「圭ちゃん――」
俺を見つめるマナの眼差しと表情に違和感を感じた。
「マナ、まさか記憶が―――」
「圭ちゃん、ずっとずっと私だけを愛してくれていたのに何度も何度も裏切って悲しい思いをさせて本当にごめんなさい。許してもらえるなんて思っていないよ。私には何も言う資格もないし、何も求めない。ただ、謝りたかったの――」
「ここに何しに来たんだよ? そんなことを言うために、結婚式を台無しにして、世良さんを裏切って、沢山の人に迷惑をかけて、ここに来たのか? 違うだろ!」
「だって、だって私は――」
「だってじゃないだろ! 色んなものを犠牲にしてきたんだ。かっこ悪いところを見せてみろよ! 自分の正直な気持ちをぶつけてきてみろよ! マナらしくやってみろよ!」
「私を――私を圭ちゃんの傍にいさせてくっ――」
「違うだろっ! 俺の知ってる、俺の大好きなマナは、自分勝手で計算高くてズル賢くて手に負えない奴なんだよ。俺が大好きだったマナに戻ってみろよ!」
「―――――」
「マナらしい言い方ってもんがあるだろ」
俺の言葉を聞き終えたマナは、只々静かにうなずいた。
「私を、私を幸せにしてよ! 私の欲しいものをイッパイ買って、美味しいものを食べに連れて行ってよ! 給料をイッパイ稼いで私に楽をさせてよ。一生遊んで暮らさせてよ!」
マナは泣きながら、俺が要求した通りのマナを演じてくれた。
「やれば出来るじゃないか! わかった、俺が一生楽をさせてやる。絶対に幸せにしてやる。だから――だから俺と結婚してくれないか?」
「ホントに楽をさせてくれる? 幸せにしてくれる?」
「約束する」
「もし私がまた記憶をなくしても、絶対に私を離さない?」
「あぁ、2度とあんな過ちは犯さない。もう2度とマナを離さないから、俺を信じてついてきて欲しい」
「絶対だよ。約束を破ったら舌を引っこ抜くから! ブッ飛ばすから!」
「命に代えても約束は守る」
「だったら結婚してあげる」
「良かった――ありがとう」
「圭ちゃん、愛してる」
マナは俺に抱きつき、胸の中で何度も何度も頷きながら泣いていた。
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