「この小さいキングレオの数は、いっち、にー、さん、よんっと…。4匹わたしがヘイトを買った上でなぎ倒さないといけないのかぁ。ま、色んな戦闘スタイルを試したいし丁度いいってことにしようかな。 」
キングレオが生み出した小型の自身の分身達がプリンを囲み一定の距離を保ちながら様子を見ている。
「ほー!様子を見るっていう行動取るんだコイツら。もしかしなくてもこのゲームに使われてるAI君かなり賢いか?それともそういうシステムを組まれてるのかな?なんにせよ面白いなぁこういう敵がいるって言うの」
感心しているプリンを他所にレオJr達は容赦なく彼女に襲いかかる。全員で一斉にというわけでなく、しっかり連携をとる動きをしておりまずは背後を取った奴から攻撃初めその後そいつに気が取られてる間にまた別の方向から襲うという理にかなった行動でプリンを追い詰める。
「おわっと!?コイツらなんだ!?森の中にいた奴らと違って本当に賢いな!?私は一撃でも貰えばそのままお陀仏なんだよ!?かすり傷ですら致命傷になりかねないんだから上手い連携取るな!」
そんな彼女の事情はお構い無しにレオJrは攻撃の手を止めない。しかしプリンには無駄にスライムと戯れたことで鍛えられたスキルと”素”の動体視力に第六感という武器を持っていた。背後から来る敵は【危機管理】のスキルを使えば察知可能であり回数制限とリキャストがあるが、その使えない間は本能の第六感で気配を察知する。更に【回避】のスキルでジャスト回避を決めればすばやさに補正が入りより避けやすくなる。極めつけは【見切り】によって10分に一度だけ完全回避可能なため万が一の保険も着いている。
あのスライムとの戦闘ははたから見たら”無駄”に見えていたが、ある種このゲームの前衛職に慣れる訓練であったのだ。結果として汎用性の高いスキルと純粋なPSが磨かれて集団行動を取るモンスターに対してある程度対応できるほどの力を得ることに成功したのだ。
「なるほど慣れてきたぞぉ?とにかく君達は私の背後を取るのが好きみたいだなぁ?ならそれを逆手にとってこうしてくれる!」
来ると分かっている飛びかかりの攻撃をタイミングよく屈んで好きだらけの腹を容赦なく蹴り上げてその後襲いかかる他の奴らを回転斬りで軽くいなす。
「馬鹿の一つ覚えじゃあ私は倒せないわよ?と言ってもアンタらもこれでやられるほど柔らかい敵じゃあないんでしょうけども?」
蹴り上げたレオJrはその小さな羽を広げて滑空しながらこちらの様子を伺い、薙ぎ払った奴らもダメージこそ負わせたものの致命傷ではなかった模様。しかし、確かに相手には『自分が襲ってる相手が敵である』という事を知らしめることになった。逆に言えばそうした事で相手は舐めて自信を襲うことはなくなったということでもある。つまるところここからが本番になるわけだ。
「……さて、空に1匹地上に3匹と陸空に部隊を分けてしまったが今度はどういうアプローチをしてくれるのかな?出来ればレディにも優しめのアプローチだと嬉しいんだけど…。」
そんな彼女の淡い期待を割くように滑空してる1匹が魔法を展開し始めると追うように地上の3匹も魔法の準備を始める。全てを止めるのは無理と判断したプリンは直ぐさま一番近くにいた個体を斬りつけて魔法を解除し背後に回るや否や項付近の首の肉をぎゅっと握りその個体を盾として使用する。それと同時に空に居るやつは氷柱のようなものを形成しそれを飛ばし、地上にいたヤツは火球を幾つも飛ばしてくる。それらを手負いにした個体を盾にして身を防ぎ、ある程度防いだあとは盾にした個体を適当にあいてにぶん投げ、滑空している個体に目をつけ【つむじ風】を利用し自身も空に舞う。そして、空中で再度【つむじ風】を自身の足付近に発生させ直線的ではあるがかなりの加速を獲得しまた魔法を使わせる前に彼を一刀両断し下で待つレオJrに注意しながら着地する。
「…ふぅ。我ながら畜生なことをしてしまったのは否めないけど、これも戦略ってことで許してくれや。そもそも私の狙いはミーシャが相手してるおっきい方の猫ちゃんで取り巻きである君らには用がないのよ。」
勢いのままに行動し既に2匹屠っているが決して楽ではない相手なのは確かである。現に隠しボスである時点で情報が少なく、使ってきた魔法はまだ見覚えがあるものだらけではあるがミーシャのように同じ魔法を使っていれば威力が上がることを事前に知っていてそれを目の当たりにしてるため、相手もきっと同じように魔法の練度が高く設定されており直撃はそのまま死を意味するだろう。
遠距離攻撃を持つ相手に対してプリンはカウンター行動がないのが現時点での悩みである。持ってるスキルでも【つむじ風】程度ではせいぜい飛んでくる火球の起動を少しずらす程度でそれ単体では攻撃としての性能は期待できない…。すばやさにものを言わせてゴリ押しで突き進むこともできない訳では無いがそれを可能にするためには遠距離攻撃全てを読み切り回避することが前提条件、つまるところ不可能に近い作戦である。やけくその手段としては手に持っている剣の投擲くらいだろうがそれは降参すると言ってるようなもの。
「近づく為には盾を構えるのもありだけど、私の持ってる盾初期装備のやつだし耐久面も心許ない。だから畜生な選択ではあったけどモンスターを盾にさせてもらった訳だけど……。次はどうしようかなぁ。私が魔法を使えるか、あるいは魔法を斬れたら…。魔法を斬る?………試すか。」
念の為武器を初期装備に変えて魔法を撃ってくる2匹に向かって走り出す。案の定その2匹は火球と氷柱のようなものを飛ばしてくるが氷柱のほうは剣で弾くことが出来て、火球は切り裂く事が出来た。しかし、武器の耐久値というものが大きく減りそのゲージが途端に赤色にまで達すると警告のウィンドウが現れる。
「もしかしなくても武器って壊れることもあるの?そんな所まで忠実に再現しなくてもいいのに…。」
そんなことをぼやきながら何とか近づくことに成功し火球を放つ個体が魔法陣を展開した瞬間耐久値の減った初期武器を投げて詠唱破棄をし、その隙に距離を詰めて【我流武術】によるバフと【拳王】そして【ジャイアントキリング】のスキル効果で威力が増した拳が彼の腹にヒットする。体力ゲージが大きく減りぐったりしたのを確認したあとまたその個体を残った一体に向けて投げ飛ばす。飛んでくる仲間を飛び上がり空に逃げて回避を試みるが空に逃げることを先読みしたプリンは既に空中で剣を振りかざしておりその姿を視認したのが彼の最後の景色だった。
「……。ふぅ。申し訳ないけど私のステータス的にここまでしないといけないのよね。
敵を盾にしたり、投げて投擲物として扱ったり、なんなら視界を奪う道具としても使ったりして道徳とか知らないんかって、問われても仕方ないレベルのことはしたけど恨むならあんたを呼び出した親分を恨んでよね。」
《新たなスキルを獲得しました。【無慈悲なる者】【狂人】
【無慈悲なる者】獲得条件:敵対生物を道具として利用する行為をしたこと。
・効果:自身よりもレベルの低いモンスターに対して『恐怖』や『威圧』等のデバフ効果確率で付与。
【狂人】獲得条件:複数の敵に対して恐れることなく連続で撃破すること。(尚、全て獲得者個人による戦闘であること。)
・効果:専用ゲージが追加されそのゲージが消えるまでに連続でモンスターを倒し続けるとステータスに補正。(基礎ステータスで最も育っているパラメータにプラス10パーセント。スキルレベル最大で20パーセントまで上昇。)》
………。ろくでもないスキルの獲得に成功したわ。私のめざしてる剣士には似つかわしくないスキルばっかりなんですけど?
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