テラーノベル
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4人から6人の机を向かい合わせる給食班の時間は、良くも悪くも距離が近い。大神蹴介と如月翔の班は、最悪なことに崎岡夏太と同じ班だった。そして夏太の右斜め後ろ、まさに夏太の視線がダイレクトに届く位置に、大人しいはずの賢太が座っていた。
「おい、けんちゃん。また下で触ってんの?」
牛乳瓶の蓋を開けながら、夏太がニヤニヤと下品な目を賢太に向けた。いつもの、からかい半分のフリ。今までの賢太なら、すぐに顔を真っ赤にして「違う、消しゴムを……」と縮こまっていた。だけど、毎日毎日、夏太たちのコショコショ話や爆笑を聞き続けているうちに、賢太の中の「恥ずかしさのハードル」が少し下がっていたのかもしれない。
賢太の顔に、一瞬だけブワッと赤い照れが浮かんだ。だけど、すぐにそれを隠すような、ニヤついた「ふざけ顔」を作る。
「いやー、そんなことないよ!」
賢太はそう言うと、わざと勢いよく、自分の机の下へ右手をグッと力任せに押し付けた。完全に、ウケを狙いにいった動きだった。
「うわあああああ!」
「けんちゃんマジでやったぞ、こいつ!」
周囲の男子たちが、待ってましたとばかりに給食の机を叩いて爆笑する。夏太も
「ギャハハ! けんちゃんやばぁ!」
と大喜びで賢太の肩を叩いた。賢太は顔を少し赤くしながらも、みんなにウケたのが嬉しそうに、照れくさそうに笑っている。
「うわっ、賢太お前マジかよ! 給食中にやめろって! おかずのソーセージが別のもんに見えてくるだろ!」
蹴介はすかさず立ち上がり、クラス全員に聞こえるような大声でツッコミを入れた。教室がワッと沸き立つ。誰もが蹴介の言葉に爆笑し、賢太の「一発芸」を囃し立てている。
(あぁ、賢太……お前までそっち側のノリにいっちゃったのかよ……)
声を張り上げて笑いながら、蹴介の心には、冷たい風が吹き抜けていた。賢太は壊れたわけじゃない。ただ、夏太のノリに「適応」して、自分から下ネタの輪に入っていったのだ。
そっちの方が、いじられなくて済むし、みんなと楽しくやれるから。賢太の顔に浮かんだあの「照れ」は、まだ彼がまともな感覚を持っている証拠だ。それなのに、そのまともな感覚を自分で踏みつぶして、夏太の泥沼に足を踏み入れていく。その様子が、蹴介にはたまらなく悲しかった。翔は、スプーンを握ったまま、自分の皿を見つめていた。賢太が、生き残るために「ふざける」という武器を手に入れ、どんどん夏太のペースに染まっていく姿を特等席で見せつけられた。
(注意する人が、誰もいないから……みんなこうなっていくんだな)
もし、ここに「そういうの、本当に下品だからやめなよ」と普通に怒ってくれる大人が一人でもいれば。だけど、この教室にはそんな人間はいない。だから、昨日まで普通だった友達が、こうして少しずつ、楽しそうに、自ら汚れていく。
「なぁ、賢太、次それ女子の前でもやれよ」
夏太がさらにニヤニヤしながら、賢太の耳元でコショコショと囁く。
「いや、それは無理だって! あはは!」
賢太は照れて手を振りながらも、楽しそうに夏太と顔を見合わせている。その笑顔を、蹴介と翔は、完璧な「爆笑の仮面」の裏側で、ただ悲しく、言葉のない絶望とともに見つめることしかできなかった。
みずき
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北底@一ヶ月女体化中
37
103
KIKU@ペア画中
207
コメント
1件
ああ、これ……読んでて胸がギュッとなったわ。賢太が「適応」して笑いを取る場面、一見みんなで盛り上がってるのに、蹴介と翔の内側だけ冷えてる感じがすごく伝わってきた。特に「爆笑の仮面」って表現、まさにそれだよな。守る人がいない教室って怖い……。続きが気になる!