テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
つっづきー!!!
すたーと!
その日の夜。
翔太は珍しく早く眠っていた。
熱のせいで身体が重い。
咳も少し残っている。
誰にも気づかれないまま、翔太は薄い布団にくるまって目を閉じた。
そして――夢を見た。
まだ、翔太が赤ちゃんだった頃。
小さな小さな身体で、
ふわふわの毛布に包まれている。
「うわっ、目でかっ!」
「かわいっ!」
「翔太、こっち見てる!」
兄たちの笑い声。
その頃の深澤家は、今よりもっと明るかった。
両親もいた。
亮平もまだ元気で、
よく笑って、
家中を走り回っていた。
「翔太はほんま天使やな〜!」
康二が頬をつつく。
「俺抱っこする!」
「お前さっきしただろ」
照と大介が言い合いながらも笑っている。
辰哉は優しくミルクを作っていた。
赤ちゃんの翔太は、
そんな兄たちを見て、
きゃっと嬉しそうに笑う。
前髪なんてなくて、
大きな目をきらきらさせて。
誰よりも愛されていた。
でも――
夢の景色が少しずつ暗くなる。
ある雨の日だった。
家の電話が鳴る。
辰哉が出た瞬間、
顔色が変わった。
「……え?」
震える声。
次第に、家の空気が凍っていく。
『事故』
『病院』
『両親が——』
意味は分からない。
まだ小さかった翔太には理解できない。
でも。
兄たちが泣いていた。
その日からだった。
全てが変わったのは。
亮平が高熱を出すようになった。
喘息発作を起こすようになった。
過呼吸で倒れることも増えた。
兄たちは必死だった。
中学生や高校生になったばかりの兄たちが、
親代わりになろうとしていた。
だから、
静かな翔太は後回しになった。
最初は違った。
「翔太、ごめんな」
「待っててな」
ちゃんと見ようとしてくれていた。
でも、余裕がなくなっていった。
泣いても、
咳をしても、
熱を出しても。
「あとでな」
「今忙しい」
「静かにして」
そう言われることが増えた。
夢の中の小さな翔太は、
兄たちを見上げていた。
大好きだった。
抱っこしてくれた手を覚えている。
笑ってくれた顔も覚えている。
でも。
少しずつ、
その目は自分を見なくなった。
夢の最後。
まだ幼い翔太が、
ひとりで暗い部屋に座っていた。
兄たちの声は隣の部屋から聞こえる。
「亮平、大丈夫か!?」
「薬!」
「熱また上がってる!」
必死な声。
その中で翔太は、
小さな声でつぶやいた。
「……しょうたも、くるしい」
でも、
誰にも届かなかった。
そこで夢は終わった。
翔太は薄暗い部屋で静かに目を開ける。
頬が濡れていた。
でも、泣いていることにも気づかないまま、
「……けほっ」
小さく咳をした。
コメント、いいね、たくさんまってます!
コメント
4件

辛いよね。 続き待ってます。

2,847
kaede🍁