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白山小梅
12
#借金
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「お待たせしました。マスクメロンパフェです」
タイミングよくパフェが届き、二人のちょうど中間に置かれた。半分に切られたマスクメロンの上に、角切りになった果肉が高く積まれ、その周りを皮がついたままのマスクメロンがまるで花のようにぐるりと囲っている。
「うわぁ、美味しそう!」
よだれをグッと飲み込み、瞳を輝かせた七香は早速スプーンを手に取り、どこから食べようかと悩み始めたが、昴はパフェをじっと見たまま微動だにしない。
「……なぁ、これってどうやって食べるんだ?」
「どうやってって、食べ方にルールなんてないよ。落とさないように上手に食べればいいだけ」
七香は角切りになったマスクメロンをスプーンで取って口に放り込むと、うっとりと目を閉じる。
昴はそれに倣うように、マスクメロンを口に頬張った。そして無言で食べ続けると、すぐに二口目を口に入れる。
「どう?」
「ん……悪くない」
どうやら相当美味しかったようで、すでに三口目に入っていた。それを見た七香は満足そうに笑い、その姿をカメラに収めた。
「お口に合ったようで良かった。甘いもの、すきなの?」
「そんなに積極的には食べないけど、意外と知らないだけなのかもな。女子高生はこういうのをよく食べてるイメージがあるけど」
「まぁ好きだけど、高いから頻繁には食べないよ。でも試験の後とか、遊びに行った時は絶対に食べちゃう」
「彼氏と分け合ったり?」
すると七香は目を細め、頬をぷくっと膨らませる。
「私はあなたと違うの。高校生みんなが恋愛してると思わないでくれる?」
昴は何かを察したかのように、不敵な笑みを浮かべて七香を見つめてきたので、その視線を遮るようにカメラを構えてシャッターを押した。
「じゃあいないし、いたことないんだ」
「……が、学生は部活も勉強も忙しいですから」
「したいと思わないの?」
「うーん、そりゃあしたいとは思うけど、好きの基準がよくわからなくて」
「告白されたことは?」
「……あるけど、その人のことをよく知らないのに付き合うって、なんかなぁって思って」
高校に入ってから、二人の男子に告白された。一人はクラスが別のクラスのサッカー部員、もう一人は一学年上の水泳部員。どちらも話したことはなく、知らない人だった。
互いのことを間接的にしか知らないのに、どうして好きだなんて言えるのか、七香にはわからなかったし、これから付き合って好きになる自信がなかった。
「付き合ってから好きになればいいじゃないか」
「もし好きになれなければ別れるんでしょ? だったら付き合わない方が良い」
「いい経験にはなるかもよ」
それは別れる前提で付き合うということだろうかーー付き合った人と結婚したいとすら思っている七香にとっては、いつか別れが来るだなんてあり得ない考え方だった。
「今は……そんな悲しい経験はしたくない」
「フラれた子は悲しんでると思うけど」
七香は唇をギュッと結んだ。確かにそうかもしれない。でも人を傷つけないために自分を押し殺して付き合うなんて、そんなことはしたくなかった。
「……本当に意地悪だよねぇ。だってやっぱりハッピーな未来が想像出来た方が幸せじゃない?」
「俺は逆。未来なんてなるようにしかならない。それなら今が楽しい方がいい。っていうか、高校生なんだから今を楽しく生きろよ。慎重過ぎても、チャンスを逃がすだけだぞ」
「チャンスだからこそ慎重になるんだよ。こんなにラッキーでいいのかなって」
「へぇ……確かにタダでマスクメロンパフェを食べられているわけだしな。そんなラッキー、普通はないかぁ」
「えっ」
「このパフェ見返り、どうしようかなぁ」
「ちょ、ちょっと待って! お詫びの奢りじゃないの⁈」
「冗談だよ。慎重な割には信じやすいんだな……っておいっ! 一人で食べるなよ!」
「見返りを求められてもいいように、今のうちに満足感を得ておく」
冗談と言われても、これまでの彼の言動を見ていれば現実になる可能性だってある。不安を感じた七香はパフェを自分の方に引き寄せて抱え込むと、一人でパクパクと食べ始めた。それを阻止しようと昴は七香の腕を掴んだ。そのやりとりが急に可笑しく感じたのか、二人は突然笑い出す。
「あーあ、子供っぽいことしちゃった」
「俺も何を真剣に怒ってるんだか……まぁお金を出すのは俺だけど、平等に半分ずつ食べよう」
「うん、じゃあ遠慮なくご馳走になります」
それから二人は他愛もない会話をしながらパフェを食べ進める。先ほどよりも少しだけ距離が縮んだように感じていた。