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「何その白いの」
私のヘソほどまでしか無い少女が話しかけてきた。こんなタバコの吸い殻も無く、ゴミ集積所も散らかっていない治安の良さそうな住宅街だから知らない男に話しかける危険を理解していないのだろうか?治安が良さそうと云っても夜で人通りも少なく車もほぼ通らない閑静な住宅街。そこをそんな時間に帰らせる親御さんもどうなのだろうか。
「ねぇ、何それ」
この少女の言う“白いの”と云うのは私の鼻に突っ込まれたティッシュの事だろう。私は花粉症気味で七草粥を食べる頃からスギに苦しめられているのである。いや、そんなことはどうでもいい。何故この少女は鼻にティッシュを詰め込むと云う日本の伝統文化を存じていないのか?確かにこの方法は鼻腔内粘膜を傷つける恐れがあるのであまり推奨はされていない。現に私も両鼻から血を生み出す事が出来るグロテスクマシーンになっている。サブカルチャーに触れて来なかったし、親に間違えた治療法を教わった訳では無いのだろう。ますます親御さんがこんな時間にここを通らせているのを疑問に思う。私と云う不確定要素を考慮していなかったのか。
「お兄ちゃんは鼻水がズビズビしちゃうからそれを止めるためにティッシュを詰めてるんだよ」
「ふぅ〜ん」
私と云う生粋のロリコンがこんな生物逃がすわけは無い。
「お兄ちゃん疲れちゃって…どこか休める場所は無いかな?」
「いいとこあるよ〜着いてきて」
背中には赤いリュックを背負っていた
公園だった。オフピークというのも大変いいものだ。普段の喧騒的な雰囲気に濁点がついたかのように幻想的になる。ここもまた閑静が漂っている。前回、塾をサボった時は江ノ島に行ったものだが、夜の江ノ島というのは大変楽しかった。江ノ島と云っても七里ヶ浜海岸を探しものをするかのようにあくがっただけなのだが、無人と云うものは大変大変素晴らしい。車は幾らか通るが車は“車”と云う生き物だと捉える事で精神に些か安寧を齎す事が出来る。いや、夜だの関係なく海と云うものが大変大変大変素晴らしいものなのかもしれない。全てを産み出し、全てを飲み込み、多くを溺れさせる。万物は須らく海に帰るべきなのかもしれない。いや、実際、本能の奥底から帰る事を望んでいるのかもしれない。ケニー・アッカーマンも人は何かに溺れていないと生きていけないと言っていた。これは人が海に溺れたいと云う深層心理の現れなのではないだろうか。
「じゃ〜ん」
可愛い。子供の嫌いな私でもつい斯く口ずさんでしまう。子供は性的嗜好の対象とはしていても、愛玩対象とはしていないのである。なので普通は『五月蝿い』『頭に響く』だのネガティブな言葉が出てきても『可愛い』だなんて言葉は出てこないのだ。この時から私はこの娘に惚れてしまっていたのかもしれない。
「じゃあ…行くね」
「待った!」
咄嗟に声が出た。ここで逃しては官能小説のネタが逃げるも同然である。
「お礼をさせてほしい」
「?」
「気持ち良すぎて警察から『子供に教えるのは禁止』と言われている事があるんだが…」
「なぁに、それ?」
「『くすぐりっこ』だ」
「キャハハ。それくらい知ってるよぉ〜」
「いいや、普通のくすぐりっこでは無い。昔の偉人『オナン』が発見したくすぐりポイントと云うものがある!!」
オナンは自慰行為などしなかった筈だが…どこかの哲学者が公開で行ったのが初めてとされている筈。そもそもオナンは神話上の人物で偉人と言っていいのか疑問である。
「大人達はほぼ皆知っているが子供には教えない、そんなくすぐりポイントをお礼に教えてあげよう。」
「気になる、気になるぅ!」
「ただ、やっぱり人目が気になるからあそこのトイレで教えてあげよう。」
公衆トイレを指差した。