テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
4話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
柔らかなシーツの感触が、背中に広がる。
天井の灯りは落とされていて、
部屋の中は、静かな薄闇に包まれていた。
レトルトは、ゆっくりと瞬きをする。
酔いのせいか、思考が追いつかない。
ここは――
どこだっけ。
隣に気配を感じて、視線を向けると、
あの男が、ベッドの縁に腰掛けていた。
『……起きた?』
低い声が、そっと問いかける。
レトルトは、小さく頷く。
言葉にしようとすると、喉が少し乾いていた。
男は、無理に距離を詰めてくることはなかった。
ただ、同じ空間にいるだけ。
『無理しないでね』
そう言って、
静かに毛布を肩まで掛けてくれる。
その仕草が、
妙に慣れていて、優しかった。
胸の奥が、また小さく疼く。
――この感じ、知っている。
思い出せないはずの温度。
忘れたはずの安心感。
レトルトは、ぼんやりと男を見つめた。
「……ねえ」
声にすると、
自分でも驚くほど弱々しい。
「……俺、あなたのこと……」
言葉は、最後まで続かなかった。
男は、少しだけ目を細めて、
それでも、答えを急がせることはしない。
男は、そっと身をかがめて、
レトルトの額に、優しく唇を触れさせた。
一瞬の、羽が触れるような感触。
くすぐったくて、
レトルトは思わず、ふふ、と小さく笑う。
その笑みを確かめるように、
男はゆっくりと距離を詰めていった。
額から、まぶたへ。
閉じられた瞳に、静かな口づけを落とす。
まぶたから、頬へ。
何度も大切に触れるような、
確かめるような、優しい口づけ。
レトルトは、目を閉じたまま、身を委ねていた。
逃げる理由も、拒む理由も、見つからなかった。
そして――
頬から、唇へ。
ほんのわずかな間があって、
それでも、レトルトは動かなかった。
拒まなかった。
拒みたいとも、思わなかった。
まるで、それが最初から
当たり前のことだったかのように。
迷いも、恐れもなく、
自然に、その唇を受け入れる。
男は、何度も確かめるように、優しく唇を重ねた。
触れるだけの軽いキス。
けれど時折、
離れるのを惜しむように、
レトルトを求めるような深さが混じる。
その緩急に、心が揺れる。
唇が離れたかと思えば、またすぐに塞がれて、
レトルトは次第に息の仕方を忘れていった。
酔いのせいなのか、
それとも、逃がしてもらえないほど熱を帯びたキスのせいなのか。
息は浅くなり、
胸が上下するたびに、頭がくらりとする。
それでも、不思議と怖くはなかった。
唇に触れる温度も、
包み込むような距離も、
すべてが、どこか懐かしい。
――知っている気がする。
思い出せないのに
それでも確かに胸に残っている、
「誰か」に大切にされていた感覚。
男のキスは、
奪うためのものではなく、
確かめ合うための優しく熱いものだった。
続く
33
魑魅魍魎
2,390
ねこかに
476
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!