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休止

2 - 第2話    薬

♥

211

2025年06月14日

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なーくんとジェルくんが休止して、しばらく経った。


ころん「莉犬くん、いつもありがとう!」

ころん「助かった!」


莉犬「いやいや!全然大丈夫だよ〜!」

莉犬「俺、暇だからさっ…笑」


ころちゃんの言葉に、いつも通りの声で返す。

スタジオの空気が軽くなるように、いつもより明るめに笑って。

……でも。


(ほんとは、全然大丈夫なんかじゃないんだけどな)


裏で何回も台本チェックして、打ち合わせも増えて、編集作業までこなして。

みんなの負担を少しでも減らせるように――

自分にしかできないことを、

今できるかぎり力を尽くした。


ふたりが休止して、初めての配信をした。



さとみver

画面の向こうで、莉犬はマイクに向かって笑っている。

莉犬「今日も来てくれてありがとう!」

その声は、少しだけ震えていたけれど、誰もそれに気づかない。


なーくんとジェルくんが休止してから、残されたメンバー4人が配信を続けている。

「まだまだ頑張るよ!」

そんな莉犬の言葉が、リスナーの心に少しの光を灯していた。


莉犬ver

「――おつぷり〜!!」


そう言って、配信を切った瞬間。

部屋の空気が、一気に冷えた気がした。


莉犬「……ふぅ。」


机に突っ伏して、深く、静かに息を吐く。

背中が小さく上下するたびに、さっきまでのテンションが嘘みたいに、

部屋の中がしんと静まり返った。


カメラ越しの笑顔は、今日も完璧だった。

冗談も、歌も、リスナーとの掛け合いも、全部ちゃんとやった。


でも――


莉犬「…ごめんね、なーくん、ジェルくん…」莉犬「俺、まだ大丈夫って思ってた…」


思わず漏れた声は、ひどくかすれていた。

のどが焼けるように熱い。

頭も、ガンガンと脈打つように痛い。

視界は、ノイズがかかったみたいにぼやけていた。


それでも配信したのは、「誰か」が待ってるって思ったから。


それだけが、自分の生きる原動力になった。



引き出しにしまっていた、薬の箱を取り出す。


本当は、こういうの使いたくなかった。

だけど、今日はどうしても眠れない気がした。

いや、眠りたかった。

何も考えず、音もない場所で、少しだけ。


願うなら、もう二度と目を覚まさないように…。と。


莉犬「ちょっとだけ……ね。」


指先は震えていた。

それでも体は動いている。


ぱさ、ぱさ、と落ちる錠剤の音だけが、部屋の中に響いた。


手のひらには、市販の風邪薬が10粒ほど乗っかっていた。


手のひらの上の錠剤を勢いよく、飲み込んだ。


口の中には、薬の苦味だけが残った。


水と一緒に飲まなかったせいだろうか、喉に引っかかって上手く飲み込むことが出来なかった。


莉犬「ごほっ、おぇ、」


口の中から、飲み込んだはずの薬が3粒ほど胃酸とともに散らばった。


莉犬「げほっ、」

莉犬「……げほっ、ぅ……おぇ……っ」


かすれた声と一緒に、胃の内容物が吐き出されていく。

体が勝手に震えて、涙がにじむ。

呼吸は浅く、喉がヒリヒリとする。

頭の中がぼやけて、しんどいのに、それでも終わらなかった。

止まらない吐き気と共に寝落ちしてしまった。

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