第2章「仄暗い願い」その28
「……これを、届けようとしてくれたのか?」
発表はすでに終盤に差しかかっていた。
口がきけない少年を演じる岡島が、香島演じる割って入ってきた皮肉屋の男に勇気をもらい、青年役の相瀬が落とした財布を返そうとするシーンだ。
「だったら、すぐに返せばよかっただろう。へたをすれば、盗んだと疑われる」
「っ!」
相瀬(青年)の言葉に、目に見えて岡島(少年)はおびえた表情を見せた。
表情だけではなく、顔を俯(うつむ)かせている。
小劇場の後ろのほうで見ていた修介には、表情よりも、顔やほんの少し後ずさった動きからのほうが、岡島(少年)の心の機微(きび)が伝わってきた。
「――だからこそ、すぐ渡せなかったのさ」
「?」
「タイミングが悪かったら、盗んだって疑われる。話ができないんだから尚更ね。でもそのまま持ってるわけにもいかないから、家までいってポスト**********
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