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~アクアマリノ 中心街~
進は神殿騎士アリオール-ヴェ-アスタロトと戦い、只管殴り続けることにより戦闘不能にした。
白目をむいて横たわる神殿騎士―――
一緒にいたその男の部下であろう男たちが運んでいる。
「お前たちその神殿騎士の仲間か?」
オレはその男たちに問いただした。
「私たちはアリオール様に仕える者だ!」
「お前たちは神殿騎士を敵に回したのだぞ!覚悟はできているのか!」
「関係ないね。」
「戦いたい奴は掛かってこいとお前たちのリーダーにでも伝えるんだな。」
「ただし、オレに向かってくるのが誰であろうと勝つのはオレだ!」
進は男たちにきっぱりと言ってやった。
男たちはアリオールを運びながらオレたちに向かって後悔するなよとだけ言いながらその場を後にした。
男たちが去り、オレはマリーの膝枕で眠る少年の元に寄った。
「少年の様子はどうだ?」
オレはマリーに尋ねた。
「傷はススムさんの魔法で治ったみたいですけど、まだ疲れているんでしょうね。」
「ぐっすりです―――」
「まぁ、あれだけ殴られるってことは相当あの男を怒らせるようなことを言ったんだろうな」
そんな予想を立てていると、一人の中年のおばさんがオレたちの元に急ぎ足でやってきた。
「あんたたちかい。」
「私の息子を騎士様から助けてくれたのは?」
「確かにこの少年を助けたのはオレたちだが―――」
「あんたはこの少年の母親か?」
「そうだよ!私はこの子の母親で向こうで宿屋をやっているんだ。」
「そうだ、オレたちは宿屋を探していたんだ!」
「これも何かの縁だし、おばさんの宿屋で今夜は休ませてくれないか?」
オレは申し出るとおばさんは息子の命の恩人だからと無料で泊まっていいと言ってくれた。
オレたちはおばさんに連れられて、宿屋に入り、空き部屋で少年をベッドに寝かしつけた。
「なぁおばさん、一つ聞いてもいいか?」
「なんだい?」
「なんでこの少年はあの神殿騎士に殴られていたんだ?」
「何か怒らせるようなことを言ったんだろ?」
おばさんは困り顔でぽつりぽつりと事情を話してくれた。
「私も滅多なことは言うんじゃないと言ったんだがね」
「私の娘、この子にとっては姉に当たる子がいたんだがね、数日前から行方不明になったんだ。」
「最近、この街では神殿騎士について悪い噂が立っていてね。」
「神殿騎士が奴隷商売に加担しているとかなんとかって話なんだけど。」
「奴隷商売だって!?」
フラムさんがその話に食い付く。
「この世界では奴隷の存在はどういうことになっているんですか?」
オレはフラムさんに聞いた。
「この世界では、奴隷は存在するが、奴隷にしていいのは犯罪者と決まっている。」
「それも、無差別に人殺しをしたりする重罪人だけだ!」
「そうなんだよ、でもねこの街では裏で若い女や子供が奴隷として取引されているらしいんだ。」
「あくまでも噂話だけどね。」
「そして数日前にあの男が私の娘に言い寄っているところをこの子は見つけたんだ。」
おばさんは深い溜め息をつき話を区切った。
「ってことはその後に娘さんが失踪したから、少年はあの神殿騎士と娘さんの失踪を結び付けてそれを今日直接聞いたら、暴行を受けたとそういうわけですね?」
「ああ、多分その通りだよ」
「この街では神殿騎士様に立てついて生きていける者はいないからね。」
「誰も逆らえないんだよ。」
「でも今日あんたたちはその神殿騎士を倒してしまった。」
「まさか余計なことをしてしまいましたか?」
オレは恐る恐るおばさんに聞いてみた。
「いやそんなことはないよ。」
「あのままだったら私は娘に加え、息子も失うところだったんだ。感謝しているさ。」
おばさんは元気を取り戻したように装い、声を大きくして言った。
「さぁさぁ今日は腕によりをかけた料理をあんたたちに振る舞ってあげるよ!」
オレたちはおばさんの料理を食べ、その日は眠りについた。
おばさんの料理は家庭的な味でまるで日本の定食屋を思い出すようだった。
そういえば、母親の手料理を食べたことは数えるほどしかなかったな。
元気かな母さん…。
父さんはオレと言う最高の作品がいなくなりどうしているかな?
進は日本にいる両親のことを思い、夜は更けていく。
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~神殿騎士 第七師団駐屯地~
アクアマリノの郊外に位置する神殿騎士第七師団駐屯地に一人の男がやってきた。
進にやられた、進に恐怖した神殿騎士アリオール-ヴェ-アスタロトであった。
進にやられた傷も完治せぬまま彼は第七師団駐屯地の門を叩く。
「ガリア様!!私です神殿騎士アリオール-ヴェ-アスタロトです!」
「貴方の耳にぜひ入れてもらいたい情報がございます!」
門は開かれ、アリオール-ヴェ-アスタロトは神殿騎士第七師団団長ガリア-ニュー-コルベールの元を訪れていた。
「なんだアリオール!こんな時間に!」
男は自慢のオールバックである自身の髪をポリポリと掻きむしりながら現れた。
「ハッ!実はある男に付いてお耳に入れてもらいたく思い馳せ参じました!」
アリオールはガリアの元に跪きながら言った。
「男だぁ?」
「俺は男には興味ないぜ?奴隷にピッタリな若い女の話ならいくらでも聞くけどな。」
ガリアはゲラゲラと下種な笑いを辺り響かせながら言った。
「実はこのアクアマリノに治癒の白魔法を使う少年が現れました!」
「治癒の白魔法だぁ?」
「治癒の白魔法は聖女の一族しか使えないはずだろ?」
「そんな奴は存在するはずはねえ!」
ガリアは多少のイライラを含みアリオールに叱咤した。
「私も驚きました!」
「しかし奴は私の目の前ではっきりと治癒の白魔法を使用しました!」
「本当にそんな奴がいるなら興味がある。」
「そいつに偵察を送れ!そして、隙を見てここに連れてこい!」
とアリオールに命令を下す。
アリオールがガリアの元を去った後、ガリアは一人笑みを浮かべていた。
「本当に聖女以外に治癒の白魔法を使えるやつが存在するなら、他の神殿騎士引いては教皇に対してだってこれ以上のカードはねぇ!」
「そいつを奴隷にして、俺の元で一生働かせれば、俺がこの世の天下を取ることだって夢じゃねぇな」
「あの姫様の売値とその白魔法使い、そして神殿騎士幹部にしか知らされていない”あの計画”に必要な”アレ”が揃えば…」
「ククク…あーハッハッハ!」
ガリアは自身の野望に近づきつつあることに対して果てしない高揚感から高笑いせずにはいられなかった。