速める。
足音を立てながら飛び込んだ更衣室で、人の気配を感じた。
視線を向けると、ロッカーの扉に貼り付けられた小さな鏡に向かい、ルージュを引く女性の後ろ姿があった。
「美しいお姉さま。念入りにメイクしてどこにお出掛け?」
私はそっと背後に回り込み、にやけ顔で突然声を掛けた。
「うわっ!……なんだぁ、亜紀かぁ。もう、驚かさないでよ。危うく耳まで口が広がるところだった」
友人は目を丸くして振り返った後、再び鏡に向き直り、少しはみ出したルージュを指で拭き取る。
鏡越しに膨れっ面を見せるこの女性――相川麗香、三十四歳。
六年前にできちゃった結婚をし、現在は夫の実家で義両親と同居中。
同じ循環器内科医で、大学時代からの友人だ。
「亜紀にしては珍しく早く帰るんだね。いつも七時過ぎまで仕事してるのに」
麗香は口紅をポーチにしまい、次にマスカラを取り出した。
「うん、今日は出掛ける用事があって。麗香こそ相変わらず早いお帰りで」
「失礼な。いつもながら要領がいいって言って頂戴。それに私、今日は直明けだから早く帰っていいんだもーん」
麗香は鏡を覗き込み、長い睫毛にマスカラを塗り重ねる。
「で? この後はどなたとデート? 例の副社長? えっと……会社名なんだっけ?」
「副社長?……ああ、その男とは別れた」
「別れた……? でも付き合って二か月くらいしか経ってないんじゃ……」
「二か月付き合えば相手を知るには十分。結果、二か月以上付き合う魅力を感じなかっただけ」
「魅力を感じなかっただけって……」
私は同じ並びのロッカーを開け、表情ひとつ変えずに言い切った彼女の横顔を見つめた。
「得るもののない男と付き合う意味なんてある? それなりの危険を犯してるんだから、それなりの価値がないとね」
麗香はマスカラのチェックを終えると、私に視線を向けてにっこりと笑った。
「……今回も結婚してる人なの?」
「当然。ダブル不倫は決まり事。今回のお相手は四十八歳の……職業はまだ秘密。近いうちに会わせてあげる」
ダブル不倫は決まり事って……
そんな決まり事、ある?
「あ……うん。それにしても四十八歳って、麗香と一回り以上違うじゃん。相変わらずおじさま好きだね」
愛想笑いをし、仕事用のシンプルなベージュのスカートを脱ぎ、紙袋から黒のタイトスカートを取り出す。
「当たり前でしょ。若い男なんて煩わしいだけ。大人の暗黙の了解も理解できないし」
「大人の暗黙の了解っていうより、不倫の暗黙の了解――でしょ?」
麗香の言葉に思わず「ぷっ」と笑ってしまった。
私には到底理解できない持論。それでも、麗香が言うと不快に感じないから不思議だ。