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時間が経ち、会議室の電気が愛華の手によってつけられた。
キンコンカンコン
また、何かの合図のように、チャイムの音が鳴る。
チャイム音によって、半強制的に生存者全員が目を覚ました。
「ん……」
イギリスはまだ耳元で囁く睡魔を追い払い、目頭を押さえる。
隣の席に座るフランスは、寝ぼけ眼をこすっている。
日本とドイツに至っては、あくびの移し合いをしていた。
「…ッ…」
声にも成らず、そんな空気だけが動くような音を出したのは、湾華だった。
「は……?」
次に、独華が気の抜けたような、息を吐いたかのような音を口から漏らした。
そんな二人の反応に、周囲は湾華と独華の視線の先に目を移す。
そこには、確かに席に座っていたはずの王華が居ないのだ。
独華と共に伊華の話をしていた王華が。
独華は、1つ、息を呑んだ。
そして、自身の席とその隣の席、王華の席の間に見える床へ、視線を動かした。
独華は声を出さなかった。いや、出せなかったのだ。
床に広がるドス黒い赤の池。
王華の首元には赤のポピーと黒百合、そしてデイジーが咲いていた。
独華は自身の恋人であり、王華の妹である伊華が花言葉が好きだったために、一時期色々と調べていたのだ。
故に知っている。
赤のポピーは、感謝、慰め。そして、喜び。
この花は人狼の心情でも表しているのだろうか。
黒百合は、復讐と呪い。
王華は、人狼に怒り奮闘なのだろう。
そして、デイジーは、王華の国の国花であり、王華の愛した花だ。
「Oh my god !」
「Vous plaisantez !」
「Das ist doch nicht dein Ernst, oder?」
皆口々に言葉を漏らす。
「クソッ」
ドンッ
そんな鈍い音を会議室の長机がたてた。
音を慣らしたのは、独華だった。
独華は昔、誓ったのだ。
大切な人達を守り通すと、大切な人に。
独華にとって、王華の死はその誓いを破ったのと同義なのだ。
「独……」
ドイツは自身のドールである独華を見て、やっと、少し冷静さを取り戻した。
「静粛に。」
ざわめきの広がる会議室に、愛華の冷淡な声が響いた。
「ご確認頂いた通り、始めの夜の犠牲者は、王華様です。死体は邪魔でしょうから、消させていただきます。」
パチンッ
そんな愛華の冷ややかな声と、指を鳴らす音。それと同時に、王華の見るも無惨な姿は消えた。
赤い池も、花も、何もかも。ただ、王華の座っていた席だけが残り、他は何も無い。
「これで、議論に集中できるとでも言いたいのですか?愛華さん、矢張り貴方、異常ですよ?」
イギリスの普段の皮肉や嫌味を言う、馬鹿にするような笑みはそこには、無い。ただ、恐怖と、絶望が瞳の奥で揺れていた。
「私は、GM(ゲームマスター)です。」
そんなイギリスの言葉に、愛華はそれ以上は応えなかった。
「パンが届きました。」
そして、いつの間にか愛華は手にバケットを持ち、その中からは嫌味なほどに良い香りのするパンが入っていた。
愛華はそれをただそっと、長机の中央に置いた。
キンコンカンコン
「皆様、昼の議論の時間となりました。制限時間は、次のチャイムが鳴るまでです。では、ごゆるりと。」
愛華はただ無表情に、平坦な声で文字を並べ、恭しく辞儀をした。
「Haha.どうやったらまともに議論なんて出来んだよ」
独華はただ自嘲的な笑みを浮かべて、右手で目元を覆った。
「………。議論、するしか無いんだよ。どっちにしろ、この会議室から出られないんだもん」
悲哀を込めた、真剣で、虚無感のある鈴華の桃色の瞳が独華を真正面から見据えた。
「そうだね。……、僕は、中立国のドールだ。だから、早々に家に帰って、ゆっくりしたいんだ」
炎端はいつもと変わらぬ笑顔を無理矢理貼り付けてそう語った。
「なら、先ず、現状を整理してみてはいかがでしょうか…?」
控えめに、ドイツの隣に、一番端の席に座っていた日本が手を挙た。
「That’s right, Japan!取り敢えず今は、感情的になるよりも誰が人狼の可能性が高いか、誰がどの役職かを知る必要がある」
アメリカの陽気さは変わらぬのかと思えば、サングラスの下に隠れる、彼のスカイブルーの瞳は静かに恐怖に揺れていた。
「現状、パンは届いてるし、【パン屋】は生きてるって考えてもいいんじゃないかな?」
アメリカの右隣に座る、カナダが静かに、穏やかに声を上げた。
「日本から見た王華はどんなやつだったアルカ?」
いくつか席を挟んだ隣の席にいる中国が日本に冷静に問いかける。
「王華さんは、きっとこの中で誰よりも理性的に動くドールです。それに、誰よりも洞察力に優れてる方でした。失うには、あまりにも惜しい……」
日本は奥歯を噛み締めて、伏し目がちに、震える声で静かにそう語る。
「今は故人の性格なんてどうでもいいでしょ?僕は姉貴が生きてるから満足だし〜」
真正面に座っている中華に本の少し、誰かの死を目の当たりにして動揺したままの湾華が、ぎこちない笑顔を向けた。
湾華の一切空気を読まない発言に誰もが不審に思った。
「お前は、誰かが死んでも、中華が生きてればそれでいいのか…?」
珍しく、驚きを露わにしているロシアが湾華に向けて動揺を隠せずにいる。
「そりゃそうだよ。僕にとって大事なのはね、姉貴と僕の主である台湾様と、親友のみ。他は、僕らに危害を加えない限りどうでもいい」
異常なまでにさっぱりとした回答が湾華の口から返ってきた。と言う事実に、ロシアは唖然とした。
「変わんないね」
ただ、鈴華だけが一言呟いた。
「役職持ちの人は、名乗れるなら名乗った方がいいんじゃない?因みにjuは、パン屋だよ」
何か覚悟を決めた表情をしたかと思えば、フランスが自身の役職を公開した。
「……うちは、狩人か猫又だよ」
鈴華は静かに息を呑み、フランスの宣言の勢いに乗って、自身の役職を告白する。
仮に、鈴華が狩人だと人狼が仮定して、襲撃すれば、猫又だった場合に大損を受ける。
故に、鈴華は考え尽くしてそう告白したのだろう。
キンコンカンコン
議論の最中だと言うのに、無情にも、チャイムの音が会議室に響き渡る。
「皆様、夕方の投票のお時間です。役職を確認した端末にて、ご投票ください。」
先ほどまでなに一言口にしなかった愛華がよく通る、無機質な声で全員に語りかける。
「ちょっと待つアル!これじゃ全然結論なんて出せねぇアルヨ!」
中華が勢い良く立ち上がり、声を荒げて愛華に対抗する。
しかし、愛華はそんな中華の言い分を物ともせず、淡々と言葉を続ける。
「制限時間は60秒です。投票数の最も多い人物が、処刑されます。なお、無投票の場合、生存者の中からランダムに一人が処刑されます。」
愛華と言う名のGMは、顔色1つ変えずに投票の説明をする。
皆、一瞬息をする事さえ忘れてしまった。
無理も無い。誰も吊るしたくないからと言って、無投票であれば自分も死ぬ可能性が出てきたのだ。
そっと、手元のタブレットに視線を移せば、全員の顔写真とその下に名前が記してある。
唯一、下段の一番右にある王華の写真に赤でバツ印が描かれていた。
皆、震える手で【投票】と書かれてある場所を押す。
「票が集まりました。本日吊るす事になったのは___。」
ーー続クーー