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ケイリクスの言ったとおり、テーブルにはメリーティアの好物ばかりが並べられていた。
メリーティアは普段どおりを装って食事をしている。ぱくぱくと食べ進める彼女の姿をケイリクスはうれしそうに眺めているが、グウェンダルには無理をしているのが筒抜けだった。
食後には紅茶を飲みながら、ケイリクスがその日あったことなどを一方的に話すのがお決まりだ。
メイドが紅茶を淹れるさなかにも、彼はメリーティアの笑顔を引き出そうと懸命に言葉を尽くしている様子だった。
(つまらない、という顔だな)
メリーティアがどれだけ完璧な笑顔を張りつけていても、グウェンダルにはそのように見えた。
しかし不意に兄のマイルズの話題になると、メリーティアのまとう雰囲気が柔らかくなる。
マイルズは第二皇子のもとで働き出したそうだ。彼はユージーンのことを慕っているから、とても張り切っている姿が想像できる。
メリーティアも同じ光景を思い浮かべたのだろう。ふっと頬を緩める。
それを見たケイリクスがひそかにほっと息をつくのを、グウェンダルだけが気づいていた。
どうやら彼も、メリーティアの身体と心の不調が気にかかっているようだ。
彼女を誰よりも、もしかしたらグウェンダルよりも執拗に見つめてきたのだから機微に疎いはずがない。
だがケイリクスは、表面上は素知らぬふりを続けている。不調の原因が自分にあるということからは目を逸らしたいのだろう。
または、ただメリーティアを手放したくないだけか。
グウェンダルは込み上げそうになる激情を抑え込んで、メリーティアへ視線を流す。
彼女がただ「助けて」とひとこと言ってくれたなら、すぐにでもこの場から攫うつもりだった。
けれど何か理由があるのか、メリーティアは歯を食いしばってでもケイリクスのもとから離れようとしない。
彼女が何を考えているのかなんでも見通せると思っていたのに、最近になってその自信はすっかり喪失していた。
かまわずに強引に引き剥がすこともできる。しかしそれはメリーティアの意思を無視する行為だ。
そんなことグウェンダルにはできなかった。
紅茶を半分ほど飲んだところで、メリーティアが「あの」と声を上げる。
「――陛下にお願いがあるんです」
その唐突な切り出しに、ケイリクスは前のめりになった。
グウェンダルが知っているだけでも彼女からケイリクスを頼ることはほとんどなく、ドレスや宝石を贈られてもそれほど喜ばず、たまに何かを言ったかと思えばタウンハウスへ手紙を届けてほしいという至極簡単なことだけ。
そのせいかとても張り切っている様子だ。
メリーティアたっての願いなら、なんでも叶えてあげたいのだろう。
「一週間後に陛下の生誕パーティーが開かれるのですよね?」
「そうだよ。そなたが余の誕生日を覚えていてくれてうれしいな」
「そのパーティーに、わたしをパートナーとして連れて行ってはくださいませんか?」
長い睫毛を瞬かせたメリーティアに見上げられ、ケイリクスは一切の躊躇なく「いいよ」と微笑んだ。
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