テラーノベル
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「しにがみ、撤収だって」
ふとそう言われ、ええ、と驚いた。なんてったって、まだ宝石を詰めている途中だ。まだこんなにも余っているのに、もったいない。
もごもごと口を動かしていた僕に困惑の目を向けているぺいんとさん。
「……あとすこしだけ、稼いでもいいですか?」
恐る恐る聞けば、相手は目を見開いたあと、少しの間固まった。
未だに電話口に耳を当てているぺいんとさんは少しして、ニヤリと笑った。
「───俺もそう思ってたところ!」
微かに聞こえる、電話先での焦ったような、困惑したようなトラゾーさんの声。
その声を遮るように、ぺいんとさんは叫んだ。
「あと5分!」
『はあ?!』
「クロノアさんとお前なら、やってくれんだろ?」
『……』
お宝を詰めながら、しんと静まり返ったこの空間で、お宝のぶつかり合う音だけが響いていた。
綺麗なダイヤモンド、真っ赤なルビー、高価そうなネックレス……。
きらきらと、音がしていた。
『───五分だけだぞ!』
「さんきゅー!」
ぴ、と電話の切る音を響かせたあと、ぺいんとさんはこちらに振り向き、満面の笑みで僕を見た。
「───稼げなかったら、トイレ掃除半年はお前担当な!」
「稼いでやりますよ───この中の誰よりも!」
あとは必死にお宝をかき集めた。
金色、赤色、透明、青色、緑色……。宝石の集まりを見るのが、こんなにも楽しいことなんだと、最初は思いもしなかった。
色とりどりの宝石は、目の奥を撃たれたように痛くさせる。
カチカチと鳴る宝石は、まるで弾の入っていない銃弾をひたすら撃つ音。
きらきらと輝く宝石は、まるで銃のような鈍い光を放っている。
(怖い)
銃が、頭から離れない。
あの時のトラウマが悪夢のように襲いかかり、自分を疲弊させる。
けれど
(───まだ)
たとえトラウマに似ていようとも、素敵なものは素敵だ。
……………
「ふう……」
服は砂を被り、乱れた息はマントを揺らす。
「やっぱクロノアさんの言うとおり、まだ隠れてましたね……」
ぜえぜえと息を吐いたり吸ったりする自分たちは、ひどく疲弊していた。なんと言っても、やはり隠れていた警備員と戦ったせいだろうか。
「……でも、五分はきついね。まだ二分しか経ってないけど、そろそろ帰ってきてくれなきゃ───」
「クロノアさーん!!!」
ふと、遠くで声がした。
いつもの、おちゃらけたしにがみさんの声だ。どうも、盗む手際だけはいいようで。
「どうですか、盗んできましたよ! 間に合いましたか?」
肩を揺らすぺいんととしにがみさんの手元には、あまりにも多い宝石がじゃらじゃらと光っていた。
「───え、こんなに?」
ふと口に出たのは、いいものとは言えない声質だった。
確かに、四人で分担して帰ればもちろん持って帰れる量には抑えられている。
ただ……
「……帰りは歩きっすよ?」
「ええ、だから持って帰れる量に───……ええっ?!?!」
反応が遅れながらも反応を示したしにがみさんに、ぺいんとも驚いた声を出していた。夜の中、響き渡る二人の声はいつまでも響いていて。
「……まあ、言わなかったこっちが悪いんで、歩いて持って帰りますか」
笑顔でそう言い、四人で歩き出した。
───後ろの草木が揺れた音は、みんなの声で聞こえなかった。
紫秋_4aki.
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#日常組
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