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最近、“私の写真”が勝手に投稿される。
完璧な構図、完璧な加工、完璧な私。
でも──私のじゃない。
どこから撮った? どうやって編集した?
質問の答えは、いつもDMの中にある。
《安心してください、あなたは“選ばれた”んです。
本当の“バズり方”を知れる人は、ごく少数ですから。》
⸻
教室で、誰かが私の投稿を見ていた。
「マジで垢抜けたよな〜」「急にレベル上がった」
「でも、なんか人間味ないっていうか……」
私は聞こえないふりをして、ノートにペンを走らせる。
(それでいい。私の“中身”なんて、見られなくていい)
⸻
放課後、事務所からメッセージが届いた。
オーディションの合格通知だった。
フォロワー数と投稿の完成度だけで、審査が通ったらしい。
“彼女、数字持ってるから”
たった一行の推薦文。
誰が書いたのかはわからない。でも、なぜか思い出した。
(あのDM……)
スクショを確認しようとしたけど、もう消えていた。
⸻
夜。
SNSで、ある投稿がバズっていた。
《顔がいいだけで売れる時代、ほんと終わってる》
《加工人間ばっかりで吐き気する》
そこには、“私”の写真が貼られていた。
引用RTには、肯定も否定も、ごちゃ混ぜの感情が渦巻いていた。
「この子好き」「むしろリアル」「アイドルっぽい」
「どうせ中身空っぽ」「承認欲求モンスター」
私は何も言わない。
言う必要もない。
だって今の私は、もう──**“顔”だけで、生きてるから。**
⸻
「中身なんてどうでもいい」
誰かが言ってた。
私も、そう思ってた。
けど、心の奥に小さく残ってた“本当の私”が、その言葉に少しだけ震えていた。