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「あの虹の彼方へ」の映画製作が着々と進んでいるその年の年末、東京都の千代田区は皇居のお濠を望む一角に、明治の世から建つ貴賓館があった
かつての鹿鳴館を思わせる大ホールには、天井から幾重ものシャンデリアが下がり、磨き込まれた寄木張りの床が人々の華やかな装いを鏡のように映している、ここに今夜、フルマックス出版社の関係者が全員集まっていた
開催されているのは『第七回フルマックスエンタメ原作大賞授賞式』
この賞は「あなたの物語を世界に届くエンタメIPへ」をコンセプトに、まだ世に出ていない物語の「原作」という「知的財産」を募り、小説、アニメ、映画、ドラマ、ゲームと、あらゆるメディアミックスで世に広めるという、いわば新人作家の登竜門だ、平たく言えば誰もが今の桜子の立場になれる賞だ
そして今はその授賞式、作家達が座っている最前線の円形テーブルに、今桜子は藤色の訪問着の背筋をまっすぐに伸ばして座っていた
先ほど、フルマックスの代表取締役の「黒川」と桜子は硬い握手をして「あの虹」が国会図書館に寄贈されると歓談した際に、来年の桜子の印税やグッズなどのコラボ商品のロイヤリティを換算すると今年の収入の三倍になると言われた
それを聞いた桜子の胸は喜びに膨らみ、思わずレンタルで着ている訪問着の胸が少しキツクなった、そして黒川代表からも随分遅れている、第二作目の執筆の催促を受けた時、彼の目は笑っていなかった・・・
―早急にプロットだけでも・・・来年初めには出せるようにしなくちゃ・・・―
桜子はまったく進んでいない新作を考えると憂鬱になったが、今、目の前で大賞に輝いた新人作家が壇上へ進み出ているのを見るとやはり早急に書く決意をした、こうしている間にも素晴らしいものを書くスター作家はどんどん生まれている
まだ二十代前半に見える受賞者の青年が、この日のためだけに買ったであろうスーツを着こみ、緊張しているが喜びに溢れる顔をしている
先ほどの司会者が今回の公募のそう応募数は2万作品を越えたと言っていた、今やWeb小説を読む読者よりも、書き手の方が圧倒的に多い、パイの取り合いはこれから益々激しくなるだろう
フルマックスの代表黒川が、恭しく金の文字で作品が刻まれた受賞盾を両手で掲げた、あの縦は桜子の家にもあった、隣に座る誰だか知らない作家が一言、二言桜子に話しかけるので、笑顔で受け答えた
桜子は今や名の知れた人気作家はどうあるべきかを心得ていた、注目と尊敬と嫉妬を向けられている今の桜子の立場の作家が、他の作家に対して傲慢になると自分の首を絞めることになる
それは「春ウララ」で立証されていた、もともと桜子は早くからSNSなどのツールメディアに敏感に興味を持ち、活用していたが、「あの虹の彼方へ」が売れ出してから、フルマックスの広報宣伝部やマーケティング担当者と話をしていると
やはり「フェイスブック」「X」「インスタグラム」この三つのプラットフォームの運用は「看板作家」として「自覚を持って」運営するか、代わりにマーケティング担当に任せるかどっちかにして欲しいと言われた
実際新しく「あの虹の彼方へ」の作家として「読者窓口」を作ったホームページでは、週に何通かクレームメールがくるし
中には「お前の頭はディープステートの5Gに侵されているからアルミホイルを被れ」などの狂ったメールが届いたりもする、あらゆる書籍販売サイトでの「公の公開処刑場」では踏んだり蹴ったりの書評も書かかれたりもしていた
そういった面倒ごとを出版局のマーケティング部が管理してくれるのはとてもありがたいと思うが
他人が桜子のアカウントに介入することになると、DMやSNS投稿、あらゆるインターネットが生み出した連絡ルートを使って、過去の春ウララとの訴訟問題の黒歴史を探られるかもしれないので、桜子はSNS運営は頑なに自分で管理すると断った
そしてそんな控えめな行動の一番の原因が「故・柚原希実」の存在だった
何年も経った今でも桜子は彼女の陰に怯えていた
シュメール
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ruruha
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ruruha
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コメント
2件
読んでいるこちらまで胸が苦しい😔桜子はメンタル保ち続けられるのかな
第41話、お疲れさまです!授賞式の華やかな舞台と、桜子さんの内面の重苦しさの対比がすごく効いてましたね。「第二作が進んでいない」というプレッシャーに加えて、SNSのクレームや過去の訴訟問題、そして何より「柚原希実」の影――人気作家の光と闇がリアルに描かれていて、胸が締め付けられました。最後の一文で一気に物語が引き締まった感じがします。続きが気になります!