第13話 祭りの中に響く音
「なんなの、あいつ」
恋歌は人混みを進んで、梨柚達の方へと歩いていく。
「恋歌、やめときなよ」
澪那は止めるけど、恋歌は止まらない。
梨柚達は、近づいてくる恋歌に気づいたようだった。梨柚は栲の背中に隠れ、栲はじっと恋歌を睨む。
恋歌は2人の前で立ち止まった。ぽたっと、俯いた顔から涙が落ちる。その時。
恋歌は右腕を振り上げた。
咄嗟に澪那は3人の方へと走り出す。でも、間に合わなかった。
バチンッッッ!!
鈍い音が響いて、澪那がつぶった目を開けると、梨柚の頬が真っ赤に腫れていた。栲の顔がみるみる赤くなり、額に青筋が浮く。
「お前っ!」
「やめて!!」
梨柚の声が響いた。行き交う人達が3人をちらちらと見て、通り過ぎて行く。
「痛くない!痛くないから!だからやめて…..!」
梨柚は泣いていた。真っ赤な頬に、涙が零れる。
「澪那も、恋歌ちゃんも、私のせいで色々思うことあると思う。ごめん。だから、私が言えることじゃないかもしれないけど、今日はもうやめよう?」
そういうと、梨柚は栲の手を引いて人混みへと消えていった。
その背中を見て、澪那はいてもたってもいられなくなった。気づけば、2人を追いかけていた。
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