「ふぁぁ…。朝は早いにぇ……。」
時計は5時半を差している。
この高校の登校時間は7時位だけど、
みこはいつも6時に学校に登校している。
窓際を見ると、心地よい風が体を包む。
光がちらっとカーテンから覗かせる。
昨日の事を思い返すと、少し気持ちが軽くなる。
「今日は晴れかな?晴れって元気になれるにぇ……。」
私が早起きして学校に行く理由は、
すいちゃんの歌を聞くためだった。
すいちゃんは週2回位、朝教室で
歌を歌っている。
その声が凄く綺麗で。
力強い歌声も程よく、聞いているだけで
落ち着ける。
「楽しみだなぁ…。」
今日はどんな歌を歌うのか、期待に胸を膨らませながら登校をする。
「朝は少し肌寒いなぁ…。でも少し心地よいかもしれない」
下駄箱をそっと開ける。
すいちゃんの靴がある。
やっぱり来てたんだ………。
そう呟くと軽い足取りで教室へ向かう。
どうして歌っているのか。
それは分からないし、朝聞いている、とも
すいちゃんには言えないし聞けない。
だけど、何故か気持ちが伝わるような……。
そうすると歌声が聞こえてくるような気がした。
「僕だって君と同じ—-特別なんかじゃないから—-……。」
初めて出会った時に歌っていた曲。
何かみことすいちゃんみたいだな……。
————————————————————————–すいちゃん視点
「もう朝か…。憂鬱だなぁ……。」
私はむくっと起き上がると、窓の方を見る。
窓辺からちらっと日光が見える。
植物が優しく風に吹かれている。
「この朝の独特な匂い…嫌なんだよな…。」
私は朝が嫌いだ。
だけど早く登校しないといけない。
ある人に歌を聞いてもらうために。
この気持ちが届くように。
きっと届いてない。
だけど、教室で歌うだけで
誰かに届くような感じがするから…。
「準備して登校しよ」
と小さな声でつぶやくと、重い腰を動かし
ベットからおりる。
「大丈夫だ。まだ来てないっぽい…。」
朝は嫌いだけど、朝の景色は好きかもしれない。
「肌寒いな…。みこちに後であっためて貰おう」
ぽつんと呟き、教室へゆっくりと向かう。
「きっと君はもう気づいていた」
「僕の心の奥で描いた」
「それがこれから話す陳腐なモノローグさ」
伝わって欲しいな。
そんな気持ちで歌う。
みこちの席に座って歌うと伝わってるような感じがする。
その時だった。
ちらっと扉に人影が見えたような気がした。
「誰か居るのかな…?」
扉を見ると桜色のアホ毛がちらっと覗かせる。
みこちだ。
喋りかけようかな…。と迷っていると、
みこちが扉を開けた。
「すいちゃん—–おはよぉ…。」
「あ、おはよ—-。」
聞いていたのかな。
そう思いながらみこちに抱きつく。
「うわっ!!すいちゃん!?」
「今日寒かったんだもん~……。」
「そうだけどさぁ…。急に抱きつかれると思ってなかったから…。」
「みこち……嫌?」
「別に嫌な気はしないからいいにぇ」
「それならずっと。」
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