TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


守満《もりみつ》に促された晴康《はるやす》は、フムフムと、意味深に頷きながら、房《へや》の入り口に尻もちをついている、上野の側に行った。


「晴康殿!手をかしてくださいっ!!」


上野は、袴にじゃれついてくる、タマを追い払う事に必死だった。


「あれ、上野様は、本当に犬が苦手なようですなぁ」


「は、はやく、タマをっ!退けてくださいっ!」


一方、兄の常春《つねはる》は、タマが、かじった書物を胸に抱き、この世の終わりかのような悲痛な叫びを挙げながら、床に突っ伏している。


「こちらは、こちらで、また、大変だこと」


晴康は、起こっている状況を傍観している。


「あらあら、タマは、悪い子ね」


守恵子《もりえこ》が、眉をしかめて、飼い犬を叱るが、タマには、当然、通じない。


「うーん、護身用なのか、邪魔なだけなのか、どっちなんでしょうか?この犬は」


晴康のつぶやきに、守満が、含み笑う。仮にも、妹、守恵子が可愛がっている犬。そう邪険にもできない。


「では、仕方ない」


晴康は、言うと、上野にじゃれついている、タマを抱き上げ、そのまま、宙に放り投げた。


「うそっーーーー!晴康殿!」


「ちょっと待った!晴康よっ!」


「きゃあ!タマ!」


「……しかし、なんで、犬なのに、タマなんですかね?」


「おー!秋時《あきとき》様、鋭いですなっ!」


晴康に、褒められて、秋時は、それほどでもと、にやけた。


そんな、皆が驚くさなか、宙を舞うタマは、ゆるりと胴をひねり、床にストンと着地する。


「さあ、しっかり、ご主人様をお守りなさい」


晴康の言葉が、分かったのか、タマは、のそのそと、几帳の後ろに座る守恵子の隣に行くと、そのまま、静かにうずくまる。


「えええーーーー!」


守満、上野、秋時、そして、突っ伏していた常春も顔を上げ、叫んだ。


「まあ!!!タマ、なの!」


守恵子の、脇にうずくまるのは、子犬ではなく、虎だった。


「晴康!早く、早く、どけろ!」


焦る守満に、晴康は、


「これくらいでないと、ふらち者には、勝てないでしょ?」


と、あっけらかんと言い放つ。


「確かに、そうね。これだけ、大きければ、皆、逃げ出すわ、ねえ、兄上?」


「守恵子!お前、分かっているのかっ!それは、それは、虎だぞっ!」


「はい。でも、タマですもの」


守恵子は、虎の頭を撫でながら、微笑んだ。

羽林家(うりんけ)の姫君~謎解き時々恋の話~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

29

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚