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誰からも信頼され、人一倍仲間思いのキラキラした龍聖君が、私は本当に大好きだった――
学生時代の憧れは、いつしか「好き」という感情に変わっていき、その想いはずっと私の心の中を占領し続けている。
誰も知らないこの想い。
きっと、一生、誰にも秘密。
だって、こんなにも才能に溢れ、将来は鳳条グループを引っ張っていく人に想いを伝えるなんて、それは「悪」とさえ思えたから。
龍聖君には必ず幸せになってもらいたい――
一流企業の美人なお嬢様と結婚して、社長になって立派に会社を守ってほしい。いつかは世界中で活躍するだろう龍聖君の未来を、私は「仲間」として応援し続けなければならない……ずっとずっと、そう思って生きてきた。
それが1番正しいことなんだと、自分の心に何度も何度も言い聞かせてきた。
近々、龍聖君は鳳条グループの海外支社で勉強するためにアメリカに旅立つ。
今夜、みんなで集まった後、龍聖君はたまたま1人残った私に声をかけ「最後の思い出」作りを提案してきた。
大学の卒業祝い……そんなノリだったのかも知れない。
たぶん他の誰でも良かった、女性なら誰でも。そう思うと悲しくなるけれど、でも……きっとこれで良かったんだ。
あなたを忘れるために私は抱かれた。
そう思えばいいんだ。
これで……全て終わり。
私は、いつかあなたより素敵な人と出会って、新しい恋をして、結婚する。
学生時代からの想いと、今日の最後の思い出を完全に忘れてしまえる時がくるよう、振り返らずに前を向いて進んでいきたい。
「龍聖君に負けないくらい幸せになるんだから!」と、胸の奥で叫び、私は1人歩き出した。
***
それから数日後――
特に連絡も取り合わず、龍聖君はアメリカへと旅立っていった。