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私はそのまま、手足、胴体、あらゆるところに
感情のままに銃身を叩きつけ、魔力を込めた弾丸を打ち込み続けた。
何度も。何度も。何度も。
肉を断つ感触。骨を砕く不快な振動。
その度に、父の身体から醜い生命力が奪われていく。
「死ね……死ね、くたばれ……っ!」
私は呪文のように呟き続ける。
父の瞳孔は完全に開き、生命活動はとっくに停止しているはずだ。
それでも、二度と動かないように
二度とその口が母を辱めないように、徹底的に破壊を繰り返した。
母への償い?
違う。これはただの、どす黒い自己満足だ。
これで何かが変わるわけではないことはわかっている。
けれど、どうしても、止められなかった。
「………っ…」
最後の一撃を振り下ろしたとき、不意に全身から力が抜けた。
膝が震え、崩れ落ちそうになるのを必死に堪える。
銃声の残響がスラムの霧に吸い込まれて消えたころ、私は荒い息を吐きながら血に濡れた腕を下げた。
弾倉は空。全身が、鉛を流し込まれたように重い。
こんなに呆気なく殺せるなんて思えなくて拍子抜けする。
それでも、目の前の惨劇が現実なのだと認識できた。
(終わった……。母さんの仇、父への復讐は、これで…やっと、終わったのね……っ)
そう思った、その瞬間。
視界が、急速に、あまりにも不自然にぼやけ始めた。
カメラのレンズが曇るように色彩が溶け出し、輪郭がぐにゃりと滲む。
父の遺体があったはずの場所が、灰色の冷たいモヤに包まれていく。
「……?」
私は何度も瞬きを繰り返した。
血のついた手で目を擦る。
だが、ぼやけは治まらない。
それどころか、霧はさらに濃くなり、現実感を削ぎ落としていく。
まるで、最初から世界そのものが偽物だったかのように。
「?……っ、? な、なに……これ……」
額から、嫌な汗が垂れる。
脳裏を掠める、冷酷な不吉。
父の最期の嘲笑が、今さらになって心臓を締め上げる。
『後悔するぞ』。
あの言葉の意味が、暗い水底から浮かび上がってくる。
「エカテリーナ……っ!!」
アルベルトの声が、霧の向こうから、悲鳴のように聞こえてきた。
彼が必死に駆け寄ってくる気配。
だが、私の目は、徐々に晴れていく霧の中の一点に、縫い付けられていた。
霧が晴れる。
最初に見えたのは、床に不自然に広がる、温かそうな血の溜まり。
次に、力なく投げ出された
細い、まだ若い手足。
「…………うそ」
思考が、完全に停止した。
そこに横たわっていたのは───
父なんかじゃない。
ダイキリだった。
彼女は、いつもの普段着のままだった。
だが、その体には
私が今しがた放ったはずの、無数の銃弾の跡が刻まれている。