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右腕は肩から千切れかけ、腹部は内臓が露呈するほど無残に抉れていた。
顔の半分は潰れ、残された片方の眼孔からは、血の涙が溢れ出している。
私の呼吸が、激しく乱れる。
心臓が肋骨を突き破らんばかりに脈打つ。
「…………っ」
声が出ない。唇だけが、意味もなく震える。
これは、まだ夢なのか?
だが、鼻を突く血の臭いは、あまりにも本物だ。
鉄錆のような、生臭い味が喉の奥まで広がっている。
「エカテリーナ……彼女を早く…っ」
アルベルトが叫びながら飛び込んでくる。
彼もまた、混乱の極致にいた。
彼が魔法で封じ込めていたはずの「父」は、上で浮上したまま、私たちを眺めていた。
「ははははははっ!!まんまと夢に騙されおって、これは傑作だな?!」
そこにあるのは、無残に破壊された仲間の遺体だけだ。
私は膝から崩れ落ちた。
ダイキリの小さな体を抱き上げようとして、手が激しく震え、指先の感覚が消失していく。
「ダイキリ? うそよね……なに、?し、知らないわよ。だって、私が撃ったのは、父で……あいつで……」
彼女の胸に触れる。
鼓動はない。
体温が、驚くべき速さで失われていくのが、掌を通じて伝わってくる。
私の手は、彼女の温かかった血で、べったりと汚れていた。
「エカテリーナ……悪夢から、覚めたんです」
アルベルトの震える声。
「は? ……私は、母さんの夢を見ただけで、そこから自力で抜け出したの! トドメを刺すなら今だって、アルベルトとダイキリが、二人で教えてくれたじゃない……!」
「……それすらも、夢だったのでしょう。ブロンクスの術式は、二重、三重に重なっていた……」
「っ? ……う、そ。嘘よ、そんな……っ。じゃあ、なに……私……私が……?」
「…私が自力で夢の結界を破り、目覚めたときには……もう、手遅れでした。貴方は、……ダイキリに向かって、笑いながら引き金を引き続けていた」
「そんな……っ……嘘よ……嘘って言ってよ!!」
絶叫が、喉を灼き切る。
視界が真っ暗に染まっていく。
自分が、何を撃ったのか。何を壊したのか。
愛した母の仇を討つために引き抜いた銃で
私は、自分を信じてくれたたった一人の、いつの間にか実の妹のように思っていた未来ある少女を。
「私は父を殺したはず……なのに。嫌だ、違う……違うわ! ダイキリを……殺したなんて、そんなの悪い夢でしょ!? まだ夢の中なのよね……っ! ねえ、アルベルト!」
私は彼の服を掴み、狂ったように揺さぶった。
アルベルトは、ただ悲痛な面持ちで私を見つめ、静かに首を振った。
「エカテリーナ…っ、落ち着いて、ください。これは──紛れもない…現実です」
足元の血溜まりが、私の膝を赤く染めていく。
冷たい雨が、また降り始めていた。