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ナンバーワン計画

10 - 第9話:世界一人を見捨てられない人

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2025年07月06日

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第9話:世界一人を見捨てられない人


「あなたは、“世界一人を見捨てられない人”に認定されました。」




その認定は、誰よりも忙しい現場にいた男をさらに縛る鎖になった。


ヒダカ・レン、35歳。

都心の救急病院に勤務する外科医。

髪は無造作に撫でつけ、ドクターコートはしわだらけ。

睡眠不足の目元に隈をつくりながらも、今日も手術室へと足を運んでいた。





彼は「見捨てる」という行為を一切許せなかった。


「搬送が遅れた」 「状態が悪いから優先順位を落とそう」 「治療の効果が薄い」




──そのすべてに、「それでも助けろ」と叫んでいた。


同僚は去り、家族は離れ、彼の病院には“世界一見捨てない医師”がいると評判が立った。

重症患者が、わざわざ彼のもとへ集まってくる。





「“ナンバーワン”って、肩書きの名誉じゃなくて、呪いになるんですね。」


ミナがヒダカを訪ねたのは、夜の病院の屋上だった。

彼女は白衣の上から赤いカーディガンを羽織り、非常階段を駆け上がってきた。


「君は患者か?」

「違います。医者を助けに来た“外来”です。」





ナンバーワン社会では、“倫理を超えて治療に執着する医師”が脚光を浴び、

SNSでは「ヒダカに診てもらうと生還率が上がる」という噂が拡散されていた。


それは、命を救われる代わりに、“医師の命が削れていく”構造だった。





その日、病院に急患が運び込まれた。

既に心拍は微弱。脳の損傷もひどい。

周囲のスタッフが「もう無理だ」と判断しようとした瞬間、

ヒダカは手術室に飛び込んだ。


「まだだ。動ける限り、俺が諦めない!」


――だが、その手は震えていた。

長時間の勤務。栄養失調。判断力は鈍っていた。


ミナが手術室のガラス越しに叫ぶ。


「ヒダカさん! 助けるのが“医者”じゃない! 命をつなぐ方法を選べるのが“人間”でしょ!!」


ヒダカの手が、初めて止まった。

深く息を吸い、彼は周囲のスタッフに言った。


「……俺じゃない方が、救える。引き継いでくれ。」





翌朝、屋上でミナに会ったヒダカは言った。


「こんなに情けない俺が、“世界一”を名乗っていいのか?」


「いいんです。

“限界を認めて託した世界一”って、今いちばんかっこいい肩書きです。」





そして、ヒダカの端末に新たな通知が届いた。


「あなたは、“世界一、限界を見極めて命を繋いだ人”に認定されました。」







END





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