テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リクエストいただいたのでいわふか短編書かせていただきます!
・登場CP
いわふか💛💜
・妖怪パロ、深澤さんが人間以外の存在です
・少し前の時代を舞台にしています。作者が言葉遣いなどに疎いため、ほぼ現代の言葉遣いでセリフを書いています
・アイドル設定なし
・ご本人とは一切の関係がございません
⚠️地雷の方、苦手な方はブラウザバックをお願いします。
· · ───── ·✧· ───── · ·
時は明治から大正にかけての時代。
西洋文化が急速に日本に溶け込み、街並みが変わりつつある時代だった。
赤レンガ造りの洋館と木造建築の民家が混在し、道行く人の服装も和洋折衷となっていた。
そんな街中に建つ一軒の薬屋。
1人で営んでいる店主、岩本は店の奥で煙草を吹かしていた。
今日は生憎の雨。
雨粒は瓦を叩き軒先を伝って地面へと落ちていく。
こんな日は客足も少ないものだ。
奥の部屋にある座敷で胡座をかき、窓から外をぼんやりと眺めていた。
そして、岩本の胸元には早くに旅立った先代の形見である天然石のペンダント。
昔、外国人の客から料金代わりにもらったと自慢していたものだ。
光の当たる角度によって色が違って見え、何やら紋章のようなものが刻まれた珍しい石。
どうやら『不思議なものを引き寄せる力がある』という話らしいが、先代も岩本自身も身につけていて不思議な現象に出会ったことなどない。
岩本がふと時計を見ると17時をさしていた。
しかし雨のせいで太陽も出ておらず、辺りも薄暗くなっていた。
💛「今日は閉めるか…」
煙管を灰皿に起き、表の店を閉めようとした時、軒先に誰か立っているのが見えた。
後ろ姿からして男性。少し華奢な体つきだった。
よく見ると衣類が濡れており、肩を震わせながら雨の降る空を眺めていた。
恐らく傘もなく雨が降り出してしまい仕方なくここで雨宿りしている、と言ったところだろう。
岩本は引き戸を開けその男に話しかけた。
318
866
1,328
519
💛「入れば。寒いだろ」
振り向いた男は肌が白く、どこか儚い雰囲気をまとった若い男だった。濡れた髪はそのままに、毛先から垂れた雨が男の頬を伝う。
男は岩本を見た瞬間気怠げに笑い、髪をかきあげた。
💜「いいのかい?悪いねぇ旦那。助かるよ」
男が店に入ると深い息を吸い込んだ。店の中な薬草や香辛料の独特な匂いで満たされている。
💛「悪いな。ここは薬屋なんだ。いい匂いはしねぇが我慢してくれ」
💜「平気だ。失礼する」
💛「そのままでは風邪をひく。拭くものを持ってくる。上がって待ってろ」
岩本は店奥の座敷の方まで男をあげ座らせた。
男は座敷に上がってすぐの所で行儀よく正座をして待っていた。
台所の方から手ぬぐいを持ってきた岩本。その時、男に違和感を感じ思わず立ち止まった。
💜「旦那?どうしたんだい?」
パッと見、何処にでもいるようなただの男だ。しかし、違和感の正体は影にあった。
💛「……お客さん。影に耳と尻尾が生えてますよ」
💜「え?」
男の影をよく見ると、頭上には2つの大きな三角の耳、腰元にはふわふわのしっぽが生えて揺れていた。
💜「……あっ」
💛「お客さん、人間じゃねぇな。影を見たところ、ヒトに化けた野狐といったとこか」
岩本がそう言った瞬間、男はニヤリと笑いその眼を赤く光らせた。
ゆらりと立ち上がると岩本を見据え、口調をガラリと変え叫ぶ。
💜「バレてしまったならそーがない!」
💛「そーがない?」
💜「俺の正体を見破った以上、生かしておく訳にはいかない。お前の魂、いただくよ!」
💛「俺を殺すってか?」
💜「殺すなんて生ぬるい。お前から魂を吸い取って俺の一部となってもらう!」
💛「そりゃ大層なこった」
💜「ちょっとは動揺しろよ!」
💛「落ち着けよ。美人が台無しだぞ」
💜「そっそんな言葉には惑わされない!」
💜「感の鋭い自分を恨むんだな!!」
その言葉を皮切りに男は岩本めがけて飛びかかった。
しかし、ふと男の鼻腔をくすぐった香ばしい匂いに、男の視線は岩本の視線から脇に逸れた。
視線の先には世間で美味いと有名ないなり寿司。
💜「あぶらあげぇぇぇぇ!!!!」
男は岩本ではなく置かれてあったいなり寿司にかぶりついた。
そして感情が高ぶったせいか、影だけではなく男の生身の体にも狐の耳と尻尾がポンッと現れる。
魂の話は何処へやら、尻尾を振りながらモグモグといなり寿司で頬を膨らませる男。それを静かに見つめる岩本。
💛「……美味いか?」
💜「モグモグ…ハッッ!あ、いやっ……これは違うの!魂喰おうとしたの!」
💛「説得力ねぇって」
💜「ホントだから!これ食べたら魂貰うから!」
💛「そっちの棚にいなり寿司まだあるぞ」
💜「えっどこどこ!?」
💛「フハッそんなんでよく人間の世界で居れるな笑」
結局、男は岩本の家にあったいなり寿司を全て平らげてしまった。
💜「こっ、今度はホントに魂もらうからね!今日はお腹いっぱいで入らないだけだからね!」
💛「ハイハイ」
そうして男は悔しそうな顔で去っていった。
岩本はくすくすと笑いながら呟いた。
💛「狐が油揚げ好きなのホントなんだな」
数日後、男は懲りずに岩本の元へやって来た。
しかも今日は狙ったようにわざわざ店を閉めた後に庭の窓から不法侵入してきた。
💛「今日はもう営業終了だ」
💜「違う!魂貰いに来た!」
💛「ここは薬屋だ。魂は売ってないぞ」
💜「屁理屈いうな!今日こそは魂をいただく!!」
深澤が眼を光らせ、勢いよく岩本に飛びかかった。
しかし、座敷の机に置いておいた客から貰った饅頭が視界に入った。
💜「おまんじゅぅぅぅぅ!!!」
岩本を狙ったはずが気づけば深澤は饅頭に飛びついていた。それと同時に、隠していた耳と尻尾がポンッと出てきた。
💜モグモグモグモグ
💛「お前、魂が欲しいんじゃなくて腹減ってるだけじゃねぇの?」
💜「ふぇ…?アッッ違う!これは……!」
💛「いいって笑 飯食ってくか?」
💜「…献立は」
💛「たぬきそば」
💜「そこはきつねそばであれよ」
💛「いるの?いらねぇの?」
💜「……いる」
💛「待ってろ」
岩本は机に2人前のたぬきそばと煮物を出した。
机に向かい合い、妖狐と食事をする日が来るだなんて思いもしなかった。
💛「狐って意外と手懐けるの簡単なんだな」
💜「……な、なんだよ!狐をバカにしてんのか!」
💛「いや、無防備だなって話」
男は黙り込んで出されたそばをズルズルと啜ったが、その美味しさに狐の耳はピコピコと動いていた。
────その数日後
💜「旦那ァ!ご飯貰いに来た!」
💛「もう魂関係ねぇじゃん笑」
それから男は数日に1回、岩本の元へ飯を食べに来た。
美味い飯を食べる度に、男の隠していた耳と尻尾が現れるのを見るのが岩本の些細な楽しみになっていた。
男は『俺の化ける腕前は超一流!』と豪語していたが感情が揺れる度に正体を露見させる。そんな彼を可愛いと密かに思っていた。
いつしか男は魂を狙う事などすっかり忘れ、岩本の飯を食べるために薬屋へ通うようになっていた。
男が飯を食いに来るようになって1年が経った。
この時代の街は瞬く間に変わっていく。
文明開化の影響で、日本の都会には目新しいものがどんどん増えていく。
そしてそれに比例するように、自然が減っていく。
汽車の煙が空気を汚し、新しい建築物を建てるために森が切り開かれ土地を広げる、木々はなぎ倒され日本の発展の材料になる。
💜「俺さ、山に帰ることになった」
💛「……山に?」
💜「ここら辺は発展しすぎた。妖怪が住むには心狭い。俺らの一族全員でまだ自然の多い田舎に避難する」
💛「いつだ 」
💜「明日の夜」
💛「そうか。……寂しくなるな」
💜「うん」
💛「なぁ、ずっと気になってたこと聞いていいか」
💜「何?」
💛「妖狐って、どうやって人間の魂喰うの」
💜「……簡単だよ」
💛「どうやんの」
男はしばらく沈黙した後、腰を上げ岩本へ近づいた。
そして脚を広げ岩本の体に跨った。
首に腕を回し鼻が触れ合うほどに顔を近づけても岩本は動じなかった。
💜「……口から吸い取って喰う」
💛「……やってみれば?」
2人はどちらからともなく唇を合わせる。
触れるだけの接吻が次第に深いものになっていく。
💜「はっ……んっ…」
💛「魂取らねぇの?絶好のチャンスじゃん」
💜「んむっ…腹減ってないもん……」
岩本は男の帯をスルッと解いた。着物がはだけ月明かりに照らされた男の肌は美しい白さだった。
男は自ら着物を肩から落とし岩本を誘う。
💜「ねぇ、せっかくなら綺麗な女子にでも化けてやろうか?その方が……男として嬉しいでしょ?」
妖しく笑い、岩本の目の前で艶やかな美女へと姿を変えて見せた。現実のものとは思えないほどの美しい女だった。
💜「……ホラ。これくらいは出来るんだよ。我慢できないんじゃない?笑」
しかし、岩本の返事は意外なものだった。
その手を美女に化けた男の頬へそっと添え、首を振った。
💛「…いつもの姿が良い。俺は、俺の元へ逢いに来てくれたお前を愛したい」
男は目を丸くした。悪戯な笑みは消え、ふいっと顔を逸らし元の姿に戻った。
その時、隠してあった耳と尻尾も出てきた。
💜「……あっそ。……物好きな奴…」
狐の耳がピコピコ動いているのを見るとただの照れ隠しなのが分かる。その姿がとてつもなく愛おしく、岩本はもう一度唇を合わせた。
その日、2人は一夜限りで身体を重ねた。
男が姿を消してから、岩本の胸にはぽっかりと穴が空いたようだった。
数年の年月が過ぎ、男が去った時よりも更に文明開化が進んだ。
しかし、岩本の中では時が止まっているようだった。
まだ若いのに重い病気にかかり、自身の作る薬でも治療が追いつかないほどであった。そのうち起き上がることもままならず寝たきりに。
看病をしてくれる者もいない。兄と弟は居たが結婚を機に遠く離れた田舎に越し、間に合いそうにない。
このまま独りで死を待つのみだと悟った。
外を見ると、土砂降りの雨。あの日、唯一愛した男と出逢った時もこのような雨が降っていた。
💛(アイツ……化けるの上手くなってんのかな…ちゃんと飯食ってんのかな…)
そんなことを考える。
呼吸が浅くなり、視界が白く霞んでいく。死期が迫っているというのに、頭の中はあの男のことで満たされていた。
目を閉じると瞼の裏には男の姿が鮮明に映る。
💛(あの時、山に帰るのを引き止めてたら…)
何か変わっていたのだろうか。
その時土砂降りの雨音に紛れ、自分の枕元で小さな音が聞こえた。
僅かな衣擦れの音と床が軋む音。
薄らと目を開けると………
💜「……旦那」
何故か山へ帰ったはずの、生涯で唯一愛した男がそこに居た。どこか寂しげな声で岩本の顔を覗き込んでいた。
その姿は、岩本には天女の迎えのように見えたのだ。
岩本は枕元に置いてあった、自分がずっと身につけていた先代から譲り受けた天然石のペンダントを手にした。
それを男に差し出すと意図を汲み取ったのか、ペンダントを手にし受け取ってくれた。
男は岩本の手を握り、何も言わずにそこに居てくれた。
力も残っていない掠れた声を絞り出し、男へ問いかけた。
💛「……俺の魂……喰わねぇのか……」
男は目を細め、手を握ったままゆっくり顔を近づけてきた。抵抗する気もない。この男になら魂を持ってかれてもいいと思った。
しかし男は魂を吸い取らず、岩本の唇に軽く触れるだけの口付けをしただけだった。心做しか、男の瞳はいつもより潤んでいた。
💜「……死期の近い魂なんて……腹の足しにもなんないよ」
男はそう突っぱねて言った。
岩本は満足したように微笑んだ。
💛「…そうか」
そのままゆっくり目を閉じ、息を引き取った。
💜「……人間の命は短くて嫌だな」
男は岩本を残し、貰ったペンダントを首にかけた。
そして二度と振り返ることなくその場を去った。
時は流れ、時代は令和。
日本はどこもかしこも変わった。
男は一族との決裂を機に都会に戻ってきていた。
緑は減ったが男からすると都会は人が多く妖怪が紛れやすい場所だった。
変化術は完璧なものになり、本人の言う通り得意な術となった。一瞬で容姿を変えられるし、影に狐の耳と尻尾が残ることもない、動揺した時に術がとけるようなヘマもしなくなった。
どこからどう見ても人間として令和の街に溶け込んでいた。
そして男の好奇心は留まることを知らず、大胆な行動に出た。
「ふっか〜!おはよ!」
💜「おはよぉ〜」
「今日の体育女子と合同らしいぜ!」
💜「マジで!?モテちゃうな〜笑」
「うわウザッ笑」
💜「ハハハハッ」
『現代の青春を謳歌してみたい!』という軽い気持ちで 男は戸籍を偽造し人間の高校に入学し学校生活を送っていた。
男は現在『深澤辰哉』という名前で人間として生きている。
そんな“深澤”が高校2年生になった頃。下校中に急な夕立が街に降り掛かっていた。
傘を忘れた深澤は濡れながら走ったが住処まではまだまだ距離がある。止むを得ず一度どこかで雨宿りすることに。
たまたま見つけた古い商店の軒下に滑り込む。空を見てもしばらくは止みそうにない勢いだった。
深澤の脳裏にふと昔の記憶が蘇る。
もう100年も前の話になる。
あの薬屋と出逢ったきっかけも雨宿りだったなと。
深澤は制服に隠していたペンダントを襟元から出しジッと見つめる。
形見として貰ったこの天然石は未だに美しい色を放っていた。
💛『……俺の魂……喰わねぇのか……』
薬屋の最期の一言が頭を離れなかった。
喰える訳がなかった。
一度喰ってしまった魂は自分の身体の一部となる。
そうなると二度と転生が出来なくなるのだ。
魂を残しておけば、またどこかで薬屋の生まれ変わりに出会えるかもしれない。
そんな淡い期待で薬屋の魂を喰わなかった。
しかし、あれから100年経てどあの薬屋の生まれ変わりには出会えていない。
💜(二度と会えないくらいなら……あの時、俺の一部にしてしまえば良かった……)
そんな後悔まで過ぎった。
その時だった。
ガラガラ…
雨宿りしていた商店のドアが開く音がした。
💛「入れば。寒いだろ」
背後から落ち着いた聞き覚えのある声がした。
深澤が弾かれたように振り向くとそこにはかつて自分が愛した薬屋の男と全く同じ顔をした青年が立っていた。
💜「えっ……あっ…」
深澤は動けずに立ち尽くし青年を凝視する。よく見ると青年の顔はまだ少し幼く、深澤と同じ制服を着ていた。
青年も深澤を見つめ、首に下げたペンダントに目が止まる。
💛「あれ、その石……どっかで見たことあるな」
遠い昔、雨宿りから始まった2人の運命の歯車が今再び動き出した。
𓏸 𓈒 𓂃 狐の雨宿り 𝐄𝐍𝐃𓂃 𓈒𓏸
· · ───── ·✧· ───── · ·
めかぶぷりん様のリクエストでいわふか妖怪パロ短編書かせていただきました!
しんみりするお話になっちゃってすみません……!
ありがとうございました🫶
コメント
4件
はじめまして!!初コメ初いいねです…!! 本当に感動する作品でした😭😭 もういわふかってこれだからやめられないんだよな…と思っちゃいました…💛💜 他の作品も拝見させてもらっててどれも大好きです! これからも追っかけます🫶