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#普通
野々さくら
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ありあ
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光となって消えていった沙月がいた空を、いつまでも見上げていた視線を信愛に移した累は、胸の奥に残る温もりを確かめるように、小さく呟く。
「ありがとう・・・」
そして深く息を吐き、静かに笑った。
「まさか沙月と、こうして
話せるなんて夢にも思ってなかった」
信愛へ向き直ると、深々と頭を下げる。
「本当にありがとう」
その姿を見た信愛は、照れくさそうに微笑んだ。
「なんか沙月さんって、ユニークで明るい人ですね」
累は懐かしそうに笑う。
「昔から進歩してねーんだよ(笑)」
だが、その笑みはすぐに優しいものへと変わった。
「でもその明るさに、俺は何度も救われたんだ」
少し間を置いて、噛みしめるように続ける。
「それに嬉しかった」
信愛は首をかしげる。
「嬉しかった?」
累は遠くを見つめながら、穏やかに答えた。
「好きなヤツが変わらずに居てくれた・・・」
その言葉に、信愛は何も返せなかった。
「累さん・・・」
その時、美月が累の前へ歩み寄る。
累は申し訳なさそうに頭をかいた。
「姉貴も悪かったな。散々心配かけて」
その一言で、美月の堪えていた感情が一気にあふれ出した。
「ぐすっ・・・」
涙を拭う間もなく、嗚咽が漏れる。
「うぐっ・・・ひっぐ」
そしてついには声を上げて泣き出した。
「うわぁぁぁぁぁん」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ようやく言葉を絞り出す。
「よ゛がっだぁ゛~」
もう一度、しゃくり上げながら繰り返す。
「よ゛がっだね゛〜」
美月はそのまま累へ駆け寄り、力いっぱい抱きしめた。
「ちょ、やめろよ! おい!」
累は困ったように抵抗するが、その表情には照れくさそうな笑みが浮かんでいる。
そんな二人を見ていた信愛は、思わず頬を緩めた。
「ふふふ」
温かな空気に包まれたその場で、信愛はしみじみと呟く。
「累さんと沙月さんの関係、すっごく憧れちゃうな」
美月も笑顔で頷いた。
「そうだね♬」
少し離れた場所では、焔垂が茜の顔をじっと見つめていた。
あまりにも見つめられていた茜は、不思議そうに眉をひそめる。
「なに私の顔、ジロジロ見てんの?」
焔垂は慌てて視線を逸らした。
「あ、いや、別に」
みるみるうちに耳まで赤くなり、照れ隠しをするように俯く。
信愛はその様子を見て、小さく首をかしげた。
(八乙女くん?)
焔垂は何も答えず、黙ったまま頬を赤く染めていた。
◇ ◇ ◇
それから数日後。
怪異探求倶楽部の部室では、何やら大きな話題で持ちきりになっていた。
「うっそ!?」
茜が目を丸くして声を上げる。
「本当ですか!?」
信愛も身を乗り出して尋ねた。
美月は少し照れくさそうに肩をすくめる。
「まあ、みんなが迷惑じゃないならだけどね」
すると、さくらは首を横に振った。
「迷惑なんかじゃないよ」
朝陽も嬉しそうに頷く。
「そうですよ! むしろ
こっちからお願いしたいくらいです!」
その言葉に、美月はほっと胸をなで下ろした。
「そう?良かったぁ〜」
部室は一気に歓声に包まれる。
そんな盛り上がりの最中、扉が開き、焔垂が静かに入ってきた。
「聞いてよ、焔垂!」
茜が勢いよく駆け寄る。
「美月ちゃんが倶楽部の顧問やってくれるんだって♬」
焔垂は小さく頷いた。
「そっか・・・」
それだけ呟くと、どこか上の空のまま黙り込む。
その様子に、さくらが首をかしげた。
「あれ? リアクション意外に薄いね」
冗談めかして両手を広げる。
「もっと──」
そして大げさに驚く仕草をしながら笑った。
「まじでか!みたいな
リアクションすると思ってたのに」
朝陽も不思議そうに焔垂を見つめる。
「何かありました?」
焔垂は視線を逸らし、小さく首を振った。
「いや、別に・・・」
その返事に、信愛は心の中で首をかしげる。
(どうしたんだろ?)
しばらく沈黙が流れたあと、焔垂は意を決したように茜へ視線を向けた。
「あのさ、茜・・・」
「ん? なに?」
「今からちょっと時間ないか?」
突然の誘いに、茜は目をぱちくりさせる。
焔垂は真剣な眼差しのまま続けた。
「話したい事があるんだけど」
「えー!?今から!?」
茜は驚きながらも、焔垂の表情を見て冗談ではないと悟る。
「どうしても茜に伝えたい事があるんだ」
焔垂は深く頭を下げるように言った。
「頼むよ・・・」
茜は少しだけ黙り込み、やがて小さく息を吐く。
「分かったよ」
焔垂は安堵したように頷いた。
「じゃあ、着いてきてくれ」
「はいはい、しょうがないな」
茜はやれやれと言わんばかりに肩をすくめながら立ち上がると、焔垂の後を追って部室を出ていった。
二人の背中を見送りながら、信愛は静かにその場に立ち尽くしていた。
「八乙女くん・・どうしちゃったんだろ?」
信愛は、部室の扉が閉まった方を心配そうに見つめていた。
その呟きに、朝陽が静かに口を開く。
「どうしても伝えたい事だって言ってましたけど」
その一言に、さくらは何かを察したように目を細めた。
「もしかして・・・」
さくらは、何か心当たりがあるような表情を浮かべるさくらだったが、その先を口にすることはなかった。
信愛と朝陽は顔を見合わせ、不思議そうに首をかしげる。
部室には、二人が出ていった後の静かな空気だけが流れていた。
コメント
1件
累さんと沙月さんの再会……あの場面、本当に沁みました。光になって消える沙月と「好きなヤツが変わらずに居てくれた」という累さんの台詞が、それぞれの過去と想いを全部載せてる感じで。美月さんが「よ゛がっだぁ゛〜」って泣き崩れるのも、あの姉の気持ちが一気に溢れ出てきてこっちまでウルッときました。そして焔垂くんの茜さんへの「話したい事」……さくらさんのあの反応も気になる。伏線かな? 次が待ち遠しいです。