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榎本くもり
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空白の継承者
注意
本作品は『希望の曖昧』の続編です。
本作からでもお楽しみいただけますが、前作『希望の曖昧』を読んでいただくと、登場人物や世界観、各キャラクターの関係性をより深くお楽しみいただけます。
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第一話「新たな時代」
静かな朝だった。
防衛軍本部。
広大な訓練場では、多くの隊員たちが汗を流していた。
その中でも、一際激しい戦いが繰り広げられている。
「はぁっ!」
神城怜。
防衛軍期待の新人。
能力――『空白』。
自らの存在を相手の意識から薄れさせ、一瞬の隙を作り出す特殊能力。
その能力を駆使し、目の前の相手へ一気に距離を詰める。
しかし――
「そこ。」
一瞬で読まれた。
ガキンッ!
剣同士がぶつかる。
神城怜は大きく後方へ弾き飛ばされた。
「また負けか……。」
息を切らす怜の前に立つのは、同年代の青年。
ユーマだった。
「能力は確かに強い。」
「でも、お前は能力に頼りすぎだ。」
怜は悔しそうに拳を握る。
「分かってるよ……。」
「でも届かない。」
ユーマは剣を肩に担ぎながら笑う。
「焦るな。」
「俺もまだ古流斬さんには全然届いてない。」
その言葉に怜は苦笑した。
「比べる相手がおかしいよ……。」
訓練場の上から、その様子を数人が見守っていた。
ケイト。
ネイト。
ジョト。
バッド。
防衛軍の隊長たちである。
ケイトは腕を組み、小さく呟いた。
「神城怜……。」
「才能は十分ある。」
「だが、伸び悩んでいるな。」
ネイトも頷く。
「ユーマとの差も少しずつ開いている。」
ケイトは静かに目を閉じた。
「……任せるしかないか。」
そう呟くケイトの表情には、一つの決意が浮かんでいた。
――その頃。
地獄。
古流斬は珍しく休暇を取っていた。
「今日は仕事禁止!」
はるかが腕を組みながら言う。
古流斬は苦笑する。
「分かった。」
「今日はゆっくりする。」
その穏やかな時間を破るように、一人の男が歩いてきた。
閻魔だった。
「古流斬。」
「少し話がある。」
古流斬は立ち上がる。
「何かあったか?」
閻魔は少しだけ真剣な表情を見せた。
「最近……妙な気配を感じる。」
「何も起きなければ良いがの。」
古流斬は静かに頷く。
「警戒だけはしておく。」
一方、その頃。
誰も知らない場所。
巨大な円卓。
六つの席。
その中心には、一人の人物が静かに座っていた。
「準備は整った。」
低い声が響く。
別の人物が答える。
「始めよう。」
「世界を、一つにするために。」
誰も、その組織の名を知らない。
そして、新たな物語が静かに動き始める。
――第一話 完
コメント
1件
うわ、続編なんですね!前作読んでないので少しドキドキしながら読みましたが、大丈夫でした。「能力に頼りすぎだ」と指摘される怜くんの悔しさが伝わってきて、伸びしろを感じさせます。ユーマとの距離感もいいですね。地獄で休暇中のはるかさんと古流斬さんのやり取りがほっこりしたので、最後の謎の組織の登場でゾクッとしました。静かに世界が広がっていく予感、楽しみです!