テラーノベル
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舞台の光は眩しかった。
拍手。歓声。期待。
彼は再びステージに立っていた。
技巧的な変奏。
速く、華やかで、隙のない演奏。
指は完璧に動く。
ミスはない。
だが――
「……軽い」
自分の音に、違和感を覚える。
確かに弾けている。
だが、何かが抜け落ちている。
観客は満足している。
それはわかる。
それでも。
「これが……俺か?」
星が眩しすぎて、見えない。
光に飲まれて、本質が消えていく。
最後の和音を鳴らした瞬間、
彼の中に、確かな空白が残った。