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あおが一歳になった。 一歳と言えば、そろそろ「マンマ」とか「パパ」とか、可愛い言葉を話し始める時期。 ウチとみあは、どっちの名前を先に呼ぶかで、毎日あおの横で熾烈なバトルを繰り広げよった。
「あお、見て? ウ・チ。ま・き・ね・ぇ・ね!」 「あお! 清楚な『みあねぇね』って言ってみて? ほら、清楚に!」
六歳のウチと四歳のみあに詰め寄られて、あおはポカンとした顔。 そこに、仕事から帰ってきたお父さんがリビングに入ってきた。 ウチはいつもの癖で、お父さんに「あ、おつー」って軽く声をかけた……その時。
あおが、パッと明るい笑顔になって、右手を小さく上げながら言い放ったと。
「……おちゅー!」
……一瞬、リビングの時が止まった。 お父さんは「今、お疲れって言った……?」って震えとるし、みあは「清楚な言葉じゃなか……」って絶望しとる。 あおは満足げに、もう一度「おちゅー!」って言いながら、よちよち歩きでウチの方に来た。
どうやら、毎日ウチが使いよる挨拶を、あおは「一番クールな言葉」として認識してしまったらしい。 六歳にして、妹を立派な(?)社畜予備軍に育て上げてしまったウチ。 あおの「おつー」伝説は、ここから始まったとよ……。
あおが「おちゅー!」を覚えてからというもの、我が家の空気は一変した。 四歳のみあは、相変わらず「清楚可愛い」を極めようとしよる。お気に入りの真っ白なフリフリワンピを着て、公園のベンチで「みあ、清楚やけん。汚れる遊びはせんもん」って、おしとやかに座っとった。
ばってん、そこへ一歳のあおが、満面の笑みで突進! 両手には、どっぷりと湿った、バリ黒い泥団子。 「おちゅー! おちゅー!」 って言いながら、労いの(?)プレゼントをみあの白いワンピにベチャッ!
「……ぎゃああああ! 清楚がぁ! みあの清楚が汚れたっちゃもんーー!!」 公園に響き渡るみあの悲鳴。 ウチ(6歳)はそれを見て、「あお、それは『おつー』じゃなくて『嫌がらせ』ばい……」って遠い目。
みあが「もう、あおは清楚じゃなか! 絶交ばい!」って怒り狂っても、あおはどこ吹く風。 汚れたみあの手を取って、またしても「おちゅー!」って爽やかに握手。 あまりのメンタルの強さに、みあも最後には「……おつー。じゃなくて、みあは清楚!」って言い返しながら、一緒に泥団子作りよった。
清楚と社畜。 正反対すぎる二人の妹に挟まれて、ウチは今日も砂場でお団子を量産させられとる。 文くんが来たら、このドロドロの三姉妹を見てなんて言うやろ……。ウチは空を見上げて、小さく「おつー……」って呟いた。
その日は、文くんが久しぶりにうちに遊びに来る日やった。 四歳のみあは、泥だらけになった昨日のリベンジと言わんばかりに、朝から「超・清楚モード」。 髪を丁寧に梳かして、一番お気に入りのワンピースを着て、「文くんに清楚なみあを見せるっちゃん」って鼻息荒く準備しよった。
そこに、文くんが「お邪魔しまーす」って登場。 テスト勉強か何かで疲れてたみたいで、ちょっと眠そうな顔をしとったと。 チャンス!とばかりにみあが駆け寄って、清楚な微笑み(練習済み)を繰り出そうとした……その瞬間。
一歳のあおが、みあの股下を猛スピードでくぐり抜けて、文くんの足元にスライディング! そして、文くんを見上げて、最高に爽やかな笑顔で右手を挙げた。
「ふー! おちゅー!」
文くん、固まる。 「え……今、あおちゃん、お疲れって言った?」 呆然とする文くんに、あおは追い打ちをかけるように、文くんの膝をポンポン叩きながら「おちゅー! おちゅー!」って連発。
文くんは、一瞬の沈黙のあと、崩れ落ちるように爆笑。 「あはは! ありがとう、あおちゃん。なんか……一気に疲れが取れたよ」 文くんに褒められて、あおはドヤ顔。 一方で、出番を奪われたみあは「清楚な労いじゃなかった……あおに先越された……」って膝から崩れ落ちとった。
ウチ(6歳)は、文くんに「ごめんね、ウチの教え方が悪かったばい」って謝ったけど、文くんは「いや、まきちゃんらしくて最高だよ」って笑ってくれた。
清楚可愛いを目指す四歳と、一歳にして社畜の心を理解した(?)三女。 ウチの三姉妹ライフは、これからもっともっと、クセが強くなっていく予感がしたとよ。