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『Casa dell’amoreへようこそ。私はこの娼館のオーナー、星野 凛華よ。よろしく。あなたは?』
(ようこそもへったくれもないんだけどなぁ……。多額の借金背負って、あの二人に無理矢理連れて来られたんだから……)
毒付くような事を考えながら、瑠衣も凛華に名乗った。
『私は……九條瑠衣と申します』
『へぇ。九條瑠衣。女にしては何かカッコいい名前だね』
瑠衣は凛華を改めてよく見てみると、毛先だけ緩くカールしてある長い黒髪が艶やかで美しい。
日本人離れしたような雰囲気の顔立ちに、モデルのような体型。
白いシャツと濃紺のテーパードパンツといったシンプルな服装を、カッコよく着こなしている。
私とは大違いだな、と瑠衣は心の中で苦笑する。
『ところで、あんたが持ってるそのケースは何? 拳銃でも入ってんの?』
オーナーは目敏いのか、眉間を寄せながら瑠衣の持っている楽器ケースに目を付けて質問してきた。
『これはトランペットです』
『へぇ。ラッパってヤツか。ここにも時々イケメンの演奏家がお忍びで来るよ。トロンボーンだっけ? 何か棒みたいなものを伸びたり縮ませたりして吹くやつ。あれ吹いてる人とか、サックス吹いてる人とか、あとは……何かバイオリンのでっかいオバケみたいな楽器を演奏する人とか……』
(バイオリンのオバケって、コントラバスでしょ)
瑠衣は小さくため息を吐いた後、感情を無にしたような声で
『はぁ。そうなんですね』
と答えると、凛華は脚を組み替え『じゃあ早速だけど』と前置きして話始めた。
『まず一つ目。娼婦になったからには、自由はないと思ってちょうだい。外出する時は私が付き添うか客と同伴するか。時々いるんだよ。同伴の男とそのままバックレる娼婦。まぁ探しまくって捕まえるまでだけどさ。娼婦たちは三階で生活してる。一応、個室も与えられるから』
『……はい』
『二つ目は、こういう商売だから、月に一度、産婦人科に行って性病の検査を必ず受けてもらう。病気が判明したら、即治療。当然だけど治療中は無報酬だから。セレブの皆さんには安心して楽しんでもらいたいでしょ?』
『はぁ……そうですね……』
『それと三つ目。これが一番重要なんだけど』
オーナーが三度脚を組み替え、若干前のめりになるように瑠衣を見据えた。