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ワ”ンッワ”ンッ
横から飛び出して来たのは立派なドーベルマンだった。
(何処かで見覚えあるような…)
拓也に向かって威嚇している。その姿はまさに警察犬の様だった。
拓也「うわ!!なんだこの犬!クソ!どけ、邪魔するなー!!」
拓也は犬の気迫におされながらも怯まず隠し持っていたナイフを取り出した。
優佳「危ない!!」
拓也が犬に襲いかかろうとした瞬間、犬は飛び出し拓也の腕に噛み付いた。
拓也は痛みに悶えながら必死に犬を振りほどこうとしている。
(今ならナイフ取れるかも…!)
私はすかさず拓也の手からナイフを奪おうとするが中々離してくれず苦戦していた。
それに気づいた拓也が奪われまいと腕を大きく振ったせいで額が深く切れてしまった。
それと同時に拓也の腕に押され道端に尻もちをついた。
優佳「え………。痛い!!あ”ぁ”ぁ”…!」
一瞬何が起こったのか分からなかったが額が酷く痛むのを感じ、目の前が真っ赤に染まっていくのを見て切られたのだとわかった。
拓也「糞犬が!!!」
キャインッ
私の声に犬が反応し口を緩ませてしまったのか拓也が犬を壁に叩きつけた。
犬は叩き付けられた力が強かったせいか弱々しく立ち上がらない。
拓也「ああ……!ごめんよ、君の顔に傷を付けてしまった。で、でも君がいけないんだよ。君が僕からナイフを奪おうとするから」
優佳「こっち来ないで!」
拓也「さあ、邪魔者は居なくなったよ。一緒に行こう優佳ちゃん……!」
拓也が私に触ろうとした。
が、いつまで経っても拓也が私に触れる事は無かった。
恐る恐る目を開けると瞬が拓也の上に馬乗りで殴っていた。
翔子「優佳おでこが…!!」
翔子は息を切らしながら救急車に連絡していた。
連絡している最中も瞬はずっと殴り続けている。
拓也はピクリとも動いていなかった。
優佳「もう気絶してるよ…!
死んじゃうって、瞬!!」
私は必死に殴り続ける瞬を羽交い締めにするが瞬は殴ることを辞めなかった。
その目からは殺意を感じる。
瞬の右拳は殴り続けたせいでボロボロになっている。
拓也の血と混じって赤黒い。
(手が…)
救急車と警察に通報した翔子が拓也を引き剥がしてくれたお陰で死なずに済んだ。
危うく瞬を罪人にするところだった。
翔子「うん、大丈夫。まだ息してる」
優佳「こっちも落ち着いてきたみたい……あっ!犬は?!」
犬は翔子の腕の中にいた。
すっかり良くなったようだ。
(思い出した…翔子の家の飼い犬だ)
翔子「元警察犬の腕は今も衰えてなかったね。よくやったぞ!」
遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
パトカーに続き救急車が来た。
パトカーから降りた警察官はまさかの 翔子パパだった。
翔子「パパ?!」
翔子父「翔子?!大丈夫か!」
顔面血まみれの私と右拳が血みどろの瞬を見た翔子パパは驚いていた。
さっきまで倒れていた拓也が起き上がろうとしたところを警察が抑えこんだ。
警察「指名手配犯だな。過失運転致死傷の容疑で逮捕する」
拘束された拓也が必死に抵抗する。
拓也「僕は悪くない!!あいつらが僕の前に飛び出して来たのが悪い!だから僕は悪くない!助けて優佳ちゃん! 」
(轢かれた本人の目の前で嘘つくなんて…)
翔子父「親も親なら子も子だな」
さらに拓也は調子に乗って次から次へと嘘をつき、瞬の家族を罵倒する。
それはもう聞いてられないくらいに。
翔子「いい加減に…」
救急隊員「ちょっと君!」
拓也「ははっ……あ?血?
ああ、痛い…痛い!痛いよ!あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”い”だい”~~」
拓也は救急車に連れ込まれて行った。
瞬は無抵抗で手錠を掛けられていた。
瞬「僕の復讐の為に付き合わせてしまって悪かったね。君には感謝してるよ。ありがとう」
優佳「こちらこそ。貴方が居なかったらおばさんの証拠とれなかったと思う」
瞬「また会おう」
瞬はパトカーに乗せられ行ってしまった。
私も救急車に乗せられた。
気疲れからか眠たくなって目を閉じた。
あれから数ヶ月経って変わらない毎日を過ごしている。
唯一変わった事といえば瞬が転校したことくらいだろう。
生徒1「『家の事情で引っ越し』って私まだ1回しか喋れてないのにー」
生徒2「私告白しようとしたのに…」
生徒3「でも、急だったよねー、本人いないし」
生徒1、2「「確かにー」」
拓也が逮捕された事もニュースに報道され、世間に広まった。
ネットの書き込みには拓也への沢山の誹謗中傷が書かれていた。
TV「過失運転致死傷罪で指名手配されていた森田拓也(45)容疑者が昨日、搬送先の病院で亡くなったことがわかりました。尚、森田容疑者は搬送途中、好意を持った相手に振られその後酒に酔った勢いで轢いてしまったと供述したことも明らかになりました」
先生「いやー、それにしても急だったな〜。その傷も大分治ってきたんじゃないか」
優佳「先生まだ煙草吸ってたんですか。臭いですよ」
先生「俺心配してあげたんだけど」
学校側は自身の生徒も関わっていると他の生徒にバレないように『家の事情で転校した』ことにさせた。
翔子パパの協力でニュースに瞬の名前が載る事はなかった。
優佳「以前の私なら彼と同じ選択をしてたと思います。
けど周りが気付かせてくれたお陰で一歩踏み間違えずに済みました。ただ、心残りがあるとすれば彼を止められなかった事ですかね」
先生「あいつは自分の意思でやったんだ。西宮が責任を感じる事はない」
優佳「先生、私毎日病院に通ってカウンセリングを受けてるんです。順調に治ってきてるんですよ。凄いでしょ!
だから先生も禁煙して下さい」
先生「先生煙草無いと死んじゃう。
ニコチン中毒者に『禁煙』という単語はタブーです。
煙草は先生の命より大事です」
優佳「先生の命軽(笑)」
先生、私は嘘をついてました。心残りはおばさんをこの手で殺せなかったことです。
ー20年後ー
TV「こちら現場から生中継で繋がっております。
只今、森田良子さんと思われる遺体が発見されました。
消火中ですが鎮火する気配がありません。
火事の原因はストーブの火が新聞紙に燃え移ったと推測されております」
ー某掲示板ー
○○「森田良子って出所したばかりの人だよね」
○○「放火犯だよ。結局は自分に返ってくるってことだね」
○○「人を呪わば穴二つってやつ?なにそれ怖!」
○○「でもそんな危ない奴死んでくれてありがたいわー」
投稿文
yuka 「復讐完了_」
カチッ
夫「ただいまー」
優佳「おかえり」
夫「いや〜禁煙して正解だったわ」
優佳「ふふ、昔から言ってたでしょ『先生』」
夫「もう夫婦なんだからその呼び方辞めてくれよ〜(笑)」
ああ、幸せ。