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第14話 紡ぐ絆
「梨柚っ!」
梨柚が振り返ると、そこには息を切らした澪那が立っていた。澪那の目には、うっすらと涙が光っている。
「いいよ、梨柚。行こう」
栲は梨柚の手を引いて行こうとした。でも、梨柚は動かない。
「ごめんね、栲。せっかく誘ってくれたのに。でも、私、澪那と話したい」
梨柚は真っ直ぐな目で栲を見つめた。その目から梨柚の気持ちを悟ったのか、栲は
「分かった。後で連絡する」
そう言って手を振り、人混みへ消えていった。
「あの、梨柚、私…..!」
澪那は震える手を白くなるほど握りしめ、声を絞り出した。
「分かってる。言いたいことは、分かってるから。……ちょっと移動しよう?」
そう言って、梨柚は澪那の手を引き、屋台のある場所から少し離れた川沿いのベンチに座った。そして、ぽつりと言った。
「澪那、私ね。澪那のこと、もう親友じゃないって思ったこと、一回もないよ」
その言葉に、澪那は顔を上げた。
「澪那は、裏切ったから親友じゃない、とか思ってそうだけど。私は思ったことない。ずっと、澪那と話したかった」
梨柚の目にも、涙が滲んでいく。
「ごめんね、ごめんね、梨柚…..っ!」
梨柚は、泣きじゃくる澪那の手をそっと握りしめた。もう親友が離れていかないように、ぎゅっと。
「まだ、親友でいてくれる?」
澪那は頷いた。
「うん、親友で、いたい」
2人を包み込む夜空の奥で、花火が散る音がした。