テラーノベル
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放課後、駅のホームで電車を待っていると、学ラン姿の見覚えのある男子がこちらへ歩いてくるのに気づいた。(ちなみに私の制服は、黒いブレザーに青いスカートだ)
壮高オーボエパートの、小鳥遊優人(たかなし・ゆうと)くんだ。
あの日、楽器庫の小窓でカワセミを一緒に見て以来、週一ペースで行われる合同練習のたびに仲良く話すようになった。もちろん、会話の9割は鳥についてだ。
そして今、私はものすごく彼に伝えたいことがある。
目の前に延びる線路の架線に、どこからともなく何百羽ものカラスが集まり、鈴なりになって止まっているのだ。
ぜひ見てほしい。この圧巻の光景と感動を共有したい……!
(あ、小鳥遊くんがこっち見た! 気づいてる!)
「やっほう、小鳥遊くん!」
思い切って手を振ってみる。
「やっほう、林さん」
彼の返答を聞くやいなや、私は指をさした。
「見てあれ、カラスが……!」
「うわー、すご……! 集団ねぐら?」
「たぶんね」
「へえー、初めて見た」
「若鳥の集団なのかな? なんだか飛び方がふわふわしてて、ぎこちない気がする」
「確かに」
少しずつ薄暗くなっていく夕焼けが、空を静かに包み込んでいく。ゆったりとして、でもどこか不思議な空気が二人の間に流れる。
――ゴーーーッ。
轟音とともに、快速電車がホームを通り過ぎた。
途端に「カア、カア、カア」とそこかしこから一斉に悲鳴のような鳴き声が上がり、架線を埋め尽くしていたカラスたちがパッと空へ舞い上がった。夕空が一瞬で黒い影で埋め尽くされる。
そして電車が去ると、また何事もなかったかのように架線へと戻っていくのだ。
「うわー! すごい数……!」
「いちいち電車が来るたびに飛ぶの、大変じゃないのかな」
小鳥遊くんがスマホのカメラを構えながらつぶやいた。
カシャ、とシャッター音が響く。写真を撮っている横顔を見て、(どんだけ鳥好きなんだ……)と思わず微笑ましくなる。まあ、私も写真に収めたいのは山々だが、パンパンのサブバッグの底にスマホが沈没していて、とてもすぐに取り出せる状況ではない。
「林さん、この写真いる? 後で送ろうか?」
「え、いいの!?」
「いいよ。あ、そういえば連絡先、交換してなかったね」
「あ、そうだった! ちょっと待ってね、スマホ探す(笑)」
「え、なんでそんなにバッグパンパンなの?」
「あー、うん……まあ色々? 野鳥観察グッズ的な……」
「野鳥観察グッズって……面白すぎるでしょ」
呆れつつも楽しそうに笑う彼に、「あはは、ありがと」と返しつつ、ようやくバッグの底からスマホを発掘した。
「あ、スマホあった!」
「はい、QRコード」
「ありがと!」
読み取りを完了した瞬間、心なしか小鳥遊くんが嬉しそうな表情を浮かべた気がした。心地よい夕風が吹き抜け、彼の黒髪をさらさらと揺らす。なんだか、ほんのり爽やかな石鹸のような香りがした。
『まもなく、8番線に列車が参ります。危険ですので、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください』
ガタンゴトン、ガタンゴトン……シュー。
軽い警笛とともに電車のドアが開いた。
混み合う車内になだれ込み、結局、私たちは並んで隣の席に座ることになった。
ピロン。
カバンの中でスマホが微動する。画面を見ると【小鳥遊優人】からの通知。
開いてみると、さっき撮ったばかりのカラスの集団ねぐらの写真が届いていた。
隣に座る小鳥遊くんと、思わず顔を見合わせる。
ふふっ、と声にならぬ笑みがこぼれた。
――なんだか、すごく特別な気持ちになった。
#学校
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コメント
1件
うわああ第3話もめっちゃ良かった……!!😭💕 カラスの集団ねぐら見つけて、真っ先に小鳥遊くんに教えたくなる気持ち、めっちゃ分かる~!「やっほう」って呼び合う感じ、もう青春の匂いしかしないよ…。電車が通るたびにカラスが一斉に飛び立つ光景、想像しただけで圧巻だし、それを二人で共有する尊さよ…。 それに「あとで写真送るね」からの連絡先交換!?小鳥遊くんが嬉しそうな顔したところで私もニヤけた(笑)隣の席座って写真見せ合うシーン、何この距離感の縮まり方…もう特別な気持ちになっちゃうよね!!次の話が待ち遠しすぎる⋆⸜💕