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翌日。
指定された場所は古びた商店街だった。
昼間なのに人通りは少ない。
シャッターの閉まった店が並び、歩いているのは数人だけ。
俺は集合場所と書かれた喫茶店の前に立った。
時間は午後一時。
約束の一分前。
「時間ぴったりだね」
後ろから声がした。
振り返る。
帽子をかぶった女の子。
42番だった。
昨日と同じ帽子。
昨日と違うのは、右手の包帯がなくなっていたことだけ。
「……君が42番?」
女の子は少しだけ笑った。
「番号で呼ばないで」
「私は美咲」
初めて名前を聞いた。
「神谷悠真」
「知ってる」
即答だった。
「組織は参加者全員の名前を共有してるから」
その言葉だけで背筋が寒くなる。
二人で喫茶店へ入る。
店内は静かだった。
年配の店員が一人。
客は俺たちだけ。
席に座ると、美咲が小声で言った。
「普通に話して」
「え?」
「盗聴されてる」
俺は思わず周囲を見回した。
「見ない」
美咲はコーヒーを一口飲む。
「見たら気付かれる」
落ち着きすぎている。
この子は一体何者なんだ。
スマホが同時に震えた。
【本日の案件】
【喫茶店にある黒い封筒を受け取ってください】
店内を見渡す。
レジ横。
小さな棚。
黒い封筒が置かれていた。
誰でも取れる場所。
美咲は立ち上がる。
「行こう」
レジへ向かう。
店員は何も言わない。
俺たちを見ることすらしない。
美咲が封筒を持つ。
店員は静かにうなずくだけだった。
店を出る。
十分ほど歩いた公園。
人気がないベンチへ座る。
美咲が封筒を開く。
中には現金。
そして紙が一枚。
俺は紙を見る。
そこには住所が書かれていた。
その下に。
【この住所へ封筒を届けてください】
それだけ。
「これだけ?」
俺が言うと、
美咲は首を横に振った。
「違う」
「え?」
「本当の仕事はここから」
その瞬間だった。
美咲が紙を裏返す。
裏側には。
肉眼では見えなかった小さな文字。
びっしりと。
何かが書かれていた。
「これ……」
俺は息をのむ。
住所なんかじゃない。
人の名前。
口座番号。
電話番号。
住所。
そして。
赤字で書かれた一文。
**『回収対象』**
「これが組織の名簿」
美咲が小さく呟く。
「私たちは荷物を運んでたんじゃない」
「次の犯罪者を運んでたの」
俺の頭が真っ白になった。
封筒。
紙袋。
ロッカー。
全部。
全部つながってしまった。
その時。
公園の入口に一台の黒い車が止まった。
運転席から男が降りてくる。
スーツ姿。
サングラス。
美咲の顔色が初めて変わった。
「悠真」
小さな声だった。
「走って」
男はこちらを見ていた。
(第二十三話へ続く)
コメント
1件
いやー、一気にスケールが変わった回でしたね。42番が美咲という名前で、組織が参加者全員の名前を把握してるっていう冷たい事実…背筋が寒くなりました。そして「私たちは次の犯罪者を運んでた」の台詞、これまでのロッカーや封筒のやりとりの意味が全部裏返る感じで鳥肌立ちました。ラストの黒い車も含めて、次回が待ちきれないです。