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体内で暴走する、あまりにも膨大で禍々しい魔力が不可視の鎧となって私の全身を覆い尽くしていた。
それはもはや魔法という概念を超え
物理法則そのものを足元から捻じ曲げるほどの圧倒的な「力」の奔流だった。
(これが……魔女と呼ばれる存在の力……?)
理性のかけらが、脳の片隅で一瞬、冷めた疑問を投げかける。
だが、すぐに心臓の奥から湧き上がる
どす黒く純然たる破壊衝動がそれを無慈悲に塗り潰した。
「グッ…お前は、ここで確実に仕留める! 出来損ないの母親と同じように!!」
父は血走った目を見開き、掌から漆黒の魔弾を狂ったように連射してきた。
その一発一発が、先程までのものとは比較にならない威力を秘め
掠めるだけで周囲の廃墟を塵へと変えていく。
しかし、今の私にとって、それは頬を撫でる微風も同然だった。
私は空間を歪めるほどの超速で疾駆した。
迫り来る魔弾の嵐を、紙一重の演舞のように縫い、掻い潜りながら、一気に父との距離を詰める。
「な……!? この速度は……ッ!?」
初めて父の表情に、隠しきれない動揺と恐怖が走る。その隙を、私の本能は見逃さなかった。
私は渾身の、いや、存在そのものを注ぎ込んだ魔力を右拳に集束させ、迷いなく振り抜いた。
掌底ではない。
相手を「殺す」ためだけに特化した、純粋な暴力を象徴するような拳。
それが父の腹部へと吸い込まれるように突き刺さった。
ゴッ!!
肉がひしゃげ、骨が粉々に砕ける鈍い衝撃。
父の巨体は、木の葉のように軽々と後方へ吹き飛び、積み重なった瓦礫の山へと轟音を立てて激突した。
舞い上がる粉塵、降り注ぐ瓦礫の破片。
その中心で、父は口から大量の鮮血を吐き出しながらもなお、こちらを呪い殺さんとする目つきで立ち上がろうともがいている。
その、かつて畏怖の対象であった男を冷酷に見下ろしながら、私はリボルバーを構え直した。
「……これで、今度こそ終わりよ。地獄でお母さんに謝ってきなさい」
狙いは、父の歪んだ頭部。
正確に眉間を照準に収め、私はゆっくりと引き金を絞ろうとした。
その瞬間。
左頬に、焼けるような鋭い違和感を覚えた。
ふと、近くに落ちていた、鏡のように磨かれた金属片に自分の顔が映り込む。
それを見た瞬間、私は全身の血が凍るような戦慄に襲われた。
さっきまで透き通るように白かった私の肌が、左頬の端から、まるで黒いインクを零したように変色し始めていた。
「……ッ!?」
息を呑む暇もなかった。
今度は左手の指先から、あの悍ましい黒が染み渡っていく。
熱い。肌の表面ではない。