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スタートヽ(*^ω^*)ノ
柔らかなシーツの感触が、背中に広がる。
天井の灯りは落とされていて、
部屋の中は、静かな薄闇に包まれていた。
レトルトは、ゆっくりと瞬きをする。
酔いのせいか、思考が追いつかない。
ここは――
どこだっけ。
隣に気配を感じて、視線を向けると、
あの男が、ベッドの縁に腰掛けていた。
『……起きた?』
低い声が、そっと問いかける。
レトルトは、小さく頷く。
言葉にしようとすると、喉が少し乾いていた。
男は、無理に距離を詰めてくることはなかった。
ただ、同じ空間にいるだけ。
『無理しないでね』
そう言って、
静かに毛布を肩まで掛けてくれる。
その仕草が、
妙に慣れていて、優しかった。
胸の奥が、また小さく疼く。
――この感じ、知っている。
思い出せないはずの温度。
忘れたはずの安心感。
レトルトは、ぼんやりと男を見つめた。
「……ねえ」
声にすると、
自分でも驚くほど弱々しい。
「……俺、あなたのこと……」
言葉は、最後まで続かなかった。
男は、少しだけ目を細めて、
それでも、答えを急がせることはしない。
男は、そっと身をかがめて、
レトルトの額に、優しく唇を触れさせた。
一瞬の、羽が触れるような感触。
くすぐったくて、
レトルトは思わず、ふふ、と小さく笑う。
その笑みを確かめるように、
男はゆっくりと距離を詰めていった。
額から、まぶたへ。
閉じられた瞳に、静かな口づけを落とす。
まぶたから、頬へ。
何度も大切に触れるような、
確かめるような、優しい口づけ。
レトルトは、目を閉じたまま、身を委ねていた。
逃げる理由も、拒む理由も、見つからなかった。
そして――
頬から、唇へ。
ほんのわずかな間があって、
それでも、レトルトは動かなかった。
拒まなかった。
拒みたいとも、思わなかった。
まるで、それが最初から
当たり前のことだったかのように。
迷いも、恐れもなく、
自然に、その唇を受け入れる。
男は、何度も確かめるように、優しく唇を重ねた。
触れるだけの軽いキス。
けれど時折、
離れるのを惜しむように、
レトルトを求めるような深さが混じる。
その緩急に、心が揺れる。
唇が離れたかと思えば、またすぐに塞がれて、
レトルトは次第に息の仕方を忘れていった。
酔いのせいなのか、
それとも、逃がしてもらえないほど熱を帯びたキスのせいなのか。
息は浅くなり、
胸が上下するたびに、頭がくらりとする。
それでも、不思議と怖くはなかった。
唇に触れる温度も、
包み込むような距離も、
すべてが、どこか懐かしい。
――知っている気がする。
思い出せないのに
それでも確かに胸に残っている、
「誰か」に大切にされていた感覚。
男のキスは、
奪うためのものではなく、
確かめ合うための優しく熱いものだった。
続く