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n217(エヌ・ニイナ)
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羽海汐遠
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死戻編♯3【清算】
1963年(昭和38年)
5月26日
朝の光に照らされ、学校に向かった。
「転校生…」
私は、そう呟き、すぐに学校へ走りだした。
なぜ走りだしたのか、私にも分からない。
ただ、自分の罪が軽くなると、甘い考えだったのかもしれない。
教室のドアをガラガラと開ける。
すると、転校生はもう、紹介されていたらしい。
そいつは、私を認識した瞬間、とてつもない、殺気がこぼれ落ちた。
今にも、殺す!と宣言された感覚だ。
「…っ…」
殺される…でも、これでいいのかもしれない…私は、それくらいじゃ済まされない事をしたのだ。
素通りする。
いつも通りの感覚で横を通り過ぎる。
でも、男が喋りかけてきた。
「ねぇ…久しぶりだね…」
さっと、男が殺気を消していた。
「だ…誰でしょう?」
その瞬間、男の目が大きく見開かれた。
メキメキ顔が変わり。
般若のような顔になっていた。
私の心は、震えた。
もう、殺される…そう思わせてしまうほどに…恐ろしい。
「お前が!!!俺を!!!」
私の、襟を掴んで、男が私の頬を殴りつけた。
「うっ…あがっ!」
鼻血が出る…
ドバドバと流れ、地面が汚れる。
さっき、鼻が折れた気がする。
悲鳴を上げたくてもあげられない。
ボキッと、明らかに折れた音もした。
「俺の人生を!!狂わせたんだろ!!」
蹴られる。
腹を蹴られ、吐きそうになる。
涙がこぼれる。
私も…この人を…あ…思い出した…アルトだ。
アルト…ごめん…でも、私もこれを受けなきゃダメだよね…。
私は、逃げちゃダメだ。
しっかり、受けて…償わないと…
「あ…アル…アルト…」
吐き気がしながら、アルトの足にしがみつく。
アルトは、足を振り上げるのをやめた。
「なに?」
その顔は、冷たい。
自分のした事を、覚えていない、自分の罪を理解できていない、愚か者と、目で言っている。
「アルト…ご…ごめn…!!あがあ!」
顔面を思いっきり蹴られた。
痛い…痛いよ…。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「簡単に、ごめんなさいで、済むと思ってるのか!!!」
頭を踏まれる。
グリグリと足を動かれる…痛い。
許し…て…
あぁ…なんで、私は、私は…
あんな事…したんだろう…
それに、なんで簡単に許してもらえると…
そんな浅はかな、愚かな考えを持ったんだろう…。
もう、死ぬのかな…
痛いよ。
あれ?なにか声も聞こえて来た…。
え…「バットもってこい」…え?
ば…バット?…いやだ…。
あぁ、近付いてきた。
「もう、おしまいだァ!!!! 」
アルトは、バットを振り下ろした。
ぐちゃ!…と不吉な音を残して。
私は、死んだ。
「死んだ!!…お前は、俺にこのくらい酷いことを、してきたんだ!!死んで当たり前!!!」
俺は、笑った。
だって、本当に…俺は、自殺したくなるようなことばっかりしてきた。
でも、なんでだろう…涙がこぼれた。
「…っ…うぅ…うっ…」
俺は、璃音を抱きしめた。
強く。
熱を感じない、冷たくなった、璃音に、キスする。
「あぁ…璃音…俺の…」
涙で、何も言えない。
…言いたい事は、心の中か…
俺の、初恋の人…保育園から、小学2年生最初の時までの淡い恋は、2年の中盤になってから、砕け散った。
親が死に、璃音の親に養子にされた瞬間。
璃音から、酷く虐められた。
初恋の子では、なく、ただ。
ただただ。
憎い。
あぁ、まだ殺し足りない。
なんで死んだんだ。
何故!
俺がやりすぎた!!
あぁ、後悔…。
まだまだ、足りない。
今は、憎い…ただ、楽しい。
殺すのが、楽しい。
あぁ、こいつを殺した。
璃音を、殺した。
「…もう、どうなっても…いいや…」
笑う。
大声で、笑った。
皆が何事かと、集まり。
発狂している。
目の前で、人を殺している人がいる。
「ギャハハ!!! 」
おかしい。
何がおかしい。
何故笑っていられる。
俺も、分からない。
俺ですら、自分のことなのに、それすら、分からない。
「…」
急に冷静になった。
俺は、立ち上がり、バットで、みんなを、本気で殴りつけた。
皆恐怖で、動けない。
…そんなんじゃ、俺を倒せやしない。
教師は、何故動かない。
生徒が殺されているのに。
「い…いやぁ!!!」
先生と生徒の、罵倒のし合い。
叫び合い。
あぁ、まさに、地獄の阿鼻叫喚。
血なまぐさい。
あぁ、気持ちいい。
俺は、このため生きているのかもな…
そして、出ると。
警察がいた。
1歩も近付くな。
近づいたら撃つぞ…と、死にたくない。
この快感が、忘れられない。
いやだ、でも、止まれば捕まる。
動けば死ぬ。
まだ、殺したい。
いっそ、逮捕される瞬間に、殺すか…。
止まる。
殺そうと手を伸ばすが、やはり、俺の頭は、狂っていて、勝手に勝てると確信していたようだ。
警察に、学生なんかが、勝てるわけなかった。
1965年
5月20日
今でも、俺は…史上最低の快楽殺人鬼として、教科書にも乗り。
そして、最も悲しい、いじめを受けた快楽殺人鬼とも、呼ばれた。
何故だろう。
俺は、何故…皆まで殺したんだろう。
殺すのは、璃音だけで良かったのに…
あいつが、謝るからだ…
あいつが!あいつが…!
コメント
1件
読み終えました…「死戻」というタイトルがもう切ないですね。第1話から続く“同じ日のループ”の構図が、ここでついに清算として収束した感じがしました。璃音の「これを受けなきゃ」という諦観と、アルトの爆発する憎しみの温度差が痛いです。アルトが♡♡♡た後に笑いながら泣く場面、あの「なんで涙が出るんだろう」という一文がすごく心に残りました。憎しみの奥に初恋があったからこその複雑さ…設定の重層性が美空さんらしいですね。続きがどうなるのか気になります。