テラーノベル
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階段から落ちた後、その衝撃からすっぽり抜け落ちていた記憶がある。
警察の人が来て事情聴取を受けている内に、少しずつ思い出した。
それは、落ちた時の状況。
下の踊り場に居た蓮と話してて、追いかけようと思ったところで……
強く、肩の辺りを押された。
その直前に、すぐ真後ろで小さく声が聞こえたんだ。
死 ね
え、
と、振り返ったところに立っていた、黒いウインドブレーカーを着た……多分、男。
目元までフードを被っていたから、定かではないけれど。
男の声だったから、間違いないはず。
でも、誰だ?
こんなヤツ知らない。
そう思ったのは一瞬。
アイツもすぐ、同じところに送ってやるよ
明確な殺意を浴びながら、身体が傾いていって───
気づけば踊り場まで転がり落ちていた。
全身を強かに打ち付けて、息が詰まる。
頭も打ってしまったから、脳みそをものすごく強くシェイクされてるみたいに感じた。
ああ、
こんなことで死んじゃうのかな
まだ、やりたいこといっぱいあんのに
ツアーももうじき始まるし、アルバムだって出る
新曲の振り入れ、めちゃくちゃ楽しみにしてた
テレビや雑誌のお仕事もいっぱい詰まってるし
映画の公開だって控えてる
声のお仕事もまだまだやりたいし
オーディションの予定だってあるし
旅行も行きたい
美味しいもの食べて、リフレッシュしに行くんだ
親友を誘おうかな、たまにはメンバーとも行きたいな
ってか、アイツってなに?
まさか蓮のことか?
許さない、そんなの
蓮にだけは、手ぇ出すなよ
全身を強い痛みに襲われながら、そんなことを考えていた時、
『佐久間くん!!!』
聞こえてきた、蓮の声。
いつもは優しくて穏やかな声なのに
驚きと焦りで、少し上ずって聞こえた。
半分朦朧としてたから、何を喋ったかは思い出せない。
でも膝枕してくれて、少しだけ呼吸が楽になったのは覚えてる。
蓮に膝枕してもらうのなんて、初めてじゃないんだけどさ。
でも嬉しくて、痛みで呻いてるのにドキドキした。
好きな人に膝枕してもらって、
好きな人の温もりを感じながら死ねるなら、
悪いことでもないのかなぁ、なんて……ぼんやり思った。
…………ま、結果は運のいいことに、ただの脳震盪。
打撲の方も、全治約1ヶ月。
しばらく仕事は休まなきゃならなくなったけど、生きていられて良かったってことで。
しかも
しかも、だよ?
なんかいきなり転がり込んできた、蓮と2人で暮らすって話。
1回どん底まで落とされて
空まで引っ張り上げられた感じだ。
でもちょっとだけ、問題があんだよね。
それはね……
蓮には絶対、俺の気持ちを知られちゃいけないってこと。
だってさぁ……俺、蓮の先輩だし。
でもって風呂友で、同じグループのメンバーで。
しかも、男だもん。
そんなヤツに『好き』って言われたらさ、蓮も反応に困るだろ?
蓮は優しいから強く拒絶するのも難しいだろうし、ちゃんと拒絶したとしてギクシャクするだろうし。
そんなんなるくらいなら、一生言わなくていいよ。
俺が勝手に、蓮を好きでいるだけ。
流石にさ、『好きでいるのもやめて』なんて言われたら……ヘコむもん。
だから、絶対知られたくないんだけど……
一緒に暮らしてる内に、蓮への『好き』が溢れ出しちゃったらどうしよう。
自分で言うのもアレだけど、俺、嘘下手くそだし。
メンバーにもなんか、気持ちバレてるみたいだし。
……でもなんでか、蓮にはバレてないんだよなぁ……もしかしなくても蓮ってば、相当鈍いみたい。
だからね、喜び半分
不安も半分
ドキドキソワソワしながら、マネの運転でとりあえず蓮の家にやって来た。
これから何日か分の着替えなんかの荷物を詰めて、モコちゃんを連れて、蓮の車で俺ん家まで行く。
ツナとシャチは大丈夫かなぁ……宮田くんには割とすぐ懐いてたけど、蓮は警戒されないかな?
身体大きいから、ちょっと怖がるかも。
あとは、モコちゃんとの相性がいいかどうか。
少しの間でも、仲良しになってくれれば嬉しいじゃんね。
「どうぞ、ちょっと散らかってるけど」
「お、おじゃましまーす……」
蓮の家に来たのは、初めてじゃない。
何度か来たことはあるけど、そのどれもが他のメンバーと一緒だった。
だから……なんかめちゃくちゃドキドキする。
緊張しつつ、蓮に背中を押されて家の中へ。
玄関へ足を踏み入れると、人感センサーが反応してパッと灯りがついた。
と、同時に、部屋の奥から可愛い鳴き声が聞こえてくる。
「モコちゃ〜ん!」
声を掛けると、奥の方からフワッフワな毛並みの蓮の愛犬が登場。
ドッグゲートの前でクルクル回って、小首を傾げながら『アンッ♡』と鳴く。
か、
かわ、
「かわいい〜〜!!!!!」
「フハッ、佐久間くん、興奮し過ぎ」
「や、だってお前、かわいい!モコちゃん可愛い!天使〜〜!!」
「はいはい。じゃあ、うちの天使を構ってあげてよ」
そう言いながら、蓮がスリッパを用意してくれる。
それを履いてモコちゃんに駆け寄ろうとすると、むんずと腕を掴まれた。
「こら、走んないの。絶対安静。……忘れたの?」
「……そうでした」
クスクス笑って、蓮は俺の腕を掴んだまま歩き出す。
ゲートを開けると、その前で待っていたモコちゃんが転がるように足下に駆けてきた。
「アンアンッ」
「モコ、ごめんな?急に留守にしちゃって」
「あっ!そうだよな……モコちゃんごめん!パパを独り占めしちゃったよね〜?」
蓮に抱き上げられたモコちゃんの頭をイイコイイコする。
気持ち良さそうに尻尾を揺らしつつ、手のひらをぺろぺろしてくれた。
や、やばい
マジかわいい……!
「どうしよう、蓮」
「うん?」
「可愛すぎて俺、浄化されそう……マジで昇天する……」
真顔で呟くと、蓮が大爆笑する。
あまりにも笑い過ぎるもんだから、モコちゃんがびっくりしてキャンキャンと鳴いた。
ってか、そんな爆笑するようなことぉ!?
「ふふ、フハッ、ひ、ひひっ……」
「ちょっとぉ!そんな笑うことないじゃんか!」
「い、いや、だって……っぶ、ふ、ふふふっ……」
「れーんー!」
「んんっ……く、くくっ……だ、だってさ……そんな真顔で、言うから……っ、クックッ……か、かわいくって……」
「う」
その『かわいい』は、喜んでいいのか、それともバカにされてんのか。
むうっと口をへの字にすると、笑い過ぎで涙を浮かべた蓮にモコちゃんを託された。
「はい、それじゃあモコと遊んであげてて。俺は荷物詰めてくるから」
「う、うん」
「くれぐれも浄化されて昇天しないでね?……佐久間くんが召されたら困るよ?」
「んもー……!ニヤニヤしながら言うな!」
げしっと背中を殴ってやると、蓮はまた爆笑しながらリビングの奥にある部屋へ入っていく。
確か、あっちが寝室だったはず。
俺はモコちゃんを抱っこしたまま、脱ぎ散らかした服が詰まれたソファに腰を下ろした。
足下にも服の山が出来てるし、ちょっと離れたとこには脱ぎっぱなしの靴下が転がっていた。
ローテーブルの上には、コーヒーが飲みさしになってるマグカップと半分ほど水が残っているグラス。
いやー……ね、散らかってるとは言ってたけど。
「モコちゃんのパパ、だらしないねぇ?」
「アンッ」
「あはは。そのお返事は同意ってことぉ?」
荒れてる、まではいかないけどさ。
とりあえず、脱いだものは洗濯機に入れようぜ。
俺もそれほど片付けが得意なわけじゃないけど、さすがにここまでじゃない。
洗い物は溜まりがちになるものの、シンクにはちゃんと持っていくし。
洗濯物は脱いですぐ洗濯機に入れる。
回すのはまあ、週に2、3回くらいのもんだけどね。
「しゃーねーなぁ……」
このままにしていくと、またしばらく放置になっちゃうんだもんな。
お互いの身を護るために同居するんだけど、そうなった原因は俺にある。
それなら、せめてもの罪滅ぼしってゆーか、恩返しってゆーか……片付けくらいはしてやろう。
モコちゃんを膝から降ろすと、マグカップとグラスを手に立ち上がる。
キッチンのシンクには、更に洗ってないグラスが3つとご飯を食べた後の食器が残されていた。
ってか、目黒さん……あなたひとり暮らしなのにいくつグラス使うんです……?
ちょっぴり呆れつつ、全部纏めて洗い始める。
そんな俺の足下にモコちゃんがちょこちょこじゃれついてきて、それがまた可愛くてたまんない。
「同居中の掃除洗濯は俺の役目だな〜」
その代わり、料理は苦手だから蓮に作ってもらおう。
何がいいかな……難しいのもいけるのかな?
「ハンバーグ、生姜焼き、カレー、唐揚げ……」
「……なに?佐久間くんが食べたいもの?」
「ふぉっ!?……び、びっくりしたぁ!」
完全に気が緩んでたから、蓮がキッチンまで来ていたことに気づかなかった。
「っていうか……ごめん!洗い物してもらっちゃって……!!」
「んーん、いーよ!洗い物嫌いじゃないし!あとさっきのは、蓮に作ってもらいたいもの!」
「俺に?ああ……そっか、佐久間くん料理はあんまり得意じゃないんだもんね」
「うん。凝ったものは絶対出来ない!」
「そんな自信満々に言わなくても」
クスクス笑いながら、蓮が冷蔵庫を開ける。
最後のグラスの泡を流して水切りカゴに伏せると、蓮の横から冷蔵庫を覗き込んだ。
「あれ、こっちは綺麗にしてんじゃん。ってか、意外と色々入ってんだな」
「自炊は嫌いじゃないからね。あと、冷蔵庫の中が荒れると賞味期限が近いものとかが分かんなくなっちゃうから」
「なるほど。部屋は荒れてても腹は壊したくない、と」
「うっ……い、いつもこんな散らかってるわけじゃないから!今はたまたま、仕事が忙しすぎて……」
「いつも忙しいんだから、いつも散らかってるんじゃん?」
「…………」
あ、黙った。
いじめすぎちゃったかなぁ?
ぴとっと蓮の腕にくっ付いて、肩に頭を預けてみる。
甘えるみたいに。
モコちゃんも俺の足下に、同じように寄り添うのが可愛い。
「同居してる間は、蓮が散らかしても俺が片付けてやるからさ」
「……つまり、ひとりに戻るとまた荒れ果てると……」
「にゃはは。んじゃ、戻っても定期的に片付けに来てやろっか?」
「アハ。……気持ちだけ受け取っておくよ。佐久間くんだって忙しいんだから」
冗談に取ったのか、蓮が笑ってそう言った。
……割と本気だったんだけどな。
好きな人のプライベート空間に踏み込めるって、さ。
まあ……それは言えねーけど!
「蓮〜、何探してんの?」
「いや、肉とか卵とか、置いておけないものを佐久間くん家に持って行かなきゃと思って。……あ、豚肉発見。玉ねぎもあるし……佐久間くん、生姜焼きなら出来るよ」
「え、マジ?やったー!生姜焼き〜!」
モコちゃんを抱っこして、クルクル回る。
と、蓮が俺の腰に触れてグッと抱き寄せた。
「ひゃ!」
「佐久間くん。ほんとに安静にしてて」
「……スミマセン」
「ん、よろしい。……とりあえず食材全部持って行って、佐久間くんとこで作ろう」
「う、うん……じゃあ俺、洗濯物かき集めてくんね。うちで洗濯機回せばいいし!」
「……よろしくお願いします」
「はぁーい!」
モコちゃんを抱っこしたまま、リビングへ戻る。
バクバクと、心臓がうるさい。
(蓮にハグされんのも、初めてじゃないのに)
あんなふうに抱き寄せられて、至近距離で見つめられて。
こんなことが、同居してる間に何度あるのか。
……俺の心臓、もつのかなぁ……?
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両片想いが大好物です。
いくらでもおかわりしたい^^
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読みながらデレデレニタニタしてました(*ノェノ)キャー 犯人の残した言葉気になるけど、 まずは🖤は🩷のお家に移動して生姜焼きを作って🩷の胃袋掴みましょう(=^・^=) 溺愛しまくれば🩷は沼に落ちてくれますv(´∀`*v)ピース
お疲れ様!第5話読んだよ〜 蓮と二人暮らし、しかも急展開すぎて心臓もたないわ…!階段から落とされた記憶も戻ってきて、黒いウインドブレーカーの男が「♡♡♡」って…怖すぎるし、アイツ誰だよ。 でも蓮の膝枕シーン、尊すぎて俺も昇天しそうになった(笑)。モコちゃんかわいすぎるし、佐久間くんの「蓮に気持ちバレちゃいけない」って葛藤が切なくて、もう見守りたい気持ちでいっぱい。鈍感な蓮にバレずに同居できるのか…次回マジで待ってる🔥