テラーノベル
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リンクを開いたとき、思わず声を呑んだ。
そこに映っていたのは、私だった。
でも、私じゃなかった。
肌は発光するみたいに滑らかで、目は大きく、髪の艶まで完璧。
表情は自信に満ちていて、角度もライティングも、全部“理想の私”だった。
何より怖かったのは──
その動画に、**「今日投稿した覚えのない自撮り」**が混ざっていたことだ。
(え……いつ撮った?)
鏡越しの私に似ていた。
でも、あの角度は、自分じゃ絶対に撮れない。
一瞬だけ、冷たい汗が背中を伝った。
⸻
次の日。
学校で、また数人が私のSNSを見て笑っていた。
「なんか垢抜けた?」「まじでインフルエンサーじゃん」
自分じゃない誰かの言葉で、私はどんどん定義されていく。
けれど。
「昨日の投稿、ちょっと顔違くね?」
そんな声が、後ろの席から聞こえた。
私は振り向かなかった。
でも、鼓動だけがうるさくなっていく。
⸻
帰宅後。
スマホを見て、凍りついた。
通知欄に、「自分の投稿」が並んでいる。
でも……投稿した覚えがない。
全部、私の“理想通りの写真”だった。
加工具合も、構図も、完璧すぎて自分でも笑ってしまう。
それらは、私のアカウントから投稿されていた。
(……やばい、なにこれ)
震える手でDMを確認すると、あの“名無し”からメッセージが届いていた。
《気に入ってもらえましたか?
“本物のあなた”を、こちらで更新しておきました。》
《これが、バズるってことですよ。》
⸻
夜。
鏡に映る自分を見て、ふと思った。
(この顔……ちょっと、物足りないかも)
スマホを開き、自撮りアプリを立ち上げる。
フィルターをひとつ、ふたつ。輪郭を少し、目を大きく、肌を明るく――
ようやく、納得のいく“私”ができあがった。
現実の顔より、画面の中の自分の方が好き。
だってそっちの方が、みんなに愛されるから。
(きっと……このまま進めば、“なれる”。)
完璧な私に。
愛される私に。
もう、現実の私は、いらない。
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