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自身のステータス項目を“任意の内容”に見せかけられるスキル【偽装LV1】。
神託の巫女・エレノイアに相談しつつ、試行錯誤した結果。
何とか“一般人レベル”へと偽装することができた。
「……これでタクト様は、どなたがどう見ても只の見習い剣士でございますわ」
「ありがとうございます!」
念のため、ステータスを再確認しておこう。
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名前 タクト・テルハラ
種族 人間
LV 1
HP 54 / 54
MP 28 / 28
物攻 20
物防 8
魔攻 10
魔防 8
■状態
健康
■称号
見習い剣士
■スキル
剣術LV1、収納LV1
■装備
布の服、革のブーツ
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称号を『見習い剣士』のみに、他の項目をそれに合わせて偽装する。
それがエレノイアの提案だった。
見習い剣士ならスキルに【剣術】を持つのが自然。
また、【収納】を隠してしまうと、人前で使った場合に怪しまれる。
このスキル自体は珍しいが、狙われるほどじゃないってことで残しておいた。
「そして剣についてなのですが……近くの街に、信用できるベテラン剣士様がいらっしゃいます。しばらく弟子入りなさってはいかがでしょうか?」
「弟子入り、ですか……」
――剣士弟子入りルート。
ゲームでは、メインストーリーの戦闘チュートリアルにあたる。
基本を一通り教えてもらえるから、実戦経験がない俺にはぴったりだろう。
でもこれ選ぶと、発生しなくなるイベントが結構あるんだよね……。
まぁどのみち1周で全部を楽しむのは無理か。
何より、今は安全第一だしな!
「……エレノイア様。弟子入り、希望します」
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「承知しました。弟子入りに必要な紹介状は私にお任せくださいね」
「よろしくお願いします」
「出発はどうなさいますか? 今夜お泊りになるようでしたら、神殿内の客室でよろしければお休みいただけます。もし本日中に出発なさりたいようでしたら、すぐに諸々ご用意いたしますが」
「できれば本日、なるべく早めに出発したいんですが」
「そのほうが良いと思いますわ。今ならまだ日は高いですし……暗くなる前には十分到着できますものね」
なんだかんだで俺はうずうずしていた。
アクションRPG『Brave Rebirth』。
その醍醐味《だいごみ》といえば、やっぱりスピード感ある戦闘《バトル》なんだよ。
ゲーム通りなら、神殿近辺の魔物はとても弱い。
初期装備&LV1でも余裕で倒せるはず。
深入りしないよう気を付けて……ほんのちょっとだけ試し斬り。
それぐらいなら、危なくないと思うんだよな!
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準備を待つ間。
神殿の空き部屋を借り、イアンに装備を手伝ってもらう。
服の上からベルトを付け、剣を腰から斜めに吊るす。
部屋に置いてある大きな鏡をチラッと横目でみる。
初期装備のみの割には様になってるんじゃないかと思った――のだが、その直後なんだか恥ずかしくなったのは内緒だ。
「タクト様、紹介状の準備はまだかかりそうですし、今のうちにスキルを試してみてはいかがでしょうか?」
「それもそうだな……」
今のところ、俺が持っているスキルはこの9つ。
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■スキル
光魔術LV1、剣術LV1、能力値倍化LV5★、収納《アイテムボックス》LV1、技能《スキル》習得心得LV1、鑑定LV1、神の助言LV1、言語自動翻訳LV1、攻略サイトLV1
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「既に試したの以外だと、【鑑定】あたりが無難かな」
手始めに、装備したばかりの剣に向かって「鑑定」と念じてみる。
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名前 手作りの片手剣
種別 片手剣
売却目安価格 非売品(譲渡・売却不可)
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「もしかしてステータスみたいに【鑑定】にも詳細って出るのか?」
即座にウィンドウが更新される。
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名前 手作りの片手剣
種別 片手剣
売却目安価格 非売品(譲渡・売却不可)
■説明
物理攻撃力+10
製作者の愛がたっぷりこもっている
とても丈夫で軽く、初心者に最適な剣
■神の一言メモ
ここだけの話、普通の剣と見せかけて、実はワシがこっそり作った1点物の特別な剣なんじゃっ!
軽くて絶対に折れることはないでのう、練習にはちょうどいいじゃろ。
心行くまで剣の道を極めるがよい!
ちなみに売るのは禁止じゃ。
せっかくワシがお主のためだけに作ってやったんじゃからのw
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アイテム鑑定時も一言メモがつくのかよっ!
ってかこの剣、神様が作ったとか初耳なんだけど?!
……待てよ。
そういやゲームでも『手作りの片手剣』は譲渡・売却不可って設定だったな。
魔王討伐《ゲームクリア》&転生《強くてニューゲーム》のたびに1本ずつ追加で強制入手となる上、譲渡も売却も不可でアイテム欄にどんどん溜まっていくもんだから、プレイヤーたちには「邪魔くせぇ」「誰の手作りだよw」「愛が重い!」「呪いのアイテム」等、散々な言われようだった。
それがまさか、勇者のために神様がわざわざ作った特別製だったなんて……。
神様の気持ちを考えたら、なんか、ちょっと切なくなった。
「あのぅタクト様……」
「ん?」
イアンが声をかけてくる。
「えっと……その、ですねぇ……」
言いたい事があるらしい。
だが俯いてモゴモゴするだけで、なかなか本題を出してこない。
というかお前、顔が赤くなってないか?
そんな意味ありげにもったいぶられると聞くのが怖くなってくるんだが……。
警戒しながら恐る恐るたずねる。
「……何だよ?」
イアンは一瞬ためらってから、思い切ったように俺の目を見た。
「あのっ、僕、【光魔術】を見てみたいんですっ!」
「え?」
予想外の言葉に、毒気を抜かれる。
「小さい頃、勇者様と魔王の戦いを描いた絵本が大好きで、祖母にせがんで何回も何回も読んでもらってました。勇者様が【光魔術】でキラーッと剣を作って、悪い魔物をバッタバッタ倒していくところ、すっごくカッコいいんですよ! まさか、ホントにお会いできるなんて……」
イアンは目をキラキラさせながら、身振り手振りを交えて頼み込んできた。
「……俺、魔術の使い方自体よく分かってないぞ?」
「だから試しましょう! 覚えたての時は時間がかかって当たり前です。魔術だったら僕も少しだけ心得があるので、お力になれるかもしれません!」
「ちなみにイアンは、どの属性を使えるんだ?」
「僕は水属性の回復魔術を少々」
ここは、設定通りらしい。
ゲームのイアンはストーリー中盤に仲間にできるキャラだ。
経験さえ積めば、優秀な回復士《ヒーラー》として活躍してくれる。
……ただし育てるまでが物凄く大変なんだけどな。
イアンはさらに畳《たた》みかける。
「それに魔術を試すんだったら、今のうちしかないと思うんです!」
「どういう意味だよ?」
「タクト様は勇者であることを隠したいんですよね?」
「ああ」
「なら今後しばらく、魔術を使うのは無理なはずです」
「どうして?」
「タクト様が使える魔術は光属性のみです。もし人前で【光魔術】を使おうものなら、タクト様が勇者だってバレちゃいますからね!」
「あ……」
光魔術を使えることは、すなわち『勇者』の証である。
正体を隠したいならイアンの言う通り、当面の間は封印せざるを得ないだろう。
「……確かに、試すなら今しかないかもな」
「やったぁ!」
イアンは無邪気に喜ぶのだった。
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イアンの案内で、中庭へと場所を変える。
いつも魔術の練習に使う定番スポットらしい。
そういやゲームのイアンも、昼間はだいたい中庭で何かやってたな。
「まずは……あの術式がいいか?」
手始めに選んだのは、【光魔術】の初歩とされる術式。
ゲームのキャラが魔術を放つ姿を頭に浮かべる。
その記憶に従い、シャキッとポーズを決め、勢いよく術式名を唱えた。
「光球!!」
……しーん。
しかし なにも おこらなかった!
「…………」
ポーズを決めまくったぶん、怒涛の恥ずかしさが襲ってくる。
「だ、だいじょうぶですよっ! 僕なんて何回失敗したことか――」
「…………」
「そうだ! 光球《ライトオーブ》の詠唱呪文は分かりますか?」
「え、『光よ集え』だけど……」
「シンプルで効果をイメージしやすい、とても良い詠唱ですね!」
「……そうなのか?」
「はい。僕のお師匠様は『魔術はイメージであり、イメージこそ魔術。詠唱時の最重要事項だ』って口癖のようにおっしゃってました……今度は、しっかりイメージを固めてから、ゆっくり詠唱してみてはいかがでしょうか?」
イアンの師匠である『天才魔術師』の顔を思い出す。
何かを極めるキャラには変わり者が多いが、アイツも例外なくそうだった。
だが、腕だけは確かだった……なら間違いないだろう。
気を取り直し、もう一度挑戦してみることに。
イアンが固唾を飲んで見守る中。
まずは手のひらを前に向け、右腕を真っすぐ正面に伸ばした。
落ち着いて瞳を閉じ、集中力を高めていく。
とにかく集中して、集中して。
辺りの気配が薄れていく。
静寂だけが残ったところで、ゆっくりと詠唱を開始した。
「…………光よ、集え…………」
自分の手のひらに、真っ白な光が集まってくる様子をイメージする。
光が、だんだん丸く小さく、1つになってゆく――
……今だ!
カッと目を見開き、叫んだ!
「光球!」
――ぽぅ
俺の手のひらの前に静かに現れたのは、優しく輝く白い光球。
「これ……成功だよな?」
目の前の光景が信じられない。
「せ、成功ですよタクト様っ!」
「おっしゃーーーッ!!」
魔術の成功は本当に嬉しくて、俺達は2人して飛び上がって歓喜した。
だが間もなく、俺は1つの事実に気づいてしまった。
気まずいながらもイアンに話しかける。
「イアン、あのさ……」
「何ですか?」
「確かに魔術は成功したんだけど、よく考えたら球系の術式って魔術術式の中じゃ1番地味なんだよな。イアンが見たがってたのは魔物を倒せる光の剣みたいな派手なヤツで……伝説みたいにかっこよくなくてごめんな――」
「何言ってるんですか!」
すかさず強く否定するイアン。
「考えてもみてください。タクト様は本物の勇者で、あんなにすごいスキルをいっぱい持ってるんですよ? そのうち絶対に強くなります」
「でも俺は――」
「むしろ感動してます!」
「え?」
予想外の返しに、ちょっと驚く。
熱っぽく語り続けるイアン。
「タクト様は魔術を使うの、初めてだったんですよね?」
「ああ、そうだけど――」
「じゃあやっぱり、あの憧れの勇者様の【光魔術】を初めて見たのは、僕ってことになりますよね? これってすごくないですかっ!」
なるほど、そういうことか……。
「……それだけじゃないぞ。俺が別の世界から、この世界にやってきて初めて会った人間って、誰だか分かるか?」
「……あ、もしかして――」
「そう。お前だよ、イアン」
「すごい!」
「さらにいうと、剣の装備方法や魔術スキルの使い方を初めて教えてくれたのもイアンだな。正直すごく助かったよ。俺1人じゃどうしていいか分かんなかったし」
「!!!」
目を輝かせたまま、イアンは言葉を失った。
「でもさ……今の俺じゃまだ一般人レベルだし、正直さっきの光球《ライトオーブ》もショボかったと思うんだ」
「そんなことは――」
「だから俺はこれから弟子入りして、剣を修行してくる。魔術だって練習して、スキルレベルを上げまくってやる。そんで伝説の中の勇者みたいに、悪い奴らを光の剣でバシバシ余裕でやっつけられるぐらい強くなってやる! そしたらもう1度……お前に、【光魔術】を見せてやるよ!」
「……絶対に?」
「絶対だ」
「約束ですよ!」
「ああ、男の約束だ!」
拳をぶつけ合う俺達。
「僕も【水魔術】の練習とか、これまで以上にもっともっと頑張って、次にタクト様にお会いする時には『僕も強くなった』って言えるようになります!」
その言葉にゲームでの彼を思い出し、思わずニヤッとしてしまう。
「イアンは……絶対強くなれるよ」
「ホントですか!」
「おう! お互い、頑張ろうな」
「はいっ!」