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27話 4900スポット 忘れ物商業施設
広い。
入口に立っただけで、
奥が見えない。
天井が高く、
通路が何本も分かれている。
ここは、
忘れ物商業施設。
リカは、
少し大きめの上着。
肩から鞄。
腰元で、
電子マネーとお守りが
静かに触れ合う。
隣には、
カナ。
動きやすそうな服。
首元から、
ぬいぐるみのサルが
いない。
「ここにあるってさ」
軽い声。
でも、
指先は落ち着かない。
施設の中。
棚。
棚。
棚。
靴。
傘。
手帳。
キーホルダー。
番号が振られて、
静かに並んでいる。
案内板。
一ヶ月以内 無料返却
それ以降 販売
文字は大きい。
一ヶ月。
一ヶ月。
もう一度、
一ヶ月。
受付の人が、
同じことを言う。
一ヶ月までは、
返す。
それを過ぎたら、
並べる。
理由は
「社長の思いやりです。」
それだけ。
思いやり。
そう言葉にしなくても、
空気で伝わる。
カナは、
棚を一段ずつ見ていく。
リカも、
一緒に探す。
ぬいぐるみ。
サル。
小さい。
手触りが柔らかいはず。
奥のほう。
一段低い棚。
いた。
少し座った形。
耳が片方だけ折れている。
カナが、
息を吸う。
手を伸ばす。
抱える。
「よかった」
声が、
少しだけ揺れる。
受付に持っていく。
番号を確認。
期間内。
無料。
返却。
袋もいらない。
胸に戻す。
サルは、
元の場所に収まる。
外に出る。
かなり広い建物を、
振り返る。
忘れられたもの。
戻るもの。
並べられるもの。
一ヶ月。
その間だけ、
待ってくれる場所。
リカは、
歩き出す。
カナの歩幅は、
さっきより少し軽い。
それで、
今日は十分だった。