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#からぴち
#恋愛
#シングルマザー
水羽凛
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家事を終えたあとは、夕方残していたSNSへの投稿作業を片づける。とは言っても、昼間にだいぶ終わらせていたので、投稿前の最終チェックをして時間を設定をするだけ。
ちなみに私が普段アップする投稿内容は大きく分けて三つ。一つ目は料理動画で、これは料理の一連の流れを数分の短い動画にまとめるものだ。最近では便利な動画編集ツールもたくさんあるが、この作業が一番重労働だったりする。
二つ目は、写真のみのレシピアップ。単純にレシピを上げる作業で動画よりは簡単に作業できるものの、写真の撮り方への妥協は許されず、一皿で何十枚も撮ることもあるほど。
そして、三つ目は企業や料理教室のPR案件と日常投稿。概ね、これが収益のメインとなっているが、あまり多く投稿してもフォロワーからの印象が良くないので、日常投稿と織り交ぜながら程よい回数を保っている。何度投稿しても塩梅が難しく、毎度投稿後は反応にヒヤヒヤさせられていた。
ゆるっと一日一更新のミッションをクリアし、お風呂から上がったころには、リビングで読書をしていた伊織さんも寝室へ向かった頃だった。
「作業進んだ?」
「うん。今日は時間あったから、昼間動画も何本か撮れたの」
「休みの日までお疲れ様。少し働き過ぎてないか心配だけど」
「ありがとう。でも教室のほうはシフト減らしてもらってるから」
料理教室での仕事もあるため、毎日かかさず投稿することはできないが、休みの日にまとめて編集したものを小出しにアップするスタイルをとっている。
一時期はSNSを本業にしようか迷った時期もあったが、SNSを見て料理教室へ通ってくれる生徒も多く、教室側からタイアップの授業を依頼されることもしばしばある。そのおかげで、教室側からもシフトなどの融通もだいぶ利かせてもらい、なんとか両立させていた。
「少し早いけど、もう寝ようか。緋真も明日は朝からだろう」
「あ、でも十時の授業だから、そこまで早くないよ」
「早く寝るに越したことはないさ。電気消すよ」
「……うん」
ベッドサイドの明かりが消え、暗闇に包まれる。
互いに「おやすみ」を言い合ってしばらく。微かに寝息が聞こえ隣を見ると、伊織さんが背中を向けて眠っていた。
せっかく今日は、伊織さんも早く帰って来たのにな……。
シングルベッドを二つ並べると想像以上に広くて、手を伸ばしてみても冷たいシーツを撫でるだけ。毎晩こうして一緒に寝ているにも関わらず、一向に縮まらない距離に、思わずため息が漏れた。
私たちは出会ってからこれまで、一度も体を重ねたことがない。もっと言えば、結婚式も神前式だったこともあり、キスすらしたことがないのだ。果たして、この世の中に私たちのような新婚夫婦がどれくらい存在するだろうか。
一緒に暮らし始めて一週間くらいは、毎晩「今夜こそ」と構えていたが、まったく良い雰囲気にならないものだから、きっと彼はしたくないのだと判断した。
私としては、もっと伊織さんと触れ合いたい。それは性的や肉体的な欲求ではなく、精神的な意味でだ。夫婦になって毎日穏やかに暮らせてはいるものの、彼とはまだ壁を感じていたから。
体を重ねたら何か変わるのではないかと思っているのだが……如何せん男性経験のない私には、この先をどう進めたらいいかわからない。加えて、伊織さんは気にしないと言ってくれたものの、背中のコンプレックスのこともあって一歩踏み出せなかった。
「はぁ……」
もう一度小さくため息をついて、目を閉じる。私は伊織さんの隣で眠るだけで、毎晩ドキドキしているのに……。この思いは一方通行なのだろうか。
今夜もまた、やるせない気持ちのまま深い眠りへと落ちていった。
コメント
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ああ、今回もじんわり沁みたわ…。夜のベッドで手を伸ばしても冷たいシーツだけって描写、すごく切なかった。キスすらしたことないままの新婚生活って、静かだけど見えない壁が痛いほど伝わってきた。郁ちゃんとの会話で「上手く行ってそう」って言われて濁すとことか、緋真の胸の内がじわりと滲んでて、続きが気になる…!