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「あれ?マリアさん食べないの?」
一馬はサラダを取り分けながら不思議そうに見ていた。
マリアは少し体調が優れなくて、と苦笑いした。
「そうそう、マリアちゃん。」
穂高に呼ばれて持っていたコップの手がぴくりと反応する。
マリアは穂高へと顔を向ける。
「はい、何ですか?」
「生物準備室に忘れていったものあるから、部屋まで来てくれる?一馬とリオさんはゆっくりしてて」
リオは何となく察し、ごゆっくり、と呟いた。
何か忘れていったかな、とマリアは思いながら穂高の後をついていく。
穂高の部屋に通された。
中には時計、ベッド、机、書類。
玄関とは打って変わって物が無さすぎだなと印象を受けた。
「私、何を忘れて……」
穂高は部屋の鍵を締めてからベッドへと腰掛けた。
おいでと手招きをされ、頬を染めながらマリアは穂高の前まで近付いた。
「全く……無防備だね…」
「え?」
「あまりホイホイついて行かないようにね、
他の人に」
「どういう……」
穂高は少し伸びた髪を横に流して首筋を見せる。
「ほら、忘れ物…
飲んでいいよ」
その言葉と首筋でマリアはゴクリと喉を鳴らす。
ゆっくり傍に行くと、穂高の膝の上に座って肩に手を置いて彼を見つめる。
「…どうしたの?」
「どうして……先生はこんなにしてくれるんですか?普通なら怖がったり気味悪がったり……」
「…辛い目にあってきたみたいだね……。
俺はそうは思ってないよ、変わってるのかもね」
マリアは目を見張るが直ぐに柔らかく笑った。
素直に嬉しかった。
受け入れて貰えることが。
「先生」
「ん?」
「食べていい…?」
穂高はマリアを見て微笑んだ。
敬語が抜けたか…と思いながら頭を撫でてやる。
「いいよ」
穂高が言うとマリアは顔を近付け首筋に唇を当てる。
少し舐めてからゆっくり牙を差し込み、ちゅうちゅうと音を立てて血を吸っていく。
(先生の血……甘くて、トロトロしてて美味しい…)
マリアは止められなかった。
お腹も満たされていて充分だったが何故か離れがたかった。
「そんなに美味しい…?」
「うん……甘いの…」
ゆっくり牙を抜いて首筋を見ると、2つの穴とその周りは赤く染っていた。
「ごめんね、先生。
……痛かった?」
「大丈夫だよ」
穂高の大きな手がマリアの頭に再び乗せられる。
マリアは頭からじわじわと暖かいものを感じた。
「食べ終わったなら戻ろうか。
あまり長居すると変に思われるかもしれな……」
穂高は言いながら立ち上がるがクラリと目眩を覚え前のめりになってしまう。
マリアはそれを支える。
申し訳なさそうに穂高の顔を覗き込む。
「ごめんね、先生…
飲みすぎちゃった」
「……大丈夫、急に立った俺が悪かったから
それより…抱きしめてくれてるの?」
意地悪く笑う穂高。
マリアはその状態に気付き顔を赤らめてしまう。
しかし離れはしなかった。
離れたくなかった。
「あのね、先生…」
穂高が体勢を直してもマリアは穂高の服を握ったままだった。
俯いていたが顔を上げて彼を見つめる。
「先生のこと、
好きになっても良いかな…?」
マリアは真っ直ぐに穂高を見ていた。