コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
彼女と出会ったその夜
机とむかって 絵を描いていると
彼女から一件のメ-ルが届いた
通知音で気付いた僕はスマホのロックを解除し
メ-ルに目を通した
『今日は本当にありがとう御座いました』
本当にたったそれだけだった
だけど ほんの少し心の奥が暖かく感じた
『ありがとう』なんて言われたの…
いつぶりだっけ
変に思考を回していると
下の階から母さんが『ご飯出来たわよ-!』
と大きな声で僕を呼んでいた
「…今行くよ 母さん」
そう小さく返事をしてから
僕は、彼女に
『どういたしまして』
と返答し スマホを机の上に置いて
部屋から出て夕食を食べに下の階へと降りた
味だけは明確な食事
別にお腹が膨れるだけでなんの変哲もない
ただ他にあるのは色味だけ
何時も通りの食卓に思わず溜息が出そうになる
溜息をぐっと呑み込んで 箸を持った
か細い声で呟く「いただきます」
なんだか今日は妙に疲れた
少し下を向いてご飯を口に運んでいると
母さんが僕の顔を覗いて
ふと不安そうに首を傾げた
「暗和…今日 何時もより顔色が悪いわね」
大丈夫?と心底心配そうな表情になった
僕は、大丈夫だよと返すが
母の過保護は止まらない
母は、箸をおき
瞳を少し揺らした
「今日…なにかあったの?」
どんどんとエスカレートしていく
同情の色
黒々しくて仕方がない
「もしなにかあったなら お母さんに言ってね」
辞めて
「暗和の為にお母さん なんでもするから」
もう……それ以上言わないで
思わず
口から零れそうになった言葉をぐっと飲み込む
そして 僕は、顔をあげ ふわっと笑って見せた
「母さん… 気の所為だよ
別に今日変わった事なんておこらなかったし」
そういうと母さんは漸く落ち着きを取り戻し
なら良かったわと静かに笑った
でも…これで分かった
僕は…何色にもなれない事
そして誰かの重りでしかない事を_
「ねぇ…彩香大丈夫?」
「うん…多分 大丈夫」
包帯を巻きながら曖昧に答える
小さい頃からしょっちゅうしている事だから
今ではすっかり慣れてしまった
「……それにしても 階段から落ちたって……本当に大丈夫なの?」
お母さんが 首を傾げつつ
心配そうな声質で聞いてくる
元々 私はこういう大怪我をしやすく
打撲痕、出血は 既に経験済みだ
「大丈夫だよ
元々私は怪我しやすい体質なんだし」
だけれど
私の身体は古傷だらけで見ていて良い物とは
とても言い難い
「…」
今日の人 何だか
この世界になんの希望も持ってないような
よう まさに『透明』な水のよう
「透明……か 」
私が言える立場じゃないのにな
自分でも何故そう思えるのか 不思議だった
「色なんて消えちゃえばいいのに…」
すっかり色褪せた古傷を眺めながら
静かに呟いた
人と言うものは 必ず誰しも色を持つらしい
色を持たない僕は ただの失敗作なのだろうか
それともただの空白だらけの人間なのか
「…もう どうでもいいや」
窓から見える夜の光景が
今日の僕には少し 馬鹿馬鹿しく思えた