転勤族の一人娘に生まれた麻帆、17歳のこの日まで何回引っ越ししただろう。
友達をつくっても直ぐに転校、どうせ仲良くなってもまた転校。そんな人生を繰り返していくうちに内向的な性格になっていった。
そして遂に日本国内を転々としていた父親の転勤先はなんとイタリア。。。
「麻帆起きなさい、明日発つんだから、準備しなさい」
あーぁ面倒臭い、それよりもワイヤレスイホンが見当たらない。
家中探したが見当たらず仕方なく日本での最終日なのにイヤホンを買いに町に行くことに。
私の住んでいる所は何もなく、まずはバスに乗り、駅に向かい、そして少しだけ離れた町に行かないと家電量販店もない。
家からバス停まではそんな離れてはいないが、周りは田園風景が広がり、バスも1時間に一本しなかいのんびりとした町、だから少し栄えた町に行くことが苦痛でしかなかった。
こんな田舎から、明日はイタリアのミラノという大都市に移住となる。
バスを待っている間、一年半過ごしたこの町を思い返す。
仲良くなるのも面倒だし、友達も特に出来なかった。だから学校から自宅までの通学路を歩いた思い出しかない。
きっと私の事なんで誰も気に留める事なんてない。
バスが停車場に到着し、扉が開く。乗客は私だけ、一番後ろの席に座りハンカチで額の汗を拭う。
駅までは15分、スマホをバックから取り出そうとバックの中を探る。
「ん?あれ?まさか。。。」
部屋にスマホを忘れてしまった、引き返してバスを待つのにまた何時間もかかってしまう。特に連絡も来ないし、なくても不便はない。麻帆はスマホを諦めそのまま駅に向かった。
とはいえ、いつもあるものがないって落ち着かないし、窓の外を眺めているだけ。いつもはスマホしか見てなくて、改めてこの町をみると素直に綺麗だと感じた。
道端には小川が流れ、稲穂の絨毯が風でなびき、子供たちは網と虫籠を持ち走り回る。
季節はもうすぐ夏休み、梅雨も終わりかけだ。
その頃もう一人一足先になるある男の旅立ちが始まっていた。
「お世話になりました。」
「青山もうもどってくるなよ」刑務官からそう告げられ男は刑務所を後にした。
青山春人 18歳 今日この日、少年刑務所を出社した青年だ。
2年ぶりの#娑婆__シャバ__#だ。塀の外の空気は最高だ、しかし誰も迎えにこないのは寂しい。たしかに地元からは遠い刑務所とはいえ誰もいないのか。
クソ暑いけどやっぱり外は気持ちいい。
気を取り直しバスにのり駅に向かうことにバスに揺られながら、まずは食欲を満たす事を考えていた。
ハンバーグにステーキ、焼肉、ラーメン全部食ってやるぜ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!