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第十九章 アイスは半分こ
「寒い時に食べるアイスって格別だよな」
年中食べてるくせに……
「ねぇ……今日頑張ったからアイス二個食べていい?」
それ毎日言ってない? お腹緩いくせに……
冷凍庫に並んだアイスを掴んだ。残りはあと一個。
「あぁー蓮!俺のアイス食ったろ?」
二人で半分こ……したいだけ。
溶けかけたアイスを押し付け合って、
どっちが多いだ少ないだって、くだらないことで笑った。
わざと買い忘れて帰った。
冷凍庫に残ったひとり分のアイスを「俺の方が先輩だぞ」なんて言いながらも、スプーンで掬ったアイスを俺に差し出して、まだ口に運んでもいないのに「美味いだろっ」って笑ってた。
二人でアイスの買い出しの帰りに見上げた星空も懐かしい……
そんなやりとりを思い出す。
きっと今だって、湯上がりにソファーで小さく膝を抱えてアイスを頬張っている……そうだと良い――
翔太は子供みたいにぬいぐるみが好きだった。
ぬいぐるみに名前まで付けてしまうほどにね……
馬鹿みたいだと思いながら、
その名前を否定しなかったのは、
翔太が大事にしているものを、俺も大事にしたかったからだ。
二人の尾ひれに付けたブルーとブラックのリボン。
「蓮ありがとう」と言って、子供みたいにぴょんぴょん跳ねて喜んでいた。
カナダへ旅立つ前夜、二体のサメのぬいぐるみを小脇に抱えた翔太の姿を思い出す。
「この子達連れてって……カナダの景色見せてあげて」
「良いの?ひとりだけにしようか?翔太寂しくなるだろ?」
「ジェームズとフォーカスが離れ離れの方が可哀想だろ!」
まるで俺たち二人が引き裂かれるのを拒むように、
翔太は何も言わず、ぬいぐるみごと俺にしがみついてきた。
小脇に抱えて、俺の胸に突進してきた翔太が、「んっ」と言ってぬいぐるみを押し付けた夜が、何度思い返しても可愛らしくって、ホテルの出窓に飾られた、ジェームズとフォーカスを見るたびに、顔が綻ぶ。
本当はなんて言いたかったの?翔太――
きっと言えなかった言葉は〝行かないで〟だったんじゃないかな……
分かっていながら俺は――
雪深い山々に囲まれた、小さな街にまた新しい朝がやってきた。差し込む光が二人を照らし、雪の残る街道が朝日でキラキラと光るカナダの街並みを、ホテルの窓から物珍しそうに覗き込む二人に俺は、
「行ってきます」
を告げた。
翔太 side
翔太📩「ジェームズとフォーカスは元気ですか?」
送られなかったメッセージ。
次にまた行った時に直接確認すれば良いだろ……
聞きたいのはそう言う事じゃない。〝蓮元気?〟〝次はいつ帰ってくる?〟〝撮影は順調?〟〝俺のこと愛してる?〟
巻いて巻いて、早く撮影終わったりしないかな……
ふふっどんだけ巻くんだよ……
自分の世界から青がなくなっていく感覚があった。
(未送信)
コメント
2件
ジェームズとフォーカス、💚💙の時はサンキャッチャー。印象的な無生物の使い方が本当に上手👏 しかし、二箇所を行き来する中で、どうして存在が希薄になるんだろう🤔