テラーノベル
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彼は弾くのをやめた。
誰にも言わず、静かに距離を置いた。
ピアノの蓋は閉じられたまま。
部屋は音を失う。
だが、完全な沈黙は訪れない。
頭の中で、旋律が分解されていく。
断片。リズム。響き。
バラバラになり、形を失う。
「……これでいい」
そう思おうとする。
だがある夜、ふと空を見上げた。
星は、変わらずそこにあった。
「……なんでだよ」
壊れても、消えない。
旋律も同じだった。
どれだけ崩しても、どこかに残る。
その瞬間、彼は気づく。
「消すものじゃ、ないのか」
音楽は、捨てるものではない。
変わるものなのだと。
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