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 日曜日。

 惰眠をむさぼっていると、唐突に僕の部屋のドアがバタンッと開け放たれた。

「ちょっと! いつまで寝てるんですかっ?」

「お~い、起きろ~!」

「えっ! なにっなにっ?」

 慌てて飛び起きると、僕の部屋に真帆と榎先輩が居た。

 二人は僕のところまでずかずかやってくると、

「早く起きてください!」

 体に掛けていたタオルケットを引っぺがしやがる。

 なんだ、なんだコレは! また夢か?

 思わず何度も瞬きをしてみたけれど、目が覚める気配はない。

 というより、僕はすでに目を覚ましているらしい。

 間違いなくこれは現実なのだ。

「な、なんで勝手に入ってくるんだよ!」

 タオルケットを奪い返しながら僕が叫ぶと、

「勝手になんて入ってません。ちゃんとお母さんから許可は頂きました」

 真帆に言われてドアの方に目を向ければ、母さんが気持ちの悪い笑みを浮かべながら部屋の中を覗き見ている。

「いいわねぇ、突然にモテモテで!」

「よくない!」

 僕は叫んでから、無理やり二人を部屋から追い出す。

「わかったから! とにかく部屋から出てってよ! すぐ下りるから!」

 どたどたと階段を下りていく三人の足音。

 楽し気な笑い声まで混じって聞こえて、何だか無性に腹が立った。

 急いで服を着替えて階段を降りると、リビングで父さんと母さんを前にして二人とも紅茶なんか飲んでいた。

 真帆はピンクのワンピースみたいなのを着て腰にベルトを巻いており、榎先輩は読めない英字が書かれた白い半袖Tシャツにジーンズといったいでたちだった。

「遅いですよ、シモハライくん」

 口をとがらせる真帆に、僕は、

「あのね、わざわざ僕の部屋まで起こしに来なくてもいいんじゃないの?」

「またまたぁ、彼女に起こしてもらえて嬉しかったくせにぃ!」

 ニヤリと笑う真帆。

 その笑い方が妙にムカつく。

「嬉しさ感じる前に、戸惑いと腹立たしさしかなかったよ」

 僕は深いため息を吐きながら、ダイニングの対面カウンターの椅子に腰を下ろした。

 そこからちらりと父さんに目を向けると、父さんはにへらとしまらない笑みを浮かべながら、

「よかったな、優。両手に花じゃないか」

「……どうも」

 と僕は返事する。

 いいのか悪いのかよく解らん。

 確かに二人とも見てくれは良いかもしれないけど――

 と真帆と先輩に視線を向けたところで、両親と二人の間のテーブルの上に、例の魔術書が置かれていることに気が付いた。

 いや、魔術書だけじゃない。他にも、書庫に収められていた読めない本が何冊か山積みにされているじゃないか。

「――それって」

 と僕が指さすと、「あぁ、これな」と父さんが口を開いた。

「まさか特価で買った読めない本が、榎さんのひいお爺さんの本だったなんてな。父さん、びっくりしたよ」

「もしかして、全部返すの?」

「あぁ」

 と父さんは頷き、

「どうせ読めないし、榎さんのご両親がうっかり売ってしまったものだったんだろう?」

 別に構わないさ、と言った父さんに、榎先輩は軽く頭を下げながら、

「すみません、ありがとうございます」

 にっこりと笑みを浮かべた。

 その笑顔に、ますます締まりのなくなる父さんの表情。

 そんなもの、見たくはなかったんだけどな――

 と微妙に幻滅したところで、

「さて、それじゃぁ、行きましょうか」

 と急に真帆が立ち上がった。

 それに続いて、先輩も「ごちそうさまでした」と言って席を立つ。

「――行くって、どこへ」

「どこって、デートに決まってるじゃないですか」

「デート?」

「あらあらあら――」

 と途端にニヤつく母さん。

 でも、それが本当の意味でのデートでないことを、僕は知っている。

 昨日はあのあと、二人だけで話が盛り上がっていたからてっきり(うっかり)もう僕は必要ないだろうと(都合よく)考えていたんだけど、どうもそうはいかないらしい。

「この本は、明日また優にもっていかせるよ」

 父さんが当たり前のようにそう言って、

「ありがとうございます!」

 礼を述べる榎先輩。

 えぇっ! なんて声はもうあげない。

 あの量を持って帰らせるほど、僕だって非紳士的じゃない。

 ただ。

「――やれやれ」

 小さく、諦めの息を漏らしたのだった。

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