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シュメール
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#一次創作
ruruha
618
眠狂四郎
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ruruha
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『編集者は、配信前に一般の読者さんが「ん?」と思う懸念要因を、全て取り除かないといけません、少しでも違和感を持たれたら課金してくれませんし、離脱された読者さんは二度と戻ってきません』
編集長の阿部は、淡々と一歩も譲らない口調で続ける
『ですので、ここの部分はカット・・・それと、あともう一つ、ここも編集会議で上がっていましたが』
阿倍の修正マーカー部分がどんどん多くなっていく、今や画面のGoogleドキュメントの桜子の書いた文章は沢山色付けされている
『ここですね、副社長という設定のヒーローが最近のSNSに対して言及しているセリフですが、ここも編集会議で(副社長ほどの地位にある人が、中年のおばさんみたいにそんなにSNSばかり見ているか?)と声が上がっていました、あと全体的にヒーローのセリフが屁理屈臭いです』
―キツイなぁ~・・・へこむわぁ~―
桜子の背筋がまたスッと冷えた、でもそれだけ彼女達は真剣なのだ、さすが日本一と言っていいほどの大手女性漫画誌の編集長だ、これぐらいキツいのが当たり前なのだろう
思わず夜中にSNSを徘徊する自分の習慣で思っていることを無意識のうちにヒーローに言わせてしまっていた
それでも桜子はカッコイイと思っていたのに、それが彼女達から見れば懸念対象なのだ、意識のズレが激しい
『ここもヒーローのイメージダウンになりますのでカット・・・もしくは仕事一筋の副社長が言いそうなセリフに書き替えてください』
「そ、そうね・・・あの、ちょっと書きすぎたかもしれないわ、ええ、直します、直します」
『そして、ここの御曹司キャラのセリフもキャラブレを起こしているように感じます、御曹司と言えば恵まれた環境です、恵まれている人が言いそうなセリフを考えてください、読者は「ご都合主義」を一番嫌います』(※設定を無視して自分の都合の良いように書くこと)
「はい・・・」
桜子は画面に向かって何度も頷いた・・・頷くたびにカクカクと画面の中の自分の頭が不自然に上下する、増えまくる書き直しで、どんどん落ち込んで来る
不思議と文章には年齢も透けて見える、無理もない・・・彼女達は遠回しに
―独身の若い男女の恋愛を書くのには、お前の感覚は古臭い―
と言っているのだ・・・
当然ながら「現代恋愛もの」は今の流行を書かないといけない、自分に子供でもいれば別なのだろうけど、つい最近まで工場勤務で年よりばかりに囲まれた環境で、今の若い子達がどうやって恋愛しているのか全く分からない
経験していないので結婚式を書くのも苦手、子育てや家庭ものも書けない、いくら想像力豊かでも圧倒的な経験不足は補えない
うまく桜子が空想で書けたと思う所をことごとく「書き直せ」と潰される、もう自分は異世界ファンタジーものしか逃げる道はないのだろうか・・・
編集者の彼女達の求めているものは分かっている・・・希実の書いた「あの虹の彼方へ」に出てくるキャラだ
あの物語に出てくるキャラクターは全員、若さゆえに危なっかしくて、生命力にあふれ、機知に富んだ会話をし、大勢の人を魅了し、一人一人のセリフも舞台も
全て現代の日本の若者を代表する作品として、どこにいっても高い評価を得ていた
当然、編集部の彼女達も桜子に求めるものは、あの作品のような真っすぐで、若さに溢れた、熱い人間模様だった
それなのに、目の前に現れるのは副社長にSNSの愚痴をこぼさせ、ドリカムを引き合いに出す中年のおばさんのセンスだ、今の所彼女達の期待に桜子は全く応えられていない
こんな時に、自分の気のせいかと思うのだが・・・疑われているような気がする
―本当にこの人物が、あの傑作を書いたのだろうか?―
途端に恐怖の自律神経の発作が起こり、最近では冷や汗をかくのが普通になってきた、指先が小刻みに震えて画面に映らない位置で、桜子はこっそりと深呼吸を繰り返した
『以上が改稿点です。それでは二週間後にまた、改稿後の変更点を確認させていただきますのでよろしくお願いします』
モニターの向こうの数人がペコリと桜子に礼をして、会議は終了した
桜子は電源を切ったパソコンの横に置かれた自分の著書 「あの虹の彼方へ」にそっと目をやった
背表紙には桜子の名前が、金色の文字で刻まれている・・・それが、誰の心の中で作られた物語なのか、桜子だけが知っている
『成功した作家』になることをずっと夢見て来た・・・
桜子はまさにこういうことを夢想していたのに、何だか思っていたのと違う・・・
聴衆や、積み上げられた著書・・・それと同時に成功者特有の人と人との繋がりも望んでいた
著書が大勢の人に読まれるのは、これはひとえに自分の努力と尊敬されてもいいのではないか、しかし今の桜子の地位は完全に自分のものと言えなかった
いつか・・・自分は今のこの地位全てを略奪されるかもしれない・・・
こちらが気が付かないうちに足元を救われ、あっという間になすすべもなく、不名誉な作家の仲間入りをして
身内にも見捨てられ、どこかの日雇い工場作業員に逆戻りになるという・・・
不安に怯えていた
コメント
2件
桜子…潔く筆を折れば
第40話、読みました。編集長の阿部さんの指摘が容赦なくて、読んでいてこちらまで胃がキリキリしましたね……桜子さんの「副社長がSNSに言及するところ」「セリフが屁理屈臭い」という指摘、経験不足ゆえの感覚のズレが明確に描かれていて、すごくリアルでした。特に「文章には年齢も透けて見える」って台詞、刺さりました。それでいて、「あの虹の彼方へ」が本当に自分の作品なのか疑われているかもしれないという不安が、この物語のミステリー要素をじわじわと深めている感じがして、続きが気になります!