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『男子校が共学化したら女子が全員サキュバスだった件』の第十四話です。
第十四話:10分の吐息と、秘められた初恋
重なる影。
唇と唇が触れ合う寸前、白銀美咲の肩が小さく震えた。
「……っ」
彼女の瞳から溢れたひとしずくの涙が、夕日に照らされてキラリと光る。
魅了の魔力で男を狂わせるサキュバスではなく、一人の女の子として恐怖と愛おしさに挟まれている顔だった。
俺は彼女の華奢な肩を優しく掴み、そっと押しとどめた。
「タカシ……くん……?」
「白銀。……10分の期限、あと数秒で切れるぞ」
「え……?」
白銀さんがハッと目を見開いた瞬間、彼女の背中から淡い光が立ち上った。
ふわりと広がる漆黒の翼、頭から突き出す艶やかなツノ。そして、空気を甘く痺れさせる極上の魅了(チャーム)の波動が、一気に部室内に満ちていく。
「あ……あ……っ」
元のサキュバスの姿に戻った白銀さんは、真っ赤な顔で自分の口元を手で覆い、ガタガタと震えながら数歩後退りした。
「私……私、何しようとして……っ!?」
「嫌だったか?」
俺が静かに尋ねると、白銀さんは激しく首を横に振った。
「嫌なわけ、ないじゃない……! でも……ずるいわよ。あんなの、私……本当の本当に……タカシくんのこと、好きになっちゃうじゃない……っ!」
眼鏡の奥の紫色の瞳から、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
魔力に頼らず、相手の心を力づくで奪うこともせず、ただ一人の男に「素顔の自分」を受け入れてもらうこと。それこそが、サキュバスにとって最も贅沢で、そして最も怖ろしい「本当の恋」だったのだ。
「……言っただろ。お前たちの気持ち、全部俺が受け止めるって」
俺は歩み寄り、サキュバスのツノが生えた白銀さんの頭を、優しく撫でた。
「次の10分間薬を使う時は……焦らずに、ゆっくりいこう」
「……バカ。……本当、ずるいんだから……」
白銀さんはツノをすり寄せるようにして、俺の胸にぽすんと額を預けてきた。
その時、部室のドアが勢いよく開き、朱音が飛び込んできた。
「ちょっと美咲ぁ! 10分過ぎたでしょ!? 次は私の番なんだからね——って、ちょっと何抱き合ってんのさー!?」
サキュバスたちの本気の猛アタックと、俺の覚悟が交錯する学園生活は、さらに甘く危険な領域へと突入していくのだった。
コメント
1件
読み終わりました!第14話、すごく良かったです……!白銀さんの涙と「本当の恋」への怯えが、サキュバスという設定を超えて一人の女の子の繊細な心の動きとして胸に響きました。10分間の制限の中で、主人公が彼女を押しとどめて優しく撫でるシーン、ツノをすり寄せる仕草にじんと来ました。朱音の乱入で次の展開も気になります!続きを楽しみにしています🌷
488
#ギャグ
梨本和広
6,467
桜咲かな
299
#学園