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「バサッ」
鷹の羽音がして、前を向いて立っていた少年は後ろを見る。
「キョウ。今日は大丈夫なのか?出歩いて」
キョウより、2つか3つ年上に見える少年が言う。
「許可は取ったよ。それに最近は調子もいいし」
この頃のキョウは9つ。
生まれたのが12月20日。
遅く産まれたから、まだ9つ。
キョウが鬼殺隊を知ったのは11の時。
それまでは、珠世さんにお世話になっていた。
11からは鍛錬を始め、12で柱となった。
最終選別は、占って、受ける年を決めたとか。
だから実質、年齢は同じだが、無一郎とは最終選別を受けた年が違うのだ。
「今日はどこ行くの?」
「それは秘密。いいもんあるから」
「秘密なの?」
「うん」
「じゃあ期待しちゃおうかな」
「はは。あまり期待かけすぎないでくれよ」
そう言って微笑んでくれる彼。
その顔がどうしようもなく懐かしかった。
「よし着いた」
「ここは?」
「ホウライの山の中腹。ほら、町が見えるだろ?
そう言われて、気がなくなり、開けている方へと目を向ける。
「きれい」
しばらく町並みをじっと見ていたら、彼に呼ばれた。
「あっ、そうだ。キョウ。ちょっとこっち来て」
「何?」
「あっち向いてて」
「うん」
何やら髪をいじられてるような。
「よし。できた」
「何か付けた?」
「見てみて」
差し出された鏡を見た。
さっきまではなかった、綺麗な簪が付けられていた。
「すごい!」
目を輝かせながら彼を見上げると、彼は頭を撫でてくれた。
そうだった。
よくそうやって2人で出かけてた。
「キョウ!」
誰かの声でハッとする。
目が覚めた。
夢だったのか。
でも人の気配も、鬼の気配も、鴉や鷹の気配もしない。
誰も居ない。
あの声も夢の中のもの?
布団の上で寝たまま、横を見る。
確かに夢の中で出てきた、あの簪があった。
隣にはいつもの日輪刀が、
涙が出てきそうになる。
いつもつけているのに。
あの簪は、彼がくれたものだった。
確かに彼がくれた。
4年か5年くらい前だったはずだ。
朧げではない。
ちゃんと覚えている。
幸せなあの日も災厄のあの日も。